もしも君を救えたならば









「それなら何の問題もないじゃないか。

僕はシンドリアの食客だし、その兄弟だって言えば
シンドバッドおじさんだって許してくれるんじゃないかな?」


「そんなこと言って、シンドリアを追い出されたらどうするんだよ………」



「ん?あぁ、それは大丈夫だよ。
おじさんはシンドリアの
マギとして僕を国に置いておきたいだろうからね。
せっかく手に入ったマギを簡単に手離すようなことはしないはずさ」


「それ、シンドバッドが言ってたのか?」


「いいや?ただ、なんとなくそう思うだけだよ」



「なんとなく」って………
推測だけでここまで考えてるなんて、本当にコイツは10歳なんだろうか。

俺よりも年上なんじゃないだろうか。


「じゃあお前は、分かっててシンドバッドに利用されてんのか?
良いように使われて嫌じゃねえのかよ」



しかし、アラジンは満面の笑みで答える。



「知らずに利用されるより、知ってて利用される方がいいだろう?
少しの間、協力してあげるだけさ」


本当に、おっそろしいガキだわ。


「っと………こんなこと話してる場合じゃなかった。

正直もう時間がないんだ。今すぐ、どうするか決めておくれよ」


「今すぐ!?」


そんな無茶な………


「簡単なことさ。

僕と一緒に帰るか、
完全に気が狂うまでここに一人で残って廃人になるか


好きな方を選ぶだけだよ」


好きな方って………

殆ど選択の余地がねえじゃねぇか……。


「もう少し…考えさせてくれ」


だが、そんな俺に呆れたようにアラジンは大きな溜め息をついた。


「君って優柔不断だよねぇ。

10秒あげるから、その間に答えておくれよ」


「じゅっ……10秒!?」



「10……9……8……7……」



「ちょ…待っ………」


いくら懇願してもアラジンのカウントは止まらない。



「6………」





俺は一体、どうすれば…





「5………」





思えば、いつだってコイツは本気で俺のことを考えていてくれた。



『君を助けに来たんだよ』


『ここに来たのは僕の意思だ』


『一緒に帰ろう』





「4………」





本当は凄く嬉しかった。


自分のことをここまで想ってくれる奴がいるなんて、初めてのことだったから。





「3………」





もし……………


もし、こんな幸せな時間が続くのなら





「2………」





「俺はお前と………」



この先ずっと、





「1………」





大好きなお前と











「一緒にいたい」











「0………」


ゆっくりと、アラジンが俺を見上げた。

その顔は微かに紅潮しているようにも見える。


「それが……君の答え?」


「あぁ」


俺はしっかりと頷く。


「そっか………」


視線を逸らしたアラジンは「ありがとう」と、小さく呟いた。


「それじゃ、そろそろ行こうか。もうじきこの空間も消滅する」


「……そうだな」


俺が返事をすると同時に、体が白ルフに包まれ魂が引っ張られるような、そんな感覚に陥った。









一瞬見えた黒い空間で最後に聞いたのは、黒ルフたちのどこか悲しそうな鳴き声だった。






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