指切り







ジュダルを見つめているのも辛くなって、僕は目線を下に移す。すると、彼の手が目尻に触れ、涙を拭った。
何で優しくするんだろう。こんな事したって、後で辛くなるだけじゃないか。


「…………おい」


話し掛けないでほしい。
大好きな声も、いつかは醒めてしまう夢なのだと思うと怖い。


「おい!」


「……っ」


怖い。

こわい。

コワイ。


(もう嫌だ……)


僕は両耳を塞いだ。
ジュダルがずっと何かを言っている気がするけど、聞きたくない。

このまま僕に愛想を尽かしてしまえばいいのに。そうすれば、傷付くのは僕だけで済む。
簡単なことじゃないか。



「おいコラ!!」


いつもは周りに配慮して小声で話しているジュダルだが、僕の態度に苛立ったらしく、大声で怒鳴った。

これには流石に僕も驚き、両手を耳から離しジュダルの方に目を向けた。


「守れるとか守れないとか、勝手に決めんな」


「でも、君は守れない約束なんかしないって…」


僕がそう言うと、ジュダルは大きな溜め息をついた。


「それは、お前が守れないだの何だの言ってるだけじゃねぇか。

お前が約束を守れないなら、俺が代わりに守ってやる」


「だから」と、彼は続けた。


「お前がしようとしてた約束、俺に教えろ。」


さっきまで苦痛でしかなかった彼の優しさが、今となってはとても心地よいものに感じた。
少しでも彼を拒んだ自分を呪いたい。


「言っても……いいの?」


すると彼は先程と同じような優しい笑みを浮かべ、
ゆっくりと頷いた。


「あぁ。言ってみろ」


その言葉が嬉しくて、僕も彼に微笑み返す。
そして、解けてしまった
小指を再び彼のそれと絡ませた。


「僕……ね?

君が望む限り君のそばに居続ける。
もし戦争が始まっても、君のこと……嫌いになんかならないよ」


言い切ってジュダルを見ると、顔を真っ赤にして手で口を隠してた。


「君って、いつもすぐに赤くなるよねぇ」


「ばっ……!嬉しいんだよ…」


「へ?」


「お前が俺のこと想っててくれて、嬉しいって言ってんだよ!恥ずかしいこと言わせんな!それに―――」


そこで、ジュダルは「しまった」という顔をする。
何だか気になる……。


「「それに」……どうしたの?」


「お……お前がしようとしてた約束が、俺の考えてたことと同じだったから…。

だから……俺も、お前が望む限りそばに居続けるし、戦争が始まってもお前を嫌いになんかならない。


お前の約束も俺の約束も、2つまとめて守ってやる!」


僕の頬を一筋の涙が濡らしたのが分かった。
それは先程の悲しみを含んだ涙ではなく、嬉し涙。


「信じて……いいんだよね?まだ、一緒にいてくれるんだよね?」


「あったりめーだろ!!

これからも、戦争が始まっても、それが終わってからも、ずっと一緒だ!」


「うん!」


僕は勢いよくジュダルに抱きついた。

これからのことを考えるとちょっと怖いけれど、ジュダルと一緒なら大丈夫な気がする。


だから今は……



もうちょっとだけ甘えてもいいよね?



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -