終わる世界で、約束を
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完全捏造END。
大丈夫な方は下へどうぞ
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自分のことを好きになる奴なんていないと思ってた。
俺はいつも悪役で。
嫌われ者で。
不幸で。
だからアラジン。
お前のあの言葉……あの時は恥ずかしくてはぐらかしちまったけど
本当は―――――――
――――――――――――
「なん…で……」
荒れきった地面に横たわった小さな体。
ゆっくりと抱き上げると、血の気の引いた肌は土で汚れ、致命傷となったであろう貫かれた傷からは血が滲み、青い服を赤黒く染めていた。
どうして。
なんでこうなった。
俺は、ただ――――――
(コイツを守ろうとしただけなのに…)
大事なものを失いたくなくて、必死にもがいて抗って…。
コイツだけは助けたかったのに…!
「本当に残念だよアラジン」
感情の一切籠もっていない声が聞こえた。
忌々しい。
俺の目が捉えたのは、後左右に部下を従えた男の姿。
「シンドバッドてめぇ…!!一体どういうつもりだ!!」
激昂する俺とは反対に、冷静な表情を崩さないシンドバッド。
その目は、ただアラジンだけを見ていた。
「もとはといえば、全てお前が悪いんだぞ」
アラジンを見たままシンドバッドが言う。
「アラジンは元々お前に肩入れする傾向があった。
そして今回、お前がアラジンを助けようとしたことで確定したんだよ」
アラジンから目線を外し、俺の目を見てシンドバッドは笑った。
「不安分子はどんなに小さなものでも潰したほうがいい。
そうは思わないか?」
何言ってんだよコイツ…
アラジンが不安分子?
そんなわけねぇだろ…!
「ふざけんなよてめぇ!
コイツがどれだけお前らのことを……世界のことを救おうとしてきたのか分かってんだろ!?
それなのにお前らはチビを利用するだけ利用して、挙げ句の果てに殺すのかよ!!」
しかしシンドバッドは俺の言葉を聞いてため息をついた。
「知らないわけがないだろう?彼は、よくやってくれたさ。
それに、今回の判断は予定外だ。どの国にも所属しないマギは貴重な札だからな…無闇に処分するわけにはいかん」
「だが…」と、鋭い眼光を俺に向けるシンドバッド。
「お前たちが結託することほど厄介なことはないんだよ。それこそ、こちらの計画に支障が出かねん」
「なっ……」
コイツは、自分の計画を優先するために………
そのためだけにアラジンを…!
「許さねえ…。シンドバッド、てめぇだけは…!」
しかし、そんな俺をシンドバッドはせせら笑った。
「許さないだと?お前は随分と可笑しなことを言うんだな。
この世界を暗黒で染めようとしたのは誰だ。
ここまで世界を狂わせたのは誰だ。
滅茶苦茶にしたのは誰だ。
それは、お前たちアル・サーメンじゃないか」
「それはっ……」
反論しかけたが、その言葉をグッと飲み込む。
シンドバッドの言う通りだ。
こんな世界にしたのは、俺たちアル・サーメン…。
組織の所為にするつもりはない。自分だって、多くの悪事に加担してきたのだから。
それでも、俺は変わろうと思った。
アラジンに出会って、初めて自分のことが好きだなんて言われて、初めて人を好きになって……
そんな人と一緒に居る喜びを知って、人の温かさを知って、
生まれて初めて
自分は今、幸せだと感じたんだ。
「……あぁ、確かにそうだ。俺は―――――俺たちは、この世界を狂わせた。
でもなぁシンドバッド…
お前が今やってることは、俺たちと同じことなんじゃねえのか?」
俺の言葉に、シンドバッドの表情が凍りつく。
「なんだと…」
「本当のことじゃねえか。お前は自分の計画のためにアラジンを殺した…。
でも、よく考えてみろよ。お前はこの滅びてく世界の唯一の「希望」を消したんだ。
それは、アル・サーメンがしようとしていたことと同じなんじゃねえのか?」
「貴様…!」
シンドバッドの顔が怒りに歪む。
だが俺は不思議と何も感じなかった。
どうせ、この世界はもう駄目だ。それはアラジンが死んだ時点で確定してしまった。
それなら――――――
シンドバッドからゆっくりと目線を外し、アラジンを見る。
俺はアラジンに笑いかけると、その体をゆっくりと地面に降ろした。
「もうすぐ…全部終わるからな……」
シンドバッドに聞こえないような小いさな声で呟く。
そうだ
何もかも終わらせてしまおう。
なぁ、アラジン……
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