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いい夫婦の日


「それでその時、ナルトがサクラに殴られちゃって……。ボクが止めに入ったらボクまで殴ろうとしたんだよ」
「……そうなんですか(この人誰だっけ……)」
「君はサスケ君と仲が良いそうだけど、ナルトとサクラとは様子が違う気がするんだよね。どうしてだろう」
「(早く帰りたいなぁ……この人サスケくんにちょっとだけ似てるから余計会いたくなっちゃう)」
「ボクも君と、サスケ君と同じように仲良くなれたらって思うんだけど……」
「……(……ん?)」

 今聞き捨てならないセリフが聞こえたんだが俺はコイツを殺しても良いんだろうか?

 碧が俺を待っていると人づてに聞いてやって来てみれば、黒い髪にひょろっとした背格好の男が碧と「仲良くなりたい」だのとほざいているではないか。ピクリと青筋を浮かべ、見たことがあるような気のする男へ全力で殺気を立てる。素早く臨戦体勢になった男、よく見ればサイだ。知らぬ男であったろうがどちらにせよ、先程のセリフを吐いたあの口は二度と動かせなくしてやるがな。

「……」

 しかしそれにしても、まさか碧を口説く男が俺以外に現れるとは思っていなかった。元々碧があまり周りに好かれない体質だったのもあるが、見ていれば分かるだろう、どうしたって他になびかないだろうことは。だから油断していたし警戒もしていなかった。これは俺の失態だ。もっと強く威嚇しなければならないらしい。いやそれ以前に、誰にも奪えないようにしなければ――。

 碧に声を掛けずにぐるりと方向を変えて歩き出す。まずは印鑑を取りに帰って、それから役所だ。碧の筆跡は写輪眼でコピーすれば容易く真似られる。お互い両親なんか居ないからな、誰かの許可も必要ない。
 殺気立ったままがすがすと歩き、自宅を目指した。




「? ……今の殺気は一体……」
「えっと、……さっきの言葉の意味は……」
「え? あ、だから……ボクも君たちと同じように仲良くなりたい女性(ヒト)が居るんだけど、どうしたら良いのかな、って……」
「……(区切る場所に問題があったのか……。サスケくん、絶対誤解しちゃったよね……)」
「急に相談してしまってごめんよ。サスケ君を待ってるんだったよね」
「あ、はい……。サスケくん、行っちゃったみたいなので追いかけますね。じゃあ」
「え?」




「サスケくんっ!」
「! 碧……」
「あのね、さっきの……」

「結婚するぞ」

「……え?」
「今から籍を入れに行く。丁度良いからお前も一緒に来い」

 追い掛けて来てみれば、いきなりそんなこと。びっくりして思わず聞き返してみても、どうやら聞き間違いではない様子。

「え、でもサスケくん、……いいの?」

 だけれどそう、私なんかと、結婚までしてしまって良いのだろうか。それに周りの目を気にしていたのはサスケくんの方。里抜け戻りの犯罪者同士の結婚で、サスケくん自身や、特に私が非難の目で見られてしまうことをあんなにも危惧していたのに。こんなにあっさり決めてしまって良いんだろうか? しかも動機はおそらく、さっきの会話を聞いてしまっての誤解からだ。後悔するかもしれない。

「ああ、今すぐだ。曖昧のままじゃマズいと思ったんだ」
「……(やっぱり誤解して……)」
「……さっき解った。お前のためにも縛らないままの方が良いかと思ってたが、それじゃ駄目だ」
「え、」
「ちゃんと俺のものにしたい」
「! サスケく、!」

 ぐい、と抱き寄せられる。
 確かにきっかけは誤解のようだけど、本当の動機は、『ちゃんと私が欲しいから』。力強く抱き締めて、少しだけ不安そうに肩が強張っている。私がサスケくん以外の人の所へ行ってしまうなんて有り得ないことだけど、サスケくんはそれでも少し不安だったんだ実は。反射的に抱き返して、安心させるように擦り寄る。そうするとほんの少し力を抜いて、縋るように小さな声で囁いた。

「愛してる。誰にもやらねぇ……」
「(サスケくん……!)(きゅぅーん)あ、あたしも愛してるよ……!」

 嬉しくって力一杯抱き付いた。




 役所にて。

「あ、」
「? どうした」
「今日、『いい夫婦の日』だ」
「……?」
「11月22日だから、語呂がね」
「……丁度良いじゃねえか」
「うんっ。これからも末長く宜しくお願いします」
「……ん」

 お二人さん、公共の場だからそれ以上発展しないようにね!



(日記再録 投稿日 20101124)
誰かしら被害に遭う


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