名前で呼んで






最近、ジュダルがよく部屋に来るようになった。
けれども、気になることが一つ。

それは………




名前を呼んでくれないこと






――――――――――――

「でさぁ、紅玉のババァが毎回毎回――――――」


楽しそうに話すジュダルを見ながら、僕も微笑んで
相槌をうつ。


「ふふっ…。なんだか楽しそうな人だねぇ」


今日もジュダルは僕の部屋に来て、煌帝国での出来事を話してくれる。
以前僕が言ったことを気にして頻繁に会いに来てくれているみたいだ。

最初は流石に少し戸惑ったが、今ではジュダルと話をするこの時間が毎日の楽しみになってしまった。


「お前も一回煌帝国に来いよ!俺が案内してやるからよ!」


「うん。でも、シンドバッドおじさんの許可が下りてからね?」


そんな僕の言葉に、ジュダルは凄く不機嫌そうな顔をしながら「えーっ」とぼやいた。
こうして見ると、なんだか小さな子供みたいで愛らしいな。


年上だけど。





「んだよ、めんどくせぇな。どうせアイツも今煌帝国にいるんだろ?」


そういえば、そうだった。彼はまだ煌帝国の皇帝との会談のため、シンドリアに帰っていない。


「それはそうだけれど……」


「じゃ、とっとと行こうぜ」


「ちょ……えっ!?
今から行くのかい!?」


「ったりめーだろ。ほら、さっさと来い」


グイグイと腕を引かれ、窓際まで連れてこられる。

この状況は非常にマズい。このままでは、本当に煌帝国まで連れて行かれてしまう。


「ま……待って!もうちょっとだけ待って!」


「無理。早くしないと無理矢理連れて行くからな」


(今でも十分無理矢理じゃないか!)


と反論しようとしたが、
今の彼には何を言っても
無駄な気がする。

この場を切り抜ける方法を必死で探すが、その間にも僕の腕はジュダルに引かれ続ける。
外を見ると、何故か空飛ぶ絨毯が既にスタンバイしていた。

なにか手はないものか…


(あ、そうだ)


一か八か…これに賭けるしかない。


「ねぇ、煌帝国まで僕を
連れて行ってもいいよ?」


「本当か!?じゃあ―――」


「その代わり」


いきなり言葉を遮られ驚くジュダルを余所に、僕は
言葉を続けた。


「僕の言う条件を聞いて欲しいんだ」


無理に連れて行かれるんだから、条件くらい出しても許されるだろう。

すると、ジュダルは一瞬眉をひそめた。が、僕の言ったことを理解したのか、
ニヤリと悪そうな笑みを浮かべる。


「つまり、その条件を満たせばお前を何処に連れて行ってもいいんだな?」


「うん、いいよ」


「何日でも連れ回していいんだな?」


「一週間でも、一カ月でもどうぞ」


「へぇ、大した自信だな。
じゃあ、その条件とやらを言ってみろよ」


「あのね…」と一呼吸置き、僕はジュダルに条件を告げた。


「僕のこと、名前で呼んでくれないかい?」




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