まだ、遠いB






かれこれ2時ほど、アラジンは月を眺めていた。
この世のものとは思えないほど綺麗だが、流石に疲れてくる。

「もう寝よ……」


気付けばもう深夜。
これでもか、と言うほど活気のあったシンドリアの街もいつの間にか灯りが消え、まるで街そのものが眠りについているように静まり返っている。


だが、そんな景色がまた
彼を思いとどまらせてしまう。
このまま流れに身を任せ
眠りにつけば、また面白みの無い1日がやって来てしまうのではないだろうか。


(シンドバッドおじさんがいたら、きっと何かやることが見つかるんだろうけどなぁ…)


生憎、彼は煌帝国との会談のため、留守にしている。戻ってくるのはもう少し先になるだろう。


(「マギ」……か…)


自分について考えてみるが、考えれば考えるほど分からない。
自分がどうやって生まれたのか、どのように育ったのか、これから何をすべき
なのか…。


「ジュダルなら、何か知ってるのかな…」


そう考えたが、彼から話を聞くのは困難だろう。
何故なら、彼とは敵同士なのだか――――


「俺がどうかしたのか?」


「えっ………」


驚いて窓の方を見ると、
ここに居るはずのない彼が

――――ジュダルがいた。


しかも、窓枠に手足を掛け、今にも部屋に入ってきそうな体勢である。


「よぉ、チビ。まだ起きてたのか?」


「あ……え………」


目の前に広がる光景がまだ信じられない。
さっきまで逢いたいと思っていた人物が、今自分の目の前にいるのだから。

「「なんで」って言いたそうな顔してんな」


「う……うん」


そう答えると、ジュダルは「はぁ……」と大きな溜め息をついた。


「ったく……それを聞きてぇのはこっちのほうだぜ」

「え……」


すると、いつの間にか部屋の中に入ってきたジュダルが静かにアラジンに詰め寄った。


「なんでまだ寝てねぇんだよ。ガキはもう寝る時間だろ」


「え…っと……」


「なんで」と言われたからには何かしら答えなければならないと思うのだが、適当な言葉が見つからない。

大体、自分が眠りについていないことを咎められる
理由も分からない。


「僕が寝てなかったら、何か都合の悪いことでもあるの?」


「別に都合が悪いとか、そんなんじゃねえよ。
ただ、俺はお前が寝てると思って来ただけで……」




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