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「只今戻りましたよーっと、」
「………」
「…副長?」
「…早くね?」
「そっちかよォォォ!」
あんな凹んでたから二、三日は帰って来ないだろうと踏んでいたらしい。生憎凹むどころか色々吹っ切れてきましたよーだ、ちくしょう。
「書類、手伝いますよ」
「いや、いい…です」
「何ですかその変な態度」
「恐いんでさァ、なまえが」
「アンタはいつからいたのさ…」
「きっと土方さんは元ヤンのなまえにビビってんでさァ。怒らすと手が付けられねェですし」
私がいつアンタを怒鳴り散らしたんだ。ここじゃ怒った事なんか無かった筈…いや待て、総悟は…
「旦那でさァ」
「あンの腐れ天パ…」
「なんでィ。折角人が協力してやろうってのに」
「一体何を協力すんだ?」
総悟はにやけて何か企んでいるようだし、これ以上突っ込まない方が無難だ。訳が分からない様な顔して副長も若干口角上がってるし気持ちが悪い。そしたら「副長ー!書類持ってきましたよー」と退が襖を開けようとした。屯所に帰って来ると言う事は当然顔を合わせなきゃいけないけど、甘味屋の一件で会いづらい…副長は別れて気まずいからってさっき気を遣ってくれた筈なのに、すんなり部屋入れてるし訳が分からない。
「なまえちゃんいたんだ」
「…いちゃ悪い?」
「てっきり結納の事で実家に帰ったか、旦那と一緒だと思ってたよ」
「っ!…」
「それくらいにしときやせェ。泣きそうじゃねェですかィ…」
「旦那と恋仲ならさっさと言ってくれれば良かったのに。まぁ後腐れなくて清々したよ」
「山崎、言い過ぎだ」
副長と総悟がフォローしてくれるも退は止めない。嘘か本気かなんて顔を見ればすぐ分かるのに…退の顔色は物凄く悪く眼は据わっていて、まるでまだ私の事を好いてるかのようだった。
泣きそうなのは貴方だよ(無理して強がらなくても良いのに)