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容姿端麗に死んだ男

あんパン生活◯日目―――

今回の捜査も難無く侵入出来た、それはそれは驚くほど簡単に。壮年の男たちは目の前にいる青年を頭だと言っていたが若すぎる…どう見ても二十代半ばじゃないか。疑わずにはいられない。入ったばかりの下っ端にも関わらず重要な事までをも。日まで時間が無いようで話さずにいられなかったようだ。
そして最後にひとつ、と針の若く真っ直ぐで灰白色に煙る海のような髪をした青年は今日もまたつらつらと述べ始めるのだ。


「貴方は大切な人、いらっしゃいますか?」


その手の話か。どいつもこいつも、話したいのならば聞いてやる。ただし殆ど右から左だ…


「僕はね、居るんですよ。そりゃぁ年の割に可愛くて仕方ありませんでした。子供ながらに憧れていた女性だったもので。婚姻の申し出を受け入れてくれた時は飛んで喜びましたねぇ…」
「姉さん女房なんで?」
「えぇ、八つ程。今はどうしているのやら…」
「離別でもしたんですか?」


どう言う訳か気になってしまった。この仕事に情は不要なのにも関わらず。少しばかり眉をひそめた男は続ける…尤も、そう思っているのはあの方だけですけれど、と。意味を問うと追い討ちをかけたように微笑んで…

―――彼女は僕が死んだ、そう思っています。

好いた女の話をしているのにその男の目は冷たく、発した言葉は形だけのようにしか思えなかった。
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