まだ、遠いB




そう言いながら微かに頬を染めるジュダルを見、アラジンは眉をひそめ、固まった。
自分が寝ていることを前提に部屋に乗り込んできた、

ということは………


「君は……

年下の男に夜這いするのが趣味なのかい?」


その言葉に、次はジュダルが固まる。
そして数秒目を見開いていたかと思うと、一気に真っ赤になってしまった。


「ばっ………んなわけねえだろうが!
勘違いすんなよ!?俺はただ通りかかっただけであってお前に逢いに来たわけじゃねぇし、この部屋に入ったのは外から見たときに窓がここしか開いてなかったからであって……」


「つまり、僕に逢いに来たわけじゃないんだね?」


「はぁ!?誰がお前なんかに逢いに来るかよ!」


「そっか………」


そう言うとアラジンは俯いて、ジュダルに背を向けて床に座り込んでしまった。

(おいおい……俺そんなに落ち込むようなこと言ったか?)


これだけ落ち込まれると、こちらとしてもかなり気分が悪い。
ここは、一応謝っておくべきだろうか。


「おい―――――「僕は」


しかし、掛けようとした声はアラジンの凛とした声にかき消されてしまった。

肩に伸ばそうとした腕は
彼に触れることなく、空を切ることしかできない。


「僕は君に逢いたかった」


「え…」


アラジンの口から出た意外な言葉に、ジュダルは息をのむ。
その言葉は、今まで聞いたどんな言葉よりも静かに、感情的に、真っ直ぐに
ジュダルへと届いた。


「さっきまで、ずっと君のことを考えていたんだよ?
一度でいいから向かい合って話をしたい、知らないことを教えて欲しい、って…。だから、君がここに来た時はとっても嬉しかった。

だけど………君は違った
みたいだね」


アラジンの声は、今にも消えてしまいそうな…そんな悲しみを帯びた声だった。

「俺は………」


(俺だって……)


逢いたくなかったわけじゃない。
ここに来たのも、偶然なんかじゃない。

そう、伝えたかった。

でも言えない。
言えるわけがない。


コイツと俺とでは立場が違いすぎる。本来なら、こうやって話をすることさえ
困難なのだ。

それでも、誤解されたままでは俺の気持ちが収まらない。

この言葉は、今しか伝えられない。


「なぁ、俺……………は?」

言いかけた瞬間、アラジンの体は大きく傾き………



こてん



と、横になってしまった。

「え……ちょっ。まさか、」


そして聞こえてきたのは、返事ではなく静かな寝息。

スヤスヤと、何とも幸せそうな顔で寝ている。
が、その目には涙が浮かんでいた。


(悪いことしたな……)


相手がどれほど自分のことを想っていたのか、その
気持ちに気付いてやることが出来なかった。

そんな罪悪感が胸の中を
埋め尽くし、自分で自分が嫌になる。



ジュダルはアラジンの涙を拭ってやり、体を持ち上げベッドまで運んでやった。

もと来た窓から部屋を出ようとした時、ふと疑問が
浮かんできた。


(もし、また俺が逢いに来ても……コイツは俺を拒まないのかな……)


もしそうであるのなら、
俺は何度でもコイツに逢いに来るだろう。

コイツが望むのなら、


いつでも

どんなに遠く離れていても

「行ってやろうじゃねえか」



2人の距離は

まだ、遠いけれど




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