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大人のお誘い


 地下研究室の鉄製扉から、小気味良いノック音が聞こえた。棚から巻物を手に取りながら、振り返りもせずに返事をすれば、鉄扉が開くやや重たい音がする。挨拶もせずに静かに入ってきたところを見ると、サスケくんだろう。手元に俯いて、巻物の紐をほどいてするすると広げながら、「どうしたの?」と聞いてみる。もう晩御飯は食べたし、用事という用事も特に無かったように思うのだけど。階段を降りる足音が近付くのを感じながら、巻物を読むことに意識を吸われていく。

「……」
「!」

 すっ、と傍に来て、背後から腰に手を添えられる。驚いて振り仰げば、年齢を重ねて増した大人の色気でもって、私を動揺させる。ゆっくりと屈んで、私の耳元へ唇を寄せて。

「……シたい」

 それだけの、極シンプルな要望を囁いて、するりと離れる。私が固まっている間に、静かに階段を上がって、サスケくんは行ってしまった。

「…………わぁ……」

 ようやく発せた感嘆とともに、何を見ようとしたのか忘れてしまった巻物を、巻くこともせずに棚に戻す。
 あれだけを言いに来たのだとしたら、とてもかなりすごく、したいんだろう。火照った頬を押さえながら、白衣を翻してすぐにサスケくんの後を追う。薬品のにおいを落とすためにシャワーを浴びないといけない。待たせてしまう時間はなるべく少なくしなきゃ、と小走りで階段を上がった。



 サラダが寝付いていることを確認して、サスケくんが待っている夫婦の寝室へ向かう。髪だけはしっかりと乾かして、タオル一枚巻いただけの姿で急ぐ。
 あの誘いかたを思い出すたびに、ぽーっと頬が熱くなってしまっていけない。長期間会わないことも多いから、サスケくんの色気への免疫が足りない。

 部屋へ入ると明かりはすでに消されていて、小さな橙色だけが室内の景色をうっすら浮かび上がらせていた。サスケくんはベッドに横になっているようなので、そちらへ行く前にタンスから服を取り出す。この後結局脱ぐとはいえ、下着と肌着くらいは身につけておきたいし、終わった後には着るのだから用意は必要だ。


「おまたせ」
「……ああ」

 ベッドへ近付けば、迎えるように右腕が伸ばされる。喜んでそこへ飛び込めば、そのまま抱き寄せられる。

「ふふ。あったかい」

 自分からも抱きついて、夜の空気で少し冷めた体を暖めさせてもらう。

「そういえば珍しいね、あんな風にお願いされるなんて」
「……」

 私はともかく、サスケくんにとっては『私への性的接触』は色々思うところがあるはずなので、あまり言葉にして誘ったりはしないのだ。結婚して子供も大きくなったとてそれは変わらない。

「……いちいち聞くな、そういうことは」
「あ、ごめんね」

 ため息と一緒にたしなめられる。これは聞かないほうが良いことだったか。
 このところ連日遅くまで研究室にこもっていたから、それで寂しい思いをさせてしまっていたのだろうか。と、思ったのだけれど、まあサスケくんに限ってそんなことは無いだろう。私じゃあるまいし。きっと単純に三大欲求の我慢の限界だったんだ。一人で旅をしている間はともかく、家で過ごしていると、解消できる相手が居る分だけ閾値が下がっているのかもしれない。ほら、お菓子を棚に隠していれば我慢できるけど、テーブルに置いてあるとつい手を伸ばしちゃうのと同じで。

「でも、うれしい」
「……」

 サスケくんが言葉にしてまで“したい”と意思表示してくれたことが嬉しい。それはもしかしたらサスケくんの中で、なにかを乗り越えられたからかもしれないし。サスケくんの、私に対する躊躇いや気掛かりが少しでも解消したのであれば、私は嬉しいよ。
 首もとにすり寄るようにしてもっと密着するようにすれば、サスケくんも抱き締める力を少しだけ強めてくれる。欠けた左腕もしっかりこちらへ添えてくれている。

 すでにかなり幸せなんだけど、これからすることで幸福の許容量を越えてしまったらどうしよう。飽和するまでの最大量は、これまでのサスケくんの行いのお陰で昔よりはだいぶ上がったのだけど、毎回久々だったので沸点は低い。それにサスケくんがすでに2ヶ月ほど滞在しているので、通常時の幸福量が増している。この世で私より幸せな人間なんていやしない、と断言できるくらいだ。

「んふふ……」
「…………」

 抱き合っているだけで嬉しくなってしまって、頬が緩みっぱなしだ。はしゃいで抱きついている腕をわさわさと動かせば、咎めるように頭を顎でゴツンと叩かれる。サスケくんの顎は尖っているのだ。あいたた……。




「入れるぞ」

 前戯を経て、高まり合ったのを見計らってサスケくんが言う。それに頷きながら、別に前戯せずにいきなり入れても怒らないのになぁ、などと思う。サスケくんは律儀だなぁ。だけど身体中を触ってキスして、嬉しい気持ちが一杯になると、そうしなかった時よりも随分と“良く”なるので、やっぱり前戯の有無は感度に関わる大事なことだ。『気持ちが良くなる』と気持ちよくなれる、って言うと、こんがらがって訳がわからなくなる。

「あッ……!」

 片腕で左足を持ち上げられ、硬く大きなサスケくんが私の膣口を貫く。こうして繋がる瞬間は、何度迎えても胸がはち切れそうになる。
 サスケくんとひとつになっている。サスケくんが私の中に居る。喉が詰まりかけて、軽い嗚咽が出る。

