昨日の俺はもう何が何だか分からなくなって、散々考えたのに最終的にこの一言に収束してしまう。なまえちゃんと局長を見送った後、居た堪れなくなって俺も食堂へ行ってみたのだが行かなきゃ良かったとも思える程にタイミングが悪かった。
だってさ…敬語で話してたはずだったんだよ。なのに二人きりになった途端急にソレは無くなって仲が良さそうに笑っていたんだから。あの副長が敬語で話すなんてとてもじゃないけど考えが及ばなくて…かと思いきやアレだろ?もう付き合ってんじゃん当確じゃん…あーあ、失恋したわー。で、想いを伝える事もせずこの質問に至ったってワケ。昨日の今日…しかも早朝だけど。
「言ってませんでしたっけ?」
「うん。二十代前半って思ってたけどそうじゃないんだよね?」
女に年齢はタブーですよなんて微笑んだって無駄だからね!百歩譲って局長は良いさ、でも副長まで敬語ってやっぱり年上なのだろうか…もしかしたら俺よりも……いやいやそれは無い。
「土方副長よりは、上です」
「局長もあんたに対して敬語だったよね?」
「近藤局長より……も、上です」
「嘘だろ…」
「いや、本当ですよ。それよりやめません?思ってたよりめちゃくちゃ恥ずかしいです…」
「だめ。気になっちゃったからね、」
観念しなよって言ったら溜息をついて俺の耳元に………って!近い近い近い!!!
―――あなたといっしょ、です。
艶っぽく発した音のひとつひとつに鼓膜が反応し最後にふぅ、と息を吐きかけられぴくりと耳朶も震えた。昨日までおよそ十は違うであろうと考えていたのに…俺ってひょっとしてロリコン!?とさえ悩んでいた日もあったのにさ。
「え?えぇええぇ!?!?!?………嘘、」
「嘘じゃありませんよ…みょうじなまえ(32)です」
俺はじっと見つめる他なかった。目元も皺一つ見当たらず頬も艶々でえくぼなんかもあるし…
「そんなに見ないでくださいよ。照れ、る…」
しゅん……と俯いた彼女がとても可愛かった。まるで昨日の俺みたいに三角座りで俯いて尚且つ髪の隙間からこちらを覗いているのだから。目があってしまったらきっと歯止めが効かないんだろう。それほどに妖艶すぎて…自分の気持ちを再確認したのだ。失恋したはずなのに、俺は諦められなくなってしまったと。