今日は何の日?






(何だかんだ言いながら、結局1つ余分に作っちゃった……)


彼がここに来る確信なんかないのに。


もし仮に来たとしても、
コレを渡すのはちょっと



(恥ずかしい……)



どうしようかと考えながら部屋の中をぐるぐると回ってみるが、一向に答えは出てこない。


(もう渡すのやめちゃおうかな……)


そんなことを思いながらベッドに仰向けに倒れ込み、目を瞑る。

この際、チョコレートなんて無かったことにしてしまおうか。
僕が作ったのはヤムさん、アリババくん、モルさん、ジャーファルおにいさん、シンドバッドおじさんの分だけ。



そうだ、それがいい。
そうしよう。



ようやく自己完結を済ませ僅かに笑みを浮かべながら目を開ける。





が、その笑みは一瞬にして凍りついた。






「お前、何やってんの?」



「…………………」



「…………………」




あれ…………?





「ジュ…………ジュダル!?」



僕の目に飛び込んできたのは寝室の天井ではなく、赤褐色の意地の悪そうな双眸だった。



計算外だ。

まさかこんな早い時間に来るなんて……。


しかも、よりによってこんな体勢で…!


「お前を驚かそうと思っていつもより早く来てみたんだけど、成功みたいだな」

そう言いながらジュダルは僕の腕を掴んで体重をかけ、顔を近づけてくる。

そのせいで体を動かすことも、逃げることもできない。


「は……放してっ!」


しかし、必死にもがく僕を尻目にジュダルはニヤニヤと悪い笑みを浮かべている。


「放してほしいなら自力でなんとかしてみろよ。
ま、お前の力じゃ無理だろうけどな」


「うぅ………」


悔しいやら恥ずかしいやらで僕は顔を真っ赤にしながら目に涙を浮かべた。

意地悪なこの人のことだ。きっと、足掻く僕を見て楽しんでいるに違いない。


「ほら、早くしねえと襲っちまうぞ?」


「へ………?」


僕がポカンとしていると、ジュダルは僕の首元に顔をうずめてきた。


「んっ………や…あっ!?」


首筋を舌で軽くなぞられると、足の先まで電流が走るような奇妙な感覚に思わず声が漏れる。
止めてほしいのに、ジュダルの行為はエスカレートしていく一方だ。


「も……やだぁっ………」


自分のおかれている現状が惨めに思えてきて、自然と涙が溢れた。


「そんな顔すんなって。もっと虐めたくなるだろ…」


尚も意地悪な発言をしてくるジュダルが嫌で、それを言葉に出来ない自分がもっと嫌になる。


「あぁもう、泣くなよ〜」


慰められたって気分が晴れるわけがない。

自分の気持ちを分かってくれないジュダルに、苛々が積もっていく。


「ジュダルのばか!!もう君にはチョコあげないんだからぁっ!!」


「えっ………」


ジュダルの驚きの声と同時にぱっと手が離された。
そして、体にかかっていた体重もフッと消える。


「………?」


不思議に思って体を起こしてみると、ジュダルは何故か床にへたり込んで僕の顔を見ながら口をパクパクさせていた。


「どう…したの?」


恐る恐る聞いてみると、ジュダルはいきなり僕の方に詰め寄ってきた。


「今、チョコって言った!?」


「え……。う……うん」


何だろうこの豹変ぶりは。さっきまでの変質者っぷりが嘘のようだ。


「お前、今日贈るチョコの意味分かってんの?」


「えっと………。
親しい人とか、お世話になった人とか………?」


「あと!?」


「え……えぇっと………








すっ………好きな人……」







その瞬間、まるで時間が止まったかのように静寂が部屋を支配した。

このままじゃダメだ…。
何か、何か言わないと…。






「か……帰って」


「えっ」




うわああああ!!
よりによってなんでこんな言葉が出てきちゃったんだよ!?


しかし、もう後戻りはできない

あー………もうっ


(どうにでもなれ!!)




「チョコあげるから」


「え、いや……。えっ!?」


「チョコあげるから、帰ってって言ってるんだよ」


「いやでも、俺今来たばっかりで―――――」


「いや、もう。そういうのいいから」


「え、ちょ………」


「さよなら」






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