指切り







「んっ」


「は?」


僕が差し出した小指に、
ジュダルは「意味が分からない」という顔をする。


「いいから、君も小指を出してよ」


「ほら、早く」と僕が急かすと、彼もおずおずと小指を出した。


「………ほら」


「ん、ありがと」


そう言って、僕は彼の小指に自分のそれを絡ませた。
彼は少し赤くなりながら
ジッと絡められた指を
見ている。

そして――――――


「ゆーびきーりーげーんまん、嘘つーいたら―――」


そこでようやく気付いたのか、ジュダルは慌てて指を解こうとした。
が、簡単には解けない。


「ちょ………ま、待てよ!」


「どうかしたのかい?」


「何だよコレ……」


そう言いながら顎で絡まった指を指す。


「何って、指切りだけど?」


「いや、そういうことじゃなくてだな……」


彼が言いたいことは何で指切りをするのか、ということだろう。
しかし、それにはあえて答えない。否、答えられない。


「なんとなく、やってみたくなっただけだよ。気にしないで?」


僕はそう言ったが、彼はまだ納得していない様子だ。
そんな場の空気を振り払うかのように僕は言葉を切り出した。


「ねぇ、嘘ついたらどうすることにしようか?
やっぱり定番の針千本とかかなぁ?」


僕が笑いながら言うと、彼も笑いながらそれに答える。


「なんだよ、それ。流石に怖すぎんだろ!
大体針千本とか考えた奴性格悪すぎだよな。
普通、約束破っただけで針飲ませるか!?」


ジュダルの言うことが
もっとも過ぎて、僕は思わず声を上げて笑ってしまった。


「あははは!確かにそうだよねぇ?でも――――」






「それだけ、大切な約束だったんだろうな」


「えっ………」


自分が言おうとしていた言葉を一字一句違わず言われてしまい、驚きながら僕は彼を見上げた。

すると、彼は僕の顔を見て笑った。
その顔はいつもの意地悪そうな笑みではなく、
愛おしいものを大切に見守るような……そんな笑顔だった。


「お前も、そうなんだろ?」


その問いかけに、僕は何も言わずコクリと頷いた。

ジュダルには、僕が考えていたことが全て分かっていたのだろう。そして、これから起こるであろう戦いのことも。

今こそ仲良く(深夜限定ではあるが)部屋で雑談などをしているが、それはまだ戦いが始まっていないからだ。
アルサーメンと行動を共にしているジュダルと、シンドバッド達と行動を共にしている僕とでは立場が違いすぎるし、明らかに敵同士である。

でも、だからこそ。

こんなものに何の意味も無いと分かっていても


(形だけの約束だけでも…)

彼と、誓っていたい。

そう言い出そうとしたが、それは彼によって遮られてしまった。


「俺は、守れない約束なんかしたくねえ」


「……………」


「気休めだけの約束なんて、あっても無くても同じだろ。なのにそれをしようとするなんて、お前らしくない」


「そう…だけど。でもっ!

それが出来ないからっ!
僕と君が敵同士だから、守れる約束なんて何一つ無いから………。
でも、君と一緒にこれからもお話したり、それで笑いあったりしたいんだ!

だから、だから……っ」


気付けば、僕は目から大粒の涙を流し泣いていた。

自分でも無茶なことを言っているのは分かる。
「一緒にこれからも」?無理に決まってる。自分の考えの甘さが嫌になる。


絡ませた小指はいつの間にか解けていた。






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