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乱れた浴衣と熱い夜


 冷房の電源を入れてベッドに腰掛けるサスケくんを見ながら、帯に差していたうちわを机に置いて、結び目に手を掛ける。

「あ、浴衣を脱がすといえばあれだよね」
「?」
「こう、帯を引っ張って……“あーれー、お止めくださいませー”」
「…………」

 くるくるくる、とその場で回ってみせる。サスケくんは呆れた顔をして、特に興味はないらしい。面白そうだから、ちょっとやってほしかったんだけどな。残念。
 仕方なく一人で帯をほどいて、畳んで机に置く。伊達締めも外し、腰紐も外しておはしょりを伸ばせば、浴衣の裾が床まで落ちた。そうして合わせを開こうと手を掛けたところで、サスケくんに呼ばれる。

「碧」
「ん、このまま?」
「ああ」

 内側の長襦袢を留める伊達締めなども外しながら、いつでも開ける状態の浴衣をやや引きずって歩く。サスケくんが座っているのとは反対側からベッドへ上がり、勝手に開いてしまわないように少し押さえながらサスケくんの傍へ寄る。

「サスケくんは脱がないの?」
「……帯、外すか?」
「やっていいの?」

 わーい、と喜んだ様子で帯に飛び付いたからか、サスケくんは面食らったように一瞬怯んだ。冗談半分だったのは分かっていたけど、私の『サスケくん好き』を舐めてはいけないよ。

「さすがに回さないけどね」
「……そりゃあ助かる」
「ふふふ」

 呉服屋さんに見てもらいながら私が着付けた浴衣。女性ものより細い帯の結び目をほどいて、包帯を外すのと同じ要領で胴回りをくるくると移動させる。男の人の浴衣の着付けは、女性のものよりずっとシンプルだ。おはしょりもないし、サスケくんのように襦袢を内に着ない人も居る。(なので着付ける際には下着のみになるので、一時的に腰にタオルを巻いてもらっていた)
 帯を取り払い、腰紐もほどく。これでサスケくんも、いつでも肌を晒せる状態だ。とても簡単。

「やっぱり浴衣って脱がしやすいんだ……」
「お前を脱がすのは大変そうだったが……?」
「部屋着用なら、女ものももっと簡単なはずだけど」

 サスケくん、ずっと浴衣着ててくれないかな。そしたらすぐに触れるのに。
 そんな痴女さながらのことを考えながらぼんやりサスケくんを見ていると、待ちかねたように腰に手を回された。緩んだ襟元から覗く素肌が突然迫ってきたことに心臓がびっくりして、脈が速くなる。

「焦らすやつだな」
「そ、そんなつもりじゃないんだけど……」
「分かってる」

 片目を隠す前髪をさらりと揺らして顔を寄せられる。額を合わせ、鼻が触れ合うほどの近距離で、瞳を覗き込むようにして見詰められる。
 体内時計の進む早さの違いだと思うのだけど、例えて言うならサスケくんが『せっかち』で、「お前は“のんびり屋”なだけ」と、サスケくんの仰る通り。

「いつも私に合わせてくださって、ありがとうございます」
「フッ、全くその通りだな」
「ん、」

 奪うように唇を重ねられ、貪るように食まれる。今夜のサスケくんは積極的だ。唇が離れるとすぐに仰向けに寝転ばされ、そのまま上からのし掛かられて、再度キス。
 いつもはもっとゆっくり、それこそ私のペースに合わせてくれるのだけど、今回はサスケくんペース。こんなことは滅多にないので、ドキドキしながらされるまま、絡まる舌へ応えるだけで精一杯だ。

「んっ、……はぅ、」
「……碧」
「んぁっ」

 名を呼ばれて、差し出していた舌を甘噛みされる。ぞわ、と背筋に響く痺れが走って、思わず声が漏れた。
 舌が離れて、それを寂しく思う間もなく、首筋を愛撫される。唇で食み、舌でなぞり、軽く歯を立てられる。その甘い刺激にピクピクと身体を震わせながら、「汗かいてるから、」と清潔感としても味としてもあまり良くないだろうと、やんわり制止をかける。

