緊急速報(承太郎長編番外)

注意*承太郎長編番外編でモブ女性語りです。




明日が休日となれば仕事もまだ頑張りがいがあるというもので、混み合う夕方。しかも週末の歯科医院の待合で、雪はキーボードを叩いていた。
診療費の計算が終わり患者さんの名前を呼ぶと、手早く会計を済ませる。
チラチラとこちらを盗み見てくる男性の視線も気づかないふりをしながら、ふと自分の指先に目をやった。
(ネイル……剥げてきてるな)
こういう少しの事も気になって仕方ない。
加湿器の水にアロマオイルを垂らし、いくら見ないふりをしたとしてもやはりきになる待合からの好奇の目線を遮るように小さな大理石の器に入った観葉植物を自分のそばにおいた。
この病院で今も化粧も直さずせっせと働いている友人は昨日、そんなに気になるのなら無理をしなくていい。落ち着けるように何か可愛いいものでもそこに置こうと言ってくれた。稀有なレベルの美人だと自負している雪は、客寄せパンダ的な雇われ方をされている事は覚悟の上だったが、こうして意外にも気を使ってくれる友人がいて嬉しくて仕方ない。
だがしかし帰ってきた友人はすっかり用事や熱帯魚の事などどこ吹く風で、いそいそと控え室に篭ってしまった。何事にもある意味無感動というか、無関心な友人のそんな有様が珍しく、思わず何度も控え室のドアを叩いた。

ネイルの欠けた赤を見つめていると電話がなる
3コール目で受話器を取ると、声の主は最近何かと病院を賑わせるあの高校生だった
「空条だ。先生はいるか」
「空条様ですね。本日はどうなさいましたか」
「日曜の10時に病院の近くの駅に来るように伝えてくれ。」
おや。と雪の感が何やら色っぽい雰囲気を感じ取る。あの美丈夫の高校生と友人。全く重なるものがない。平凡を自でいく友人にあの高校生から、休日に一緒に外出の誘い。
受話器を置くと思わず口角が上がる。あのとことん無頓着な友人が随分大胆な相手とそういう…
根堀り葉掘り聞きたい衝動と、なんとなく何か始まりそうな友人の恋路に思わず口角が上がる
ニッコリ笑ったまま
[最寄駅10時空条承太郎]
と書かれたメモをラウンドガールさながら高く掲げる
「先生!空条承太郎様が今週の日曜10時最寄駅で
私用で先生にアポイントメントが取りたいそうです!」
診療室で声高に呼んでやった。
ガシャンと奥から聞こえる何かを落とす金属音と、先生!!と悲鳴のようなマキちゃんの声に、雪は爪ヤスリ片手に受付で満足げに微笑んだ。


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