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駄目だわ、十日も、あんな感じだわ…
副長がトッシー化して、毎日毎日好きだと告げられ抱きつかれ…副長はどれだけこの想いを我慢していたのだろう。
「トッシーが出てくるくらいだから相当だなぁ…」
退の件で相談に、と思ってもあんな感じだと話も進まない。それでも、今日こそは言わなきゃ、話さなきゃ、どうにかしなきゃ。副長に戻ってもらわないと困る。
「副長ー!さっさと仕事してくださ…」
半分開けた副長の部屋の扉を、勢いよく閉め直した。何だアレ…壁一面私の写真だらけじゃないか。どうしよう、どうしよう…逃げなきゃ、そう本能が示す。それから身体を反転させようとしたけれど、何故か一回転した処で副長、否、トッシーと目が合った。
「みょうじ氏ィィィ!そろそろ来てくれると思って待ってたでござるよ!ささ、入って入って!」
「待ってたでござる、じゃないわよ!」
とは謂え、あの副長に力で勝てる訳がない。あっさりと組み敷かれ、瞬く間に隊服をも破られる。今度こそ確実に犯されそうだ。嫌がってもやめてくれる筈はなく、私は頭をフル回転させ、弱々しく呟く。
「十四郎さん、あの、」
「なんだい?みょうじ氏?」
「…優しく、してくださいね」
そしてトッシーから力が抜けた瞬間を見計らって、
「ふぐぁッ!」
一発殴り、いっぺん死ね!!!と吐き捨ててその場を去った。戻るのを待っていられない、私には時間が無いのだ。
私が、副長に、土方十四郎に…頼り過ぎた所為で、負担を掛けた。無理をさせた所為で、気持ちを押し殺させた。そして、その代償にトッシーを引き摺り出させてしまった。
あぁ、駄目だったのは自分の方じゃないか。アイツの言葉が、今更になって身に染みる。
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トトトトト、トッシー何やってんのォォォ!!なまえちゃんを部屋に引き摺り込んだ処を目撃し、気になって中を覗く。押し倒されてるじゃねェかァァァ!
俺だって、俺だって、そんな真似、した事が無いのに…
勿論、一般的な成人男性である俺がそんな気を起こした事が無いと言う訳じゃ無い。駄目だったんだよ、俺自身が。
白くて、細くて、ふわふわして、綺麗で…綺麗過ぎて。俺なんかで汚しちゃいけない…そんな事したら、本当に壊してしまう。
変な話だが、たった今迄はそう思っていた。そう、今迄は…
トッシーの呻き声と、彼女の一言。
「ふぐぁッ!」
私は!アンタなんかに初めてはやらない!!(嘘だろォォォ!)