「そうだな。かなりしょっぱい」
「じゃあ……」
「けどお前、同じように汗をかいた、俺の首筋を舐めるのは嫌か?」
「……」

 問われて、考えるまでもなく、『そんなことはない』。言葉ではなく、実際に舐め返すことで答えを提示した。

「っ、」
「なんでかな、むしろ舐めたいって、思っちゃった」

 サスケくんの汗の味。しょっぱくて、ほんのちょっと酸っぱくて、決して美味しいわけじゃないのに、それを舐めることができて嬉しい。これが赤の他人の汗だったら、と思うと吐き気すらもよおしそうだけど、サスケくんのだから嫌じゃない。
 二舐めと、一食み。そうして浮かしていた頭を下ろせば、少しだけしかめた顔で見下ろされた。

「嫌だった?」
「いいや。……ただ少し、不意を突かれて悔しいだけだ」

 言いながら、また唇を重ねられる。あ、サスケくんの舌、さっきと違ってしょっぱい味がする。お互いの汗を舐めた舌。唾液が止まらないから、より濃密なキスになる。
 流し込まれたサスケくんの唾を二回、飲み込んで、高ぶった熱に呼応するように息が乱れ始める。

「(サスケくんの唾、二回も飲んじゃった……)」

 汗も唾液も、サスケくんの体液だ。それを自身の体内へ取り込めたことが嬉しくて、股の奥がむずむずする。これ、変かなぁ。サスケくんは嫌じゃないかなぁ。
 膝をもじもじさせていると、浴衣の襟をめくられた。襦袢と二重になっているので、片手でするのは骨が折れるだろうと、続きをすぐに手伝う。そうして下着姿をさらせば、熱い息を胸元に吐きかけられた。

「……今日は、やけに色っぽいな」
「そ、そうかな……」

 一応、サスケくんが居る日は下着もちゃんとしたものを身につけるようにしているので、それを褒められたようで嬉しい。だけどたぶんそういうことじゃなくて、いつもは着ない浴衣で、それも乱れた脱ぎかたをしているからそう見えるのかもしれない。
 ブラジャーを上にずらして、乳首を咥えられる。少しざらつく舌でゆっくりと舐められ、垂れた前髪が肌をくすぐるのにすら感じてしまう。私も、あまりないサスケくんの乱れた浴衣姿に興奮してしまっているんだろう。感度がよくなっている気がする。

「んぅ、」

 また、気持ちよくてむずむずするので、膝を擦り合わせる。袖に通したままの手で、甘えるようにサスケくんの頭を抱え、手持ちぶさたに髪を撫でる。私のボリュームのない乳房を丸ごと咥えるように大きく口を開けて、べろぉっと舌の前面全体で舐められる。私がそれに反応したのを確認するように一瞬上目でこちらを見て、小さな乳房の下側に強く吸い付いた。鬱血が一つ付いた。

「(サスケくん、キスマークなんて滅多に付けないのに)」

 やっぱり積極的なサスケくんに、嬉しくて胸も膣もきゅんきゅんする。お陰でパンツの内側は大洪水で、動くたび少し冷たい。

「ね、サスケくん……」
「……なんだ」

 一つ、提案をするために恐る恐る言葉を進める。

「もう、十分濡れてるから……ほぐさずに入れてほしいな」
「……」

 私を乱暴に抱くことを避けるために、バカなことを、とか、そんなことできるか、とか、いつもと同じならすぐに叱られるはず。だけどサスケくんは返事をくれずに、私から視線を逸らした。

「(怒ったかな……)」
「…………怒るなよ」
「?」

 私が何を怒ることがあるのか、と不思議に思いながらサスケくんの言葉の続きを待つ。
 サスケくんは躊躇うように私の脇で視線をうろうろさせた後、こちらへ視線を戻してから、観念したように吐いた。

