かみさま、とは何なのか。地球を作ったあの人?それとも処女から生まれたあの人?無宗教の私にはいまいちピンとこない。存在しないと思っているわけではない。というのも、猿が人間に進化したという論よりかは神様が人間を作ったのだという方が少しばかりロマンがあって良いなあと思うからだ。猿が人間に進化する確率は箱の中にプラモデルだったかブロックだったかを入れて振り、きちんと組み立つかどうかと同じなのだとどこかで聞いた覚えがあるのも一つの要因かもしれない。本当かどうかは定かじゃないがもしそうなら、それはとても果てしなく感じる。かみさまに実際に会ったことなんてもちろん無いし、聖書の内容だって何回か読もうと試みたものの結局途中でわけがわからなくなってアダムとイヴが追放されるあたりまでしか理解できなかった。困ったときの神頼みなんて言葉があるように人間は神様を信じていなくたっていざという時にお願い事をしたりするけれどその先もずっと信じるわけじゃなくて一時的なものだし、もし願いが叶ったってそれはその人の努力の結果か、はたまたその人の運だ。

「だからね臨也、私に神様が何とか聞かれても困るよ。わかんないもん。もっと他に楽しい答えくれる人いっぱいいるでしょう…って臨也!何で固まるってるの」
「…ああごめんごめん、君でも無宗教なんて言葉とか知ってることに驚いて」
「あなたの中の私にびっくりだよ!どれだけ馬鹿だと思ってたの」
「だからごめんって。それにそうだね、君の言うとおり、何倍も面白味のある回答をしてくれるやつなんて腐るほどいるさ」
「でしょ?」
「けど、俺が聞きたかったのは楽しい答えなんかじゃなくて、君の答えだったわけだ」
「ふうん」
「だから君のその答えが本当じゃないこともわかるよ」
「…嘘ではないよ」
「続きがあるだろう?“でも”?」
「…なんでわかるの」
「君のことなら知ってるからさ。諦めたほうがいいよ」
「う…」
「ほら」
「……でももしかみさまがいるなら、それは」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「あ、靴紐切れた」
「…は?」
「いざやどーしようこれじゃあ動けない臨也!」
「ばかじゃないの」

臨也はいつもみたいに言葉通り馬鹿にした声で笑った。だったら顔も、見下した表情をしていればいいのに。どうしてそんな優しい顔をしているの。靴紐が切れたってどうにもならないことを知っている。本当に動けなくなってしまえばいいのに。でも足がある限り私は動くことができる。ばかじゃないのって、そのまま私を置いていってしまえば良かったのに。臨也はしゃがみ込むと私の頭を撫でて、短くなった靴紐を器用に結んだ。とうとう動かないわけにはいかなくなって、頭の熱を無くしたくなかったけど促されて立ち上がった。

「手を繋ごうか」
「…エントランスまですぐだよ」
「いいじゃん」
「聞かなくていいの」
「何を?」
「続き」
「うん」
「何で」
「言っただろう、知ってるからさ」
「…そっか」
「それと、」
「うん」
「同じだから」

何を、なんてもう聞かなかった。手のひらに汗が滲んでいる。もう秋になるというのにすごく暑い。でも離せない。熱い。手が、頭が、目頭が、熱いよばか。


さようなら僕だけの神

thanx mousugu

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