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「………さ、…さん!…まざき、さん!」
バッ、
「…ゆ、め?」
またあの夢。着物の女の子が何故か俺を呼ぶ。
「なまえちゃん以外の女の子と親しくなった事無い筈なんだけどなぁ…」
ガシガシと頭を掻くも思い出せないし、もしかしたら考え過ぎてるのかなぁ…
「あ!時間!」
昨日沖田さんが“とりあえず朝一で飯食いなせェ、なまえは明日食事当番、作り終わったら速攻食べる奴でさァ…”とか言ってたけど本当かな。イマイチ信用しきれないんだけど…
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「いっただだきまーすっ!」
!!!なまえちゃん、マジで居る…吃驚して咄嗟に身を隠してしまった。色んな感情が頭の中で格闘している。
「あ、土方さんおはようございます!もぐもぐ…」
「…おはよう、なまえ」
「土方さん、今は勤務中ですよ、もぐもぐ…」
「良いじゃねェかよ。つーかよく食べるな…」
うわ…副長もいるよ…しかも名前呼び…よく考えたらそうだよね逆プロポーズされてたし。二人きりの会話は大した事無い筈なのに胸が苦しくて仕方ない。
「土方さん、今日勤務後空いてますか?」
「あぁ、空いてる」
「お酒飲みたい気分なんで付き合ってくれません?」
「分かった」
「あと土方さん、」
「まだ何かあんのか?」
「………退の気配が凄いです…」
「はぁ!?」
「考え過ぎですかね?」
「じゃねェの?」
「なら良いんですが…」
気配って何!俺一応監察なのに察知されてたのォォォ!?俺監察失格かな?と思いつつも彼女がまだ俺の事を下の名前で呼んでいた事に嬉しさを隠せない。避けられている間はずっと山崎、だったから。出て行きたい、話したい、でも副長居るし…俺はまた頭を掻きながら自室に戻った。
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「やーい!山崎のヘタレェ」
「沖田さん…」
「居ただろ、なまえ」
「…副長も居ましたけど」
「それは俺も誤算でィ」
沖田さんがくれた情報は確かだったし協力してくれるって言っていたのは少し信用出来た。“俺は野郎がなまえとくっ付くのが胸糞悪いだけだィ、あのムッツリめ”って言っていたけど誤魔化している様にしか見えない。それでも俺が和らいだのは事実。
「…有難うございます」
「何でィ、急に」
「いや、応援してくれてるみたいですし」
「このままだと土方コノヤローを正面から殺り辛ェ事この上無いでさァ」
そ う い う こ と か ! !(当たり前でさァ、)(本当に信用して良いのかな…)