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俺たちの手が離れない件について


「…………」
「……なんか、悪い」
「ははは……」
「………」

 盗賊の頭の特殊なチャクラによってくっついて離れなくなってしまった俺の左手とナルトの右手。元はと言えば功績を焦った自分たちのせいで、お陰でもっと簡単に済んだはずの任務も手間取ってしまった。
 それもようやく終わって、やっと外させることができると思ったのだが、盗賊も自分ではどうにもできないらしい。二、三日もすれば自然に崩れるらしいが、二日もずっとこいつと行動しなければならないなんて有り得ない、御免だ。しかし、自分たちでもやれる限りのことは試して、それでも取れないことは立証済みだった。

「……お前なら何とかできないかと思ってな」
「…………」
「碧、頼むってばよ!」
「碧、」
「…………」

 そこで、医療忍術の修業中である碧に、どうにか外せないか相談に来た。特殊な性質とはいえチャクラでできたものだ、繊細なチャクラコントロールを扱える碧なら、チャクラの塊の構造を破壊できるのではないかと踏んだのだ。
 しかし、先ほどからその碧が、酷く拗ねてしまった様子で黙り込んでしまっている。理由はよく分からないが、なんとか機嫌を直そうと、ナルトと顔を見合わせて考えあぐねる。

「…………サスケくん」
「なんだ?」

 するとようやく碧が言葉を発してくれたので、ほっとしながら返事を返す。碧の目はじぃっと俺たちの不本意ながらも繋がりっぱなしの手を見ている。碧にしては他人にも分かりやすくじっと不機嫌そうな目で、同じ位置に視線が据わっている。

「思うんだけどね」
「ああ」
「なんだってばよ」
「ナルト君の手を切り落とせば良いんじゃないかな」

 あまりにも真顔でそんなことを言い出すものだから、特にナルトは吹き出すほど驚いてしまった。(テメ、汚ぇな)

「なっ、はァー!? ちょ、なに言い出すんだってばよ!!」
「流石にそれは不味いだろう、ただでさえ足手まといのドベが余計に邪魔になる」
「こらァ! サスケ、テメーもなに言ってやがんだ!」
「だって……ナルト君、前にもサスケくんと事故でキスしたり、何かと目の敵にしたりして、……実はサスケくんのこと狙ってるんじゃないかと思って」
「「ぶはっ!!」」

 今度こそ俺も吹き出して、碧の爆弾発言に驚く。お前、その『狙う』って言葉は聞き捨てならねえんだが。あまりにも気色が悪すぎる。

「バ、バカなこと言うなってェ! オレはこんな奴のことそんな目で見てねえし! オレが好きなのはサクラちゃんなの!」
「当たり前だウスラトンカチ! もしそうだったら今すぐこの腕切り落としてやる!」

 ぞぞぞと鳥肌が立ち、思わず互いに離れようと腕を引っ張り合う。ゴムのように伸びる粘着質のチャクラの塊が、それに引かれてグイグイと伸びる。が、ある程度伸びると千切れずに止まり、遂には始めに試した時と同じく勢いよく戻り、俺たちは思い切り肩をぶつけてしまった。

「っ……てェ……!」
「ぐッ……!」

 二人してぶつけた箇所を押さえて唸る。いい加減不自由だし、このままでは食事も便も風呂もこいつと過ごさなければならない。連れションだけは仕方なくしてしまったが、これ以上は避けたい。

「碧、頼むからなんとかしてくれ……」
「オレも早くこいつと離れたいんだってばよ! 変な勘繰りしてねぇでさ!」
「…………」

 碧はまだ不機嫌そうに眉間に皺を作っていたが、このままで置いておくのも嫌だから、という態でそっと手をかざした。ほっとして、碧がチャクラの塊をどうするのか見守る。

「頼むぜェ、碧」
「……かなりチャクラの密度が高いね。チャクラ同士の連結をチャクラメスで切断してみるけど、ちょっと時間がかかるかも」
「できそうか?」
「……がんばる」

 サスケくんのこと取られたくないもん。
 そう小さく呟くのを聞いて、俺は密かに嬉しくなり、ナルトはまた真っ青になって全力で否定していた。




(日記再録 投稿日 20110115)


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