いつかの世界
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リア友からのリクエスト作品。
もし、アラジンとジュダルの性格以外が逆転したらどうなるのか…
っていうお話です。
アラジンがアル・サーメンにいます。
苦手な方はUターンをお勧めします。
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「やぁ、ちっちゃいマギくん。久しぶりだね」
シンドリア王宮のとある一室に、僕は窓からにこやかに侵入する。
勿論、誰の部屋かは下調べ済みだ。
「なんだよ、何しに来たんだよお前!」
それに反発するのは黒髪赤目のまだ幼さの残る少年。
以前バルバッドで衝突して以来、どうも嫌われているようだ。
「何って、君に会いに来たんだよ?」
「お前、煌帝国ってとこの神官なんだろ?国に居なくていいのかよ…」
警戒しつつも会話は続けてくれる。
これは少し嬉しいな…。
「いいのいいの。神官なんて、滅多に仕事が無くて暇なんだから」
「ふーん。そんなもんなのか…」
適当に返すと、彼は意外にも納得したようだった。
あまり深い考えを持っていないのかもしれない…。
「そんなもんなんだよ。
そんなことよりちっちゃいマギくん、今日は君にお話があって来たんだ」
「…ジュダルだ」
「まぁまぁ、細かいことはいいじゃないか。本当のことなんだし」
僕は見た目をそのまま呼び名にしているだけなのだが、どうやらそれが気に入らないらしい。
そんなことより、僕には聞かなくてはならないことがあった。
「そうそう、お話ってのはね…
君、僕たちの組織に来る気はないかい?」
僕の唐突な誘いに、彼は戸惑いをみせる。
「お前らの…組織…?」
「そう、僕たちの組織。
もし君が来てくれるなら凄く助かるんだけどなぁ」
そう言ってニッコリと笑う。
我ながら胡散臭い笑顔だな…。
「でも…俺、シンドバッドとの約束が…」
遠慮がちに彼が発した「シンドバッド」そして「約束」。
この単語に、僕は途轍もない嫌悪感を感じた。
一番聞きたくなかった男の名と、所詮自分の為の「約束」。
嫌な記憶が甦ってくる。
「…あんな男信用しちゃ駄目だよ。きっと君も利用されて、必要なくなったら捨てられるんだから」
無意識に声のトーンが落ちる。
そんな僕の言葉に、ジュダルは首を傾げた。
「君…も?」
ジュダルの呟きに、僕はハッと我に返る。
「おっと、喋り過ぎちゃったね…。
取りあえずシンドバッドは信用しないほうがいいよ。あの人は自分のことの為なら手段を選ばない人だから」
「なんでそんなこと教えてくれるんだよ…」
その問いに、口を突いて出そうになった言葉をグッと抑え込む。
「「なんで」?
そんなの決まっているじゃないか。
君に、こちら側に来てほしいからだよ」
「…それだけか?」
まったく、変な所で鋭いんだから…。
「うん。
ただそれだけだよ。
で、君はどうするのかな?僕と一緒に来るかい?」
「俺は…………
行かない」
そう、ジュダルは真っ直ぐな瞳で僕を見ながら言った。
少し迷っていたようだが、決意は変わらないらしい。
「そっかそっか、それは残念。
じゃあまた来るよ、ちっちゃいマギくん」
「ジュダルだって言ってんだろーがばぁーか!!」
「はいはい、またね」
不機嫌そうなジュダルに笑いながら手を振って、入ってきた窓から空飛ぶターバンに飛び移る。
少し特殊なこの国の結界を上手くすり抜け、僕は煌帝国へと急いだ。
(あぁ、良かった…)
少しして、僕は安堵のため息を漏らす。
本当は今日は、この世界のジュダルが堕転する可能性があるかどうかを確かめに来ただけだったんだ…。
でも、あの様子なら大丈夫だろう。
(あと心配なのは、おじさんの出方かな…)
この世界のジュダルは、絶対に自分と同じ道を辿らせてはならない。
ましてや、利用されて捨てられる運命なんて…
(僕が変えてみせる…!)
しかし、立場がこうも違うと話したいことも話せないものなんだな…。
本当は山積みの神官の仕事を全部片付けて会いに来たとか、君を救いたいからこんなことを言っているんだとか、色々言いたかったんだけど…。
(ジュダルくんも、ずっとこんな風に思ってたのかな…)
今となっては確かめようのないことだけど…。
(そうだといいなぁ…)
そんなことを考えているだけで、自然と顔が綻んだ。
こんな顔、アル・サーメンの連中には見せられないや…。
あぁ、アル・サーメンで思い出した。頼まれてた仕事があったんだっけ…。
(いつまで経っても慣れないな…人を殺めるのは…)
とっても苦しいけれど、これが今の「アラジン」だから仕方ないよね…。
「じゃあ、次は君のやり方を見せてもらうよ
「ジュダルくん」…」
この世界が、最期を迎える時まで―――――――