「そんなとこだ。」
 永久はあたしをちらっと見て、ギョッとした。
「な、なんだその顔は!」
「だって、永久が一番つらいのに、あたしが泣いたら
いけないじゃん。」

「人はすぐに他人を“イロつきのフィルター”で見る。」

永久があたしと目を合わせる。
「成留は違うと思ったのだがな。じゃあな、オンナ」
 
 あたしはなにを間違った?
永久は、どうしてあたしに過去の話をした?
イロつきのフィルターで見るなんて、してた?
考えただけで、少し腹が立ってきた。
 
 家に帰ると、やっぱり気持ちが沈む。1厘永久だけど、
9割9分9厘奏哉のことだった。
「おかーさん、ちょっと奏哉んとこ行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
 冷たい病院の廊下と床。ちょっと歩いた集中治療室が奏哉の部屋。

たくさんのチューブに繋げられた奏哉は生きてるかどうかわからない程
顔色が悪かった。
「奏哉…」
 振り絞った声は震えていて厚いガラスに阻まれて奏哉に伝わるわけもない。
「奏哉…」
 ねぇ、奏哉。今のあたしを見て、あなたはどう思いますか。
こんなことで泣くな!って笑うだろうか。それとも、呆れたように…
なんでもいいから、目を開けてよ!!
「奏哉!!!」
 
 
―翌日―
 学校へ行くと、友海が風邪で休みだった。
美景も、来るのが遅くてあたしは校内をぶらぶらしてた。
「ねぇ、井塚さん。」
「…青柳さん。」
 声をかけてきたのは、青柳 由菜(あおやぎ ゆな)。特に親しくもない
普通の学校にいる人。ネトネトした声で話しだす。
「吉永くん、入院したんだって?」
「…それが?」
「暴行事件?吉永君、いかにも悪げな雰囲気だったから。」
「…」

 違う。

確かに、奏哉は見た目が優等生ではない。部活も襲撃部。
だけど、不良でもない。どこにでもいる、元気のいい人。
「やっぱりショック?由菜さぁ、彼氏いないから分からないけど、
かわいそうだなぁ…なんかあったら相談してね?」
「分からないなら言わないで!!」
 
                     あ。
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