不器用だって、それでいい
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「おぉ、すっげー。お前髪サラサラじゃん。いつも何使ってんの?」
三つ編みの解かれた僕の髪を、ジュダルくんが手ぐしでとかす。
「椿油とか使ってる?
あれって、毎日塗ったほうがいいのか?」
かれこれ30分は経っているだろうか。
なんと言うか、そろそろ……。
「最近、長い髪の傷みが酷くってさぁ…。
なんかいいやつあったら教えてくれよ!!」
我慢の限界です。
「煌帝国って結構乾燥してっから、静電気とか起きやす「いい加減にしてくれるかな?」」
割って入った僕の言葉にジュダルくんの手が止まる。
その一瞬の隙をついて僕は髪を振り乱し、なんとかジュダルくんの手から逃れることが出来た。
「あああああ!!!せっかく綺麗にとかしてたのに!」
「君は一体何がしたいんだい!?君が結い直してくれるって言うからわざわざ髪を解いて待ってるのに!!」
「だ…だから、今とかしてるだろ?」
「もう30分も経ってるじゃないか!!これだけ時間をかけておいて、「実は三つ編み出来ないんです」とか言ったら本当に怒るからね!」
どうしてこんなことになってしまったのか……。
始まりは、ゴキブリ並に僅かな隙間からシンドリアの王宮に侵入し、僕の部屋までやって来たジュダルくんの一言からだった。
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「よお、チビ!元気か?」
「…また来たの?君は本当に暇人なんだね。
きっと人生の生き甲斐なんかも無いんだろう?」
「あえて言うなら、お前に会いに来ることが生き甲斐………かな?」
「あぁそう」
「素っ気ねえなぁ…。
ん?」
「……何」
「髪、ここだけなんかおかしくね?」
「おかしくないって」
「いや、おかしいって。
よし…!俺が結い直してやるよ」
「いいよ、自分でやるからっ!!」
「遠慮すんなって。ほら、髪ほどけ」
「ちょ、やめ…!
やだあああああっ!!」
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とまぁ、こんなことがあったわけで…。
「お…俺が悪かったから、そう怒るなよ…。
お前の髪って本当に綺麗で、俺と違ってサラサラストレートだし……
あ、ちなみに俺はちょっとウェーブかかった感じなんだけど………見るか?」
「見ない見ない見ない!!」
「そう言わずに見ろって」
そう言いながら、僕の意見を完全に無視して髪を束ねている紐に手をかける。
「ホントにやめてってば!君の三つ編みは面倒くさいんだよ!!」
「お前が結い直してくれるなら、何の問題もない」
だからそれが面倒だって言ってるんじゃないか!!
「よっ……と。ほら、ちょっとウェーブかかってるだろ?しかも髪といてたら絡まってて抜けたり……あ、抜けた」
「なんでだろう…髪の毛一本なのに凄く不快な気持ちになるのは」
「ちなみにこの髪、生まれてから一度も切ったことねえんだぜ!すっげーだろ!!」
「あーすごいすごい(棒)」
僕も切ったこと無いんだけどね…。言ったらきっとヘコむから黙っておこう。
「さて、じゃあそろそろ…」
帰るのかな…。
「三つ編みしてもらうか」
ですよね。
「ヤダよ、自分でやりなよ」
「そう言うなって。俺もお前の髪結ってやるから」
ニヤニヤしているジュダルくんの表情が非常に不愉快だ。
どうせ変な髪型にして遊ぶつもりだろう。
「いや、遠慮しておくよ。僕は君と違って一人で出来るからね。君は人にやってもらわないと出来ないんだろう?」
見下したように言い放ち、「フッ」と鼻で笑う。
すると、ジュダルくんは完全に腹を立ててしまったようで…
「んだとコラ!それくらい一人で出来るに決まってんだろ!!お前はいつも一言多いんだよ この……陰険チビ!!」
「陰険……?」
僕の中で沸々と何かが沸き上がってくる。
「君みたいな腹筋バカに
そんなこと言われる筋合いないんだけど」
「バッ…!?喧嘩売ってんのかてめぇ…」
「喧嘩なんて売ってないよ。本当のことを言っただけじゃないか。露出魔」
「生意気なんだよ、このっ…!!」
振り上げられたジュダルの手が下ろされ、僕の頭に直撃する。
「いっ…!?なにするんだよ!!」
続いて、僕の拳がジュダルのお腹に当たる。
「ってぇ!ふざけんなよチビのくせに!!」
「うっ…!!この……バカ!」
「なにすんだよチビ!!」
「バカ!」
「チビ!」
「バカ!」
「チビ!」
部屋の中で繰り広げられる乱闘。誰も、僕達の喧嘩を止められる者などいなかった……。
「ジュダルくんのバーカ!!」
「うっせえチービ!!」
(※二人とも体が脆弱なので、体格差とか関係無く喧嘩が成り立っています)
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