誰か誰か。


「というわけで花京院。お前ももう時雨に近づくな。今までは平気でも、これから大丈夫という保証はない」

花京院はじっと承太郎を見つめると、取り敢えずは納得したように目を閉じた。
学校の屋上。当然のように授業をサボって花京院を呼び出した承太郎に、もう慣れた様子でついてきた彼は、屋上のフェンスに体を預けると改めて口を開いた

「あの時雨先生がまさかね」
「こうなっちまったら仕方ない。一度本格的に暴走を始めてみろ。スピードワゴン財団でも対処療法しかできない」
「本当にこうして距離を取り続けるしかないのかい?」
「時雨自身もこれ以上巻き込まれたくは無いみたいだしな」

ふぅん。と短く返事をすると、それにしてもそんなに時雨先生と承太郎がそんなに仲が良かったなんてね。とからかうように言った。承太郎の脳裏にあの日時雨の部屋で見た、時雨と花京院の写真が浮かぶ。お前の方がずっと仲かがいいじゃ無いか。湧き上がってきた女々しい感情に承太郎は見無いふりをする。

「事実でしょう。年上の女性を時雨なんて呼び捨ててよんでるなんて」
「実際他人ではなかったと思ってるぜ。でもそれもお終いだ」
「それにしても残念だ。今日はいつもの定期検診だったのに電話がかかってきて、先生が急病で入院してるからまた日を改めてって言われたんだ」

ピクリと承太郎の眉が無意識のうちに上がるのを花京院は見逃さなかった。

「せっかくお見舞いに行こうと思ってたのに、もう二度と会えないなんてね」

言い終わるやいなや承太郎は踵を返して屋上から出て行く。
どこに行くんだい承太郎?花京院の問いには答えず。そのまま学校を後にした。









混乱している。自分は今本当に未知の世界にいる。
点滴を外されひと眠りしようとした時雨の目の前には、見た事のない生き物がいた。
目の前に現れた緑色と白の、人間のような形をした何かが、時雨のベッドの下から這い出てきたかと思ったら、部屋中に根のような、ツタのような物を張り巡らせてくる。
知らない生き物の登場の鳥肌が立つと同時に自分の体から興奮したようにシャボン玉が次々に飛び出してくる。まるで自分が石鹸にでもなったような錯覚さえ覚える。
生き物が少しでも動くと心臓が破裂しそうだ。誰か守ってはくれ無いか。あまり実感は沸か無いがもしかしてこれは本当に死ぬかもしれ無い状況なんじゃ無いのか。
手が白くなるまでスマホを握っている事に気づくと、誰か誰か、この状態をどうにかしてくれる誰か…!
そう思ってアドレス帳をスクロールする。
とにかく夢中で発信ボタンを押すと、緑色の何かが時雨に向かって伸びてくる。
もう少しで触れられる。といった距離にきたとき、バチン!という激しい音がして、背後から伸びた誰かの腕がそれを跳ね返した。同時に、緑色の生き物は一瞬にして消える。
膝から前のめりに崩れ落ちそうになった時、その腕が後ろから時雨を抱きかかえるようにして支えた。
真後ろに男の人がいる。
恐る恐る振り向くと、整った顔をした、時雨よりも年若そうな、目の下に紫色のマークを施した金髪の青年が時雨を見つめて微笑んでいた。青年のバンダナが時雨の頬を掠める

「う……そ誰…?」

バタバタとケータイの着信音と大きな足音がこっちに近づいてくる。
時雨のスマホには、通話中空条承太郎という文字が浮かんでいた。








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