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暑い日の朝と夜


 昨夜は暑かったので窓を開け放ち扇風機を点けて寝た。のは覚えている。

「……」
「……ん……」

 どうして一緒に寝てたんだっけか。しかも目を覚ますと碧に抱きしめられた状態だった。昨日は別に参っていた訳ではなかったと思うが、そうでもなかったのか……。
 欠伸を零し、ベッドを下りる。すると揺れが伝わったのか、碧が目を覚ました。

「ぅー……サスケくん……」
「……なんだ」
「……もうちょっと……」
「……」

 まだ眠いらしく目を開けたがらず、俺の方に手を伸ばしている。もしかして碧の方が一緒に寝たがって来たんだろうか。そうだとしたら、可愛い。
 ベッドに戻り、碧の傍に寄る。服の端を掴み、近づくに連れ腕を背の方に回してくる。

「いつの間に一緒に寝たんだ」
「…………よる……」
「そりゃそうだ」
「……やな夢見たから……それで……」
「……そうか」

 理由までかわいらしい。抱きしめよう。

「えへ、」
「ん?」
「やっぱり、サスケくんの腕の中はあったかいなぁ……」
「……暑くないのか?」
「うん平気」

 寝汗で少しべたつく首元に、碧が擦り寄る。良いのかおい、汚いぞ。碧も結構汗を掻いていて、額からこめかみの下や顎までうっすらと汗が浮いている。それを撫でるように拭ってやり、額に軽く唇を付ける。

「……サスケくんと一緒に寝ると、怖い夢見ないんだ……」
「……」

 そんなに安心できる場所に、なれているらしい。嬉しいというか、ほっとした。

 それにしてもこれは、誘われているんだろうか? さっきから可愛いことばかり。(あと『抱きしめられていた』ので寝ている間胸の辺りに頭があった訳だが、実は内心かなり(性的な意味で)動揺したのはここだけの話)

「ん……」

 若干欲情しているのを誤魔化すために、頭にキスをする。すると抱きしめた時と同じようにまた嬉しそうにはにかんで、「サスケくんスキ、」なんて言う。

 こいつは絶対知らないんだ、俺が普段割と結構しょっちゅう我慢していることを。そうじゃなきゃこんなに無防備に「スキ」だなんて言わないだろう。知られないように隠しているこちらも悪いのかもしれないが、頼むからもう少し、自分が可愛いことを自覚してくれ。



***



「サスケくん……」
「……ん……」

 暗い室内で控えめに掛けられた声に、うっすらと意識が浮上する。暗闇にぼんやりと見える碧の姿。夢かとも思う。

「……一緒に寝て良い?」
「……ん……?」
「いっしょに、寝ても良い?」

 小声過ぎて聞き取れなかったから聞き返すと、少しだけ声を大きくして繰り返した。それに曖昧に頷きつつ、迎えるように腕を広げる。

「ありがと……」
「……ん」

 首に腕を回し、抱き着く。よしよしと頭や背を撫でてやり、薄い掛け布団を適当に被り直す。(暑くて除けてしまっていたようだ) そのままごろりと横になると、俺が抱きしめられているような状態になる。……まあいいか、眠いし。

「……おやすみ、サスケくん…」
「…………ん……」

 暑かったはずなのに、碧の体温は不快じゃない。元々ずっとうとうとしたままだった俺は、すぐに眠りに就いてしまった。
 そして、朝に目を覚ました時にはこの時のことは全く覚えていなかった。



(日記再録 投稿日 2009.06.13 Sat)


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