「司令官っ、ここでは司令官の"お世話係"っていうのがあるのよね? それ、雷も入りたいわ!」
本丸へやって来た雷は瞳をキラキラと輝かせてそんな事を言ってきた。さすがお世話大好き艦娘…というか、うん。確かに"主お世話係"とか名乗ってる刀剣男士が何人かいるけども。それ、主非公認だから。勝手に自称してるだけだから…。一応説明しておこうかと口を開きかけたその時、審神者部屋の襖が勢いよく開かれ、「主お世話係は俺一人で充分だ!」と長谷部が声を荒らげながら部屋に入ってきた。
「うわ、ビックリした」
「声も掛けずに入室してしまい申し訳ありません、主! しかし、主お世話係の称号は俺だけのものです! 他の誰にも譲る気はありません!」
んー…長谷部以外にも名乗ってる奴いるんだけど、言うと余計にややこしくなるだけだろうから黙っておこう。長谷部の言葉に、雷は「司令官のお世話は雷だって譲れないわ!」とオレに抱き着いてくる。それを見た長谷部の口元がひきつったかと思えば、わなわなと全身を震わせ始めた。
「貴様、主に抱き着くなど何て羨ま…いや、無礼だろうが! 今すぐ離れろ!」
「長谷部、羨ましいって言いかけなかったか?」
「気のせいです!」
「司令官、雷にもっともーっと頼っていいのよ? 私が司令官のお世話、全部してあげるわ!」
「そうはさせるか!」
雷も長谷部も、お互いに譲る気はないようだ。火花でも散りそうなほど睨み合い、審神者部屋には一触即発な空気が漂っている。怖い。誰か助けて…。キリキリと痛む胃を押さえ、オレは心の中で第三者の助けが入る事を祈る事しか出来なかった。
prev / next