手が離れたその瞬間、ぐい、と手首を引かれた。振り返ることはできない。臨也が手首を掴んだまま後ろから、耳元で言った。今まででいちばんやさしい声。
「俺を忘れるな、とは言わない。恋愛をもうするなとは言わない。恋をしたって良い、彼氏を作ったっていい。結婚もまあ、許そう。だけど子供は作るな、取り返せなくなるから」
ばっ、と振り返った時にはもう人混みに紛れていた。手首を掴まれた熱ももうない。でもなぜか、見ていないはずの臨也の顔が網膜に焼き付いていた。あなた以外の人なんて、もう愛せるわけがないのに。本当に馬鹿だ、あいつは、ほんとうに。

「泣くくらいなら、手放すなよばかあ…」

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