「俺も、そうしたいと思っていたところだ」
「!」

 素直な、気持ちを告げてくれたことが嬉しく、また“そうしたい”と思うほどに急いた欲求を抱いてくれたことが嬉しく、そして私を『壊れ物扱い』しないでくれたことも嬉しく、衝動のままサスケくんの頭に回した両腕を手繰り寄せて、ぎゅうっと抱き寄せた。

「んぐっ」
「んんんんん〜」
「……」

 私の胸に落ちてきたサスケくんは少しだけ気まずそうにしていたけど、私が嬉しさを発散させるためにぐりぐりと頬擦りをする間に、そんな気持ちは失せたようだった。
 ほぼ裸の私と、脱ぎかけの乱れた浴衣から半裸ほど素肌を覗かせたサスケくん。肌と肌が触れ合う範囲はまだそれほど広くないけれど、それでもお互いの昂りは伝わった。

「碧」

 私を呼んで、顔を上げる。合意の合図に長めのドライキスをして、体を起こした。
 膝ほどまで下がって、全体を見下ろすようにされる。改めて見られて少し恥ずかしい。半端に乱れていた浴衣を大きく開いて、サスケくんも下着姿を見せた。

「……大きい?」
「……そうだな」

 内側から上向きに突き上げられた下着。前面の開口部から中身を引っ張り出せば、ぱんぱんに怒張して筋が浮いた陰茎がぬっと現れた。あれを、ほぐしていない私の膣へ挿入するのか、と思うとまたじんわりとそこが熱くなった。
 受け入れる体勢をとるために、膝を立てて開く。お互い下着を着用したまま、浴衣を羽織ったままの、半着衣だ。着たままするなんて、脱ぐ時間も惜しむほどこの行為に前のめりである証に他ならない。嬉しい。

「痛かったら言うんだぞ」
「うん」
「すぐにだ」
「ふふ、わかった」

 念押しをするように言いながら、私のパンツを横にずらす。濡れた陰部に空気が当たってスースーする。そこへ肉棒の先端をあてがい、何度か擦り付けて私のぬめりを絡み付かせる。それだけで気持ちよくて、待ち遠しくて、早く入れて欲しくて、焦らされているみたいで、自分から腰を浮かせて入口を押し付けた。

「……入れるぞ」
「うん、来て」

 グッ、と、サスケくんが腰を押し出して、先端が膣口から挿し入ろうとする。だけど狭いからすんなりとは入らず、圧迫感に少しだけ痛みを感じたので、下腹に力を入れて入口付近を広げるようにした。

「んっ!」

 無事に侵入できた陰茎は、だけどまだ浅く、窮屈な膣に惑うように脈動した。接合できた喜びにじわりと涙が滲むけれど、零れるには至らない。

「狭いな」
「大丈夫? 痛くない?」
「フッ、なんでお前が聞くんだ」
「キツいと痛いらしいから」
「大丈夫だ」

 ゆるやかに腰を揺らして、入れすぎて痛くしないよう、引きすぎて抜けないよう、慎重に前後する。
 もっと、無理矢理奥へ来てもいいのにな。それを伝えると間違いなく怒られる。でも伝えたい。伝えてそれを成してほしい。
 接合して胸の高鳴りが増しているから、少しくらい乱暴でも、とにかくもっと深く繋がりたいという気持ちが膨らんでいる。一秒ごとに膨らんで膨らんで、言おう、言ってしまおうと覚悟を決めたとき、サスケくんが話し始めた。

「初めてしたときのことを思い出すな」
「?」
「あの時は、俺はもっとほぐそうと思っていたのに、お前が“早く入れたい”とせがんだんだ」

 そりゃあ、そうだよ。というか毎回思ってるよ。サスケくんに優しく前戯されたらすぐに入れてほしくなっちゃうよ。

「少しはほぐしたが、今くらい狭かったな」
「キツかった?」
「ああ。……初めてだったから、余計だな」

 だんだんと、少しずつ、奥へ進んでくる。私も中を広げるように力を入れるけど、擦れる度に気持ちよくてすぐにキュンと締めてしまう。

「お前が俺に乗って、自分で奥まで入れたんだったか」
「そうだっけ……? 寝転がって、ンッ、見上げてた気がするんだけど、」
「それは二回目だな」

 サスケくん、よく覚えてるなぁ。私はもう、とにかくサスケくんと一つに繋がれたことが嬉しくて、前後のことはあまりはっきり覚えていない。昔から思ってたけど、サスケくんは記憶力がいい。
 話しながら、私の身体を抉りながら侵攻するサスケくんに、ぞわぞわと興奮して、どんどん気持ちよくなってくる。狭いから密着度が高く、動くモノの形が分かりそうなほどだ。律動で身体ごと脳も揺さぶられて、おかしくなり始めているのかもしれない。

