見守ってただけです


外観よりも大きかった空条邸には空き部屋も多いらしく、中庭に面した座敷に敷かれた布団の上にあぐらをかいて座る。
お布団から上がったばかりで温まった体に、ホリィさんが貸してくれた柔らかいパジャマは心地いい。
いよいよ分娩室に入ったらしい義姉さんは、気合いで明日にはまでに産むから、時雨ちゃんはもう明日には休んでねと唸りながら電話をかけてきてくれた。万一の為に明日出勤する準備はするが、この分だとようやくゆっくり休めそうだ。こてりと掛け布団の上から横になると、思ったより疲れていた体はあっさりと眠りに落ちた。





風呂から上がった承太郎は、楽しそうなホリィに、承太郎が時雨先生とこんなに仲良くなってたなんて意外だわと零し、その目は明らかに具体的にどのくらいの仲なのか知りたそうにしていたが、承太郎はそれを無視し時雨の座敷に向かう。襖を開けると、中庭への障子を開け放したまま、掛け布団の上に転がる時雨に呆れたように声を掛ける。

「オイ、起きろ。流石に馬鹿としか言いようがないぞ」

よほど疲れているのかピクリとも反応しない時雨を抱き上げると布団の中に放り込む。障子を閉めると改めて時雨の顔をマジマジと見た。
ここ一週間程見かけてはそっと尾行してしまっていたが、承太郎が時雨の体調の変化に気づくのは簡単だった。なんとなく動きが鈍いと感じた診療中や、帰宅中の時雨にスタープラチナでそっと触れると、微熱があるのか、それは一週間続いていた。
流石に見ていられなくなり引きずって連れてきてしまったが、心なしか少しマシになった顔色に安堵する。






部屋に戻ると、机の上に置かれた小さな水槽の中で、茶色がかった灰色のコリドラスが一心不乱に地面を食んでいる。
あの後なんとなく買ってしまったこの魚は、時雨が言うように自分にも中々愛嬌があるように感じられた。
ベッドに横になると家に引きずり込んでおきながら、さて明日からどうするか。と承太郎は思案しながら眠りについた。

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