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地雷を踏んだら魔法使い

「…………え?えええ!?」
「そんな驚かなくても…」
「いやいやいや!え、えぇぇぇぇ!?」
「泣いていい?」


巷では魔法が使えるようになるとか言われてる(と言うか馬鹿にされてる?)けれど、この場合ソレはどうだって良い。
幾ら男ばかりで出会いがないとは言え女中さん達にもそこそこの好感を得ている彼が…年齢の割に若い顔して、優しくて気遣いが出来る山崎さんが……まさかの童貞だった。
今日は涼しいから部屋じゃなくて縁側で呑んでいて、お酒の肴に聞いてみただけなのに山崎さんは物凄く顔を赤らめて下を向く………私は地雷とやらを踏んでしまったようだ。


「え、ちょっと待って下さい…えっと………」
「おっさんをからかわんでくれ…」
「だって山崎さんモテますよね?」
「好きな子以外にモテても意味無いんよ?」


初めては好きな子って決めてたから気付いたらこんなおっさんになってた、なんて…考えが女子高生みたく可愛らしい。捨てようと思えば出来なくもない。だって吉原とかもあるし、ついこの間だって潜入捜査していたじゃないの。なのに案外可愛いとこあるんだなぁとまじまじ見つめてしまった。偶に髪を束ねる仕草も少しはだけて見えた鎖骨も結構セクシーだとは思うんだけれども………寧ろ、これで童貞ってめちゃくちゃ美味しいのでは…


「なに?そんなにおかしい?」
「もっと普通のが返って来ると思ってたんで何とお応えすれば良いか…うーん」
「普通のって何さ」
「年相応に数人くらいはあるかと。あと山崎さんってずっと年齢不詳でしたでしょ?」
「そうなの?」


そうだよ………だって誰も近藤局長や土方副長より上だなんて思わない、否…思えない。


「最近まで…ずぅーっと年下だと思ってましたもの、」
「それはさすがに無いでしょ。なまえちゃん二十代前半くらいだよね?」
「え?そんな若く見てもらえてるんですか?」
「それってどういう…」


年下だと思っていた、なんて言ったからか山崎さんは混乱している。それよりも私自身が二十代前半に見られていた事に少し嬉しく感じてしまった。束の間、廊下からドタドタと足音が聞こえ現実に戻る。


「あ、いたいた!なまえさーん!」
「どうかなさいました?近藤局長、」
「女中さん皆んな帰っちゃってさぁー」


今日は真選組で宴会をしていて近藤局長は追加でおつまみを作ろうとしたらしい。けれど作り方はおろか食材や調味料の場所が分からないのだとか。


「それなら私作りますよ。呑みながらで良ければ、ですけど」
「本当!?いやぁ助かりますよー。そうだ!なまえさんも良ければ一緒にどうですか?」
「えぇ、是非」


では先に行きますねと縁側に置いていたお盆と共に食堂へ向かった。あの場へ山崎さんを残して…もはや逃げたと言っても過言ではない。
幾ら話の流れとはいえ、俯きながらも私を覗いたあの三白眼を直視出来なかったから……あのまま私も見つめてしまったりなんかしたら、きっと戻れやしないだろう。
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