「ンアァッ、!」
「……あの時はこんなに、お前のイイところも知らなかったがな」
「アッ、ンンッ、」

 もっと、もっと奥まで、来てほしいのに、
 半分くらいまでで遠慮して、なかなか深くまで来てくれない。サスケくんが話しているから、伝えるタイミングがなくてもどかしい。
 浅い部分にある、膣壁上部の性感帯を、上向きになった硬い陰茎の先で刺激される。感じると余計に狭まってしまい、つまりサスケくんが奥へ来てくれるのが遠退く。気持ちいい、のに、

「ヤッ、サスケく、ヤぁ、」
「ん、嫌か?」
「あ、ちがうの、止めないで……!」
「……どうしてほしい?」

 もしかして、わざとしているんだろうか。私が奥まで入れられるのが好きなこと、よく知ってるはずだもの。でも確かにまだ、奥まで行くには窮屈で、サスケくんとしては『私の許可』が必要なのかもしれない。
 私の返事を待つサスケくんの、私の脚に添えられた手に、自分の手を重ねる。中の陰茎がピクリと跳ねるのや、わずかに上下する肩、片方だけ覗く黒目から、サスケくんの興奮を感じ取る。

「……もっと、」
「……」
「もっと、来て。奥まで来て……」

 痛くしてもいい。たとえ血が出たって構うものか。もっと奥の、一番奥で、サスケくんを感じたいの。
 黒い浴衣の内側をかすめ、両脚をサスケくんの腰へ絡み付かせて、腰をくねらせる。だけど深くまで入れるのはこの体勢では難しくて、やっぱりサスケくんに貫いてもらうしかない。

「……碧」

 宥めるように膝を撫で、絡めた脚の、膝裏へ片手を差し込む。ゆっくりと脚を持ち上げながら、サスケくんも腰を浮かせてわずかに膝を詰め、奥まで入れられる体勢を整えた。だけどまだそれは成さずに、また同じように半分だけ出し入れする。

「ンンッ、アッ、ぁううサスケくん……ッ!」

 徐々に、スピードを速めて、私を掻き乱す。気持ちいいのに、物足りなくて、身悶えてしまう。
 ねばつく水の音が、ベッドが軋む音と共に部屋に響く。下敷きにしている浴衣をしわくちゃにしながら、襲いくる快感に抗うように顔をしかめる。滲んだ涙が視界を悪くして、夢と現の境を曖昧にし、理性を鈍らせる。

「んアァッ! ゥゥ、もっと、!」
「フッ、フ、」
「もっと、ぉ! サスケくゥんッ、もっと来てぇ……!」
「ああ、」

 私のねだる矯声にようやく頷いてくれたサスケくんが、のし掛かるようにして奥を突いた。

「アウウッ!」

 あまりの衝撃に、ビクビクと腰から頭まで震わせ、縮まるように背が丸まった。
 深くまで侵入した陰茎は、止まることなく私の膣を貪っている。部屋には腰のぶつかる音が増えて、にわかにいやらしさが増した。空っぽの左袖が揺れて、私の右足を何度も掠める。