「ひっ、く……」
「…………。泣かれると、俺が悪いことしてるみたいだろう」
「ふふ……、違うの分かってるくせに」
「まあな……」

 じんわり滲んでいた涙を拭って、クリアな視界でサスケくんを見上げる。
 首を傾けて覗き込めば、やっぱり左目は閉じられていた。うーん、サスケくんってエッチする時は毎回左目を閉じてるみたいなんだけど、普段から閉じてるわけじゃないようなんだけどなぁ。なんでだろう。
 質問してしまうとまた「聞くな」と叱られそうなので飲み込んで、傾けた首を元に戻す。サスケくんが少し遠くて抱き付けず、手持ちぶさただから、私の左足を抱えるその手にそっと手を添える。

「……動いて、」

 『動いて“いいよ”』と言うとなんだか上から目線な物言いになってしまうし、『動いて“ほしい”』はちょっと恥ずかしいので途中で止めたら、余計にお願いの色が濃くなってしまった気がする。そんなどうでもいいことに照れていると、サスケくんはそれに頷いて腰を動かし始めた。
 前準備で拡げたはずの入口は余裕もなく、怒張しきったサスケくんを精一杯咥えている。強い存在感で中を前後するから、ますます嬉しくなってしまって、そこがキュンッと締まるのを感じる。

「んッ……ふ、ァッ……!」

 嬉しさと気持ちよさに頭が一杯になってしまうと、表情はむしろ困ったようになる。だってこんなに幸せでいいんだろうか。大好きな旦那様に求められて、優しく抱かれてる。そしてそのサスケくんも気持ちよさそうに顔をしかめていて、私のからだで快感を得ているのだと思うと、胸も膣もキュンキュンしてしまう。

「あゥゥ、サスケく、ッすきぃ……!」
「ッ、……お前なぁ、」

 締め付けすぎだ、と嬉しそうに言いながら、覆い被さるようにこちらへ来て、さらに繋がりを深くした。奥の奥までやって来た硬い先端に擦られて、情けないほど喘ぎ声をもらしてしまう。速まった呼吸の度に小さく「あっあっ」とこぼれ出るのが恥ずかしく、サスケくんに抱き付いて肩に顔を埋める。

「……きもちいいか?」
「うん、うんっ、きもちい、よぉ……!」

 サスケくんの問い掛けに、素直に答える。耳に掛かるサスケくんの息遣いも速くて、サスケくんも同じくらい興奮してるんだ、となお嬉しく。
 激しさを増す抽送に、ビリビリと快感が走り、奥がじんじんと熱くなる。口寂しさに、顔を埋めていたサスケくんの肩を無意識に食んでいた。

「碧、」

 キスをするならこっちに、と言うように、サスケくんの唇が重なる。それに夢中で吸い付いて、舌を絡めれば、中のサスケくんが嬉しそうにヒクついた。
 キスのために小休止したサスケくんが、私の一番奥で留まる。唇も舌も、腕も脚も、陰茎も膣も、繋がれる箇所は繋げるだけ繋いで、身も心も、とけて、まざって、ひとつになれてしまえそうだった。うれしい、うれしい、ああ、

「んんッ、ふ、ぅウ……ンンンッ!」

 あまりのよろこびに、そのまま絶頂してしまう。腰と腿がビクビクと痙攣し、なかがぎゅうっと締まる。大きくて硬い、サスケくんとますます密着するようで、イキながらまたイキそうになる。
 すると中のサスケくんが動き始めて、驚いて声が出てしまう。

「ああッ!」
「碧……」
「っ!」

 サスケくんの、たまらなさそうな声で名前を呼ばれて、性感帯となった耳にざわざわと快感が這う。
 ああ、ああ、サスケくんが、ああ、サスケくんも、きもちいいんだ、
 敏感さを増している私のなかを、今にも破裂しそうなほど膨らんだサスケくんが蹂躙する。

「ァンッ! ンンンッ、サスケくぅん……ッッ!」
「ン゛ッ、……!」

 限界を迎える直前、サスケくんは私から抜け出した。と思った瞬間、下腹に熱いものが掛かる。

「! あ、……」
「ッ……悪い、ッはぁ……ッ」

 サスケくんから飛び出した、白い液体が私に散る。触らずともビクビクと跳ねる肉棒の先端から、よだれのように精液が出続けている。
 その光景に、尖った乳首の先がじんじんして、股の奥も熱くなる。お腹に掛かった熱い液体がとろりとヘソに垂れて、それを合図にするように腰がビクンと跳ねた。

「アッ……! ヒゥ……ッッ!」

 サスケくんの、体液で、わたしのからだ、穢されてる……!

 体をビクつかせながら、涙で歪んだ視界で、それを見る。拭き取ろうとサスケくんが離れてティッシュを取る間に、指先でそっと引き伸ばす。ああ、サスケくんの精液だ……。

「……コラ、触るな」
「ええ……ダメ?」
「ダメだ」

 叱られて笑いながら、汚れた指先を自分の口へ持っていく。唇に軽く塗ってから、指ごと舐める。濃くて、よほど我慢していたのかな、と誘われた時のことを思い出す。

「…………」
「ん?」
「……はぁ、」

 こちらを見てから溜息。そして、もう何も言うまい、と諦めたようにゆるく首を振る。サスケくんだって私の股を舐めたくせにさー。



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窓際で大人サスケとエッチ


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