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見張り視点


 日替わりでうちはサスケ宅の二人を見張っている。奴らは里を抜け更に里を脅威に晒した、里にとっての恥であり危険因子だ。だが里に戻ってからというもの、多少反抗的な態度は取るものの、それ以外に何かをしたりはしない。どちらかといえば、普段の生活では平和を満喫しているように見える。少しばかり度が過ぎた愛情を互いに持っているようで、こちらとしてはもう少し控えて欲しいくらいだ。うちはイタチやうちは一族の悲劇の真実については国の者全員の知るところとなったが、ああやって個人や家族への情が強過ぎるというのも考えものだ。こうして見張りをしている担当の暗部たちや周りの者にしか知れていないことだろうが、それ故の所業であったのだから。

 ほとんどただ無駄な時間を過ごしているように感じるこの任務。しかしそうは言っても見張りだ、あまり気を抜いてはいられない。だから余計に疲れるのだが。
 中の様子はプライバシー以前にあまり見たくない場面まで見てしまいそうだから見られないが、普段と変わらず平穏だ。何者かと連絡を取っているようなそぶりも無いし、今のところは反逆の意思は無いように感じる。
 すると縁側にうちはサスケが現れ、その淵に腰掛けた。すぐに後ろから続いて桜庭碧も出て来、同じように座る。相変わらず仲が良いようで、和やかな雰囲気で何か話している。庭に生えた一本の立派な木について話しているようで、二人ともそちらへ視線をやっている。秋も深く、紅葉の最盛期は過ぎ、木の葉はすでに黄色く変色し始めている。庭にもまばらに落ち葉が散っており、そろそろその掃除が大変な時期だ。
 何か話した後にうちはサスケが一度立ち上がり、屋内に入る。またすぐに戻ったかと思うと、その手には草薙の剣。すぐさま身構え、怪しい動きがあれば捕縛できるようにとチャクラを練り上げ封印術の印を組む。するとうちはサスケは隠れているはずのこちらへと視線をやり、小馬鹿にしたように口角を上げた。あれは絶対に鼻で笑った。ムカッときたが、場所が割れてしまった。これでは見張りとしての機能が著しく下がってしまうではないか。殺気を出しすぎたのか、チャクラを感知されたのかは分からないが、冷静になれと自分を抑える。視界からうちはサスケを外さぬようにしながらサッと場所を移す、その途中。うちはサスケは庭の木に向かって刀を抜いた。かと思ったら、木に生えていた紅葉がはらはらと全て散り落ちた。

「…………」

 うちはサスケはまたもこちらを見やり、小馬鹿にしたように笑った。あのクソガキ……。ムカムカと腹を立てながら、むきにならぬように深呼吸。本気を出し、フェイントも交えて場所移動をし、今度こそ身を隠す。直接見ずともあちらがチャクラを練れば感知できる。いや、あの辺りの鳥に心転身して見張るか。小さな鳥なら屋根の上に留まっても気にされにくいだろう。そう決めるとすぐに印を組み、小鳥へ心転身する。
 うちはサスケ宅の屋根に飛び、留まる。この距離なら会話も聞こえるか。鳥なら視界も広いから、不意打ちに遭うこともそうない。

「やっぱり寒くなる前に掃除しとかないとね」
「ああ」

 庭木の葉を伐採し、さらに無駄な枝を剪定までしている。雷遁を流した草薙の剣を使って、なんちゅう平和なことをしとるんじゃコイツらは。呆れ、自分の任務の無意味さを、いつにも増してひしひしと感じる。人員を交替しつつもう3年も続けているらしいが、必要なんだろうかこれは。こんなことをする間に、俺だって恋人欲しい……。

「早くまた春にならないかなぁ」
「そんなに楽しみか?」
「うん、この樹の桜、綺麗だから」
「……まあな」

 庭で花見。そういえば今年の春にそんなこともしていたな、この二人。菷で落ち葉を集め、枝もそこへ乗せる。そうして焼き芋でもしようという話になり、この後二人で買い物に行くようだ。あーあ、この任務、今度こそ止めても良いんじゃないかって、また上に掛け合ってみるか……。
 鳥の溜め息は、ヂヂヂヂ、と変な鳴き声に変わって吐き出された。

(20140312)


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