「アッ! アァッ! サスケく、ンンッ!」
「ハッ、ハアッ、碧、気持ちいいか、痛くないか」
「うんッ、いい、きもちイイ、よぉ!」

 奥を突かれるのが嬉しくて気持ちよくて、喘ぐ声を抑えられない。サスケくんの硬くて大きいのが、私の奥を、気持ちよさそうに擦ってる。狭いとかキツいとか、そういう感覚はもうなくて、中に居るサスケくんを逃がさないように締め付けていた。
 昇り詰めるような、じんじんとした熱が強くなってくる。頭がふわふわして、余計なことを考える余裕もない。ただとにかくサスケくんに抱きつきたくて、両手を伸ばす。そうしたら応えるようにこちらへ来て、キスもしてくれた。ああ、サスケくん、好きだよぅ、大好き、

「いく、アアッ、イ、ッちゃ……ッ! ンンゥーッ!」

 絶頂が訪れて、情けないほど声を上げながら身体をビクビクと激しく震わせた。サスケくんの背に回した両手も、サスケくんを挟む両脚も、ぎゅうぎゅうと強く力が入る。
 私がそうして快感にうち震える間も、勢いはゆるめたものの中を擦ることはやめない。おかげで気持ちよさが途切れなくて、滲んだ涙が耳のほうへ滑り落ちていった。

「サスケくぅぅ、あぁ、きもちい、よぉぉ……」

 私の中をみちみちに満たす、限界まで怒張した陰茎の存在感に、一つになれている感激を改めて強く感じる。もっと、ずっと、全部一つになれたらいいのに。気付けば両脚がサスケくんの腰へ絡み付いていた。

「……碧」
「んんん……?」
「それじゃあ抜けないだろう」
「抜かなくていぃよぉ……」

 困ったようなサスケくんの声と、そんなことを言いながら別段止まる様子のない腰つきに、サスケくんの葛藤を見る。

「今日は、大丈夫な日だから……」
「?」
「……中に、出してほしいな」

 伝えた瞬間、中でビクッと陰茎が跳ねた。サスケくんの心情を如実に表す、あまりにも素直な部位だ。
 中に出してほしくて、安全な日であることを確認していたことをばらしたので、照れくさくてサスケくんの首もとに顔をぐりぐりと押し当てる。

「……本当にいいのか?」
「うん……大丈夫。心配なら、あとで薬も飲むよ」
「……そうか」

 グイ、グイと、嬉しそうに上向きに脈打つ陰茎に、また奥が熱くなってきゅうきゅう締めてしまう。
 いつぶりかの、行為が待ち遠しくて、絡み付けた脚と腰をくねらせて、射精をねだってしまう。私の蜜でびしょびしょに濡れたサスケくんの下着の奥で、陰嚢が収縮して発射準備に入ったのが分かる。浴衣の上から回していた腕を、肌へ直に触れるように抱き直して、汗が滲んだ肌を合わせた。

「んんッ……サスケくん、」
「ハアッ、……碧、……ハ、」

 頭皮から流れた汗が、サスケくんの顎まで落ちてくる。それが私の鎖骨へ落ちて、興奮で熱くなっている身体を少しでも冷まそうとしてくれる。だけど焼け石に水で、むしろサスケくんの体液を浴びている現実に、興奮は高まるばかりだった。
 もう律動は激しくないものの、到達直前であることが分かるほどに膨らんだ陰茎に奥を擦られて、その事実だけでも感じてしまっていた。ああ早く、サスケくん、早くちょうだい。

「サスケ、く……中に、ちょうだ、アッ……!」
「ッ、碧……ッ!」

 たまらなさそうに、私の口を塞ぐようにキスをした。奥で止まった陰茎が、一瞬後に少しだけ跳ねる。

「ン゛ッ、ンンッ、!」

 重ねた唇から漏れ出る唸り声を、全部食べたくて薄く唇を開けたら、息苦しそうに口を開けたサスケくんの、熱い息を注がれた。夢中で舌を絡めるサスケくんに応えながら、膣へ注がれているのであろう精液を思って、射精中の陰茎をまたぎゅうぎゅうと締め付けてしまう。
 出しきるようにもう少しだけ腰を押し付けて、奥を擦られる。精液まみれの膣を、精液を吐き出しながら擦られたりなんかしたら、興奮してしまうに決まってる。

「アッ、アんんッ、ンンーッ!」
「んッ、あ、ッ?」

 二度目の絶頂に、ビクビクと身体を震わす。それが思ってもみない反応だったのか、サスケくんは少し驚いたように私を見下ろした。
 痙攣しながら、恥ずかしくて顔を逸らした。だって、中でイッてくれるのは本当に久しぶりで、だからってこんなに嬉しくなっちゃうとは思わなかったんだもん。『サスケくんに中出しされたのが嬉しくてイク』なんて、それこそ変態そのもので、サスケくんにそう思われるのもちょっと、いやかなり、とっても、恥ずかしい。
 顔に熱が上る、というより顔に上っていた熱が冷めない。このままでは目を回してしまいそうで、サスケくんから身を隠したいのだけど、結合が解かれる気配もない。そういえば、射精したはずのサスケくんはほとんど縮んでいなくて、まだ中でピクピクしている。

「……碧」
「……な、に?」
「………………はあー……」

 私の顔の横に頭を落として、深いため息を吐かれる。サスケくんの体重がのし掛かって、少しだけ苦しい。

「……」
「……ど、どうしたの?」

 呆れられたかな。そう心配していると、もぞもぞとサスケくんの腕が私の下に差し込まれて、抱き締められた。

「……いや、少し反省していてな」
「反省?」
「ろくに前戯をしなかったろう。それに、服も脱がさずに……」

 欲の捌け口にするようなことをしてしまった、と。ええっ、そんな風には少しも思わなかったけどな。
 サスケくんの背中へ回した両手で、そんなことないよとそこを撫でる。私が嬉しく思ってたことをサスケくんが気づかなかったわけはないし、私がどう思ったかは関係ないのだろうか。

「一歩間違えば強姦だろう……」
「そんなことないってば」
「…………それなのに、」

 それを嬉しそうに受け入れるお前に、喜んでしまって。現に今も、それで硬くなっている。
 自分に呆れているのだ、と再度ため息をこぼすサスケくんに、自戒しすぎてしまわないか心配していた私は、ゆるゆると唇を横に伸ばした。なあんだ、そういうことか。
 背中に回した両手をはしゃぐようにわしゃわしゃと動かすと、やめてほしそうに顔を上げた。それにほっぺを擦り合わせて、「素直に嬉しそうにすればいいのに」と言う。でもサスケくんはそんなわけにいかないようで、口振りだけでも反省しなくてはならないらしい。

「サスケくんも、早く繋がれて嬉しかった?」
「、…………だから、答えさせるなと、」
「ねえ?」
「………………ああ、そうだ」
「んふふふ」

 観念したように回答して、負けたとばかりに苦笑いを浮かべる。

「お前を見ていると、俺の態度が間違っているように思えるな」

 間違いではないんだよ。より正解に近いものがあるってだけ。
 私を大事に大事にしてくれるのも、もちろん嬉しい。だけど私は、もっともっとサスケくんに求めてほしいと思ってるみたいなの。だから今日みたいな積極的なサスケくんの態度が、こんなにも嬉しかったんだと思うんだ。
 胸につけられたキスマークを思い出して、サスケくんが入ったままの膣が、またきゅんとしてしまう。それから二回目をねだるように腰をくねらせれば、サスケくんは一応躊躇いながらも、応えるようにキスをくれた。
 だけどその時、玄関扉の開閉する音が聞こえた。二人してびくりと体を跳ねさせて、下から聞こえる「ただいまー」という声に耳をすませた。

「…………」
「……や、やめとこっか」
「……そうだな」

 繋がっていた身体を離して、いそいそと着替える。浴衣は洗濯しないといけないな。家の洗濯機で洗えるかな。などと考えながら手早く片付ける。

 あーあ、惜しかったなぁ。だけどまあ、あの感じなら、またお願いすれば今日のようにしてくれるかもしれない。焦らなくても、きっと大丈夫だろう。
 着替える途中、中に出された熱い精が垂れてくる感覚がした。それで今日のサスケくんを思い返してぽわーっとしていると、着替え終わったサスケくんに、照れくさそうに額を小突かれた。えへへ、痛くない。



(180814)


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