拗ねる 「……」 「ごめんごめん、遅くなっちゃった」 「………」 「あ……怒っ、た…?」 「…別に」 そんなこと言って、眉間に皺が深く刻まれてるし、眼光は鋭いし、唇は突き出ているし、ぷい、と逸らされた顔に組んだ腕も相まって、どう見てもお怒りです本当にありがとうございました。 「何してたんだよ…」 「や、別に“何”ってことも無くて……話に捕まっちゃって」 「……」 「ホントにごめんね、迎えに来てくれたのに」 「……ついでだったからな」 私のバイトが終わるのが遅い時は、こうして時々だけど迎えに来てくれる。サスケはついでだと言ったけど手元の袋を見たら、もうこの時間にはとっくに閉まってる近くのスーパーの袋に、自販機で買えるような飲み物がいくつか入っているだけ。嘘なんだか嘘じゃないんだか微妙で、小さく苦笑だけする。(スーパーに行ったついでなのか、飲み物を買うついでなのか)(でも飲み物全部、ただのお茶) 「楽しかったんなら邪魔したな」 「え、」 「どうせまだ話してたかったんだろ」 「そんなこと…」 「…フン」 鼻を鳴らしたら、スタスタと歩き始めてしまった。ちょっと早歩きで、慌てて追うけどなかなか並んで歩けない。コンパスの長さの違いだ。 小走りで付いていくから肩に掛けた鞄がずり落ちる。それを反対の手で落ちないようにしながら、サスケに声を掛ける。 「待って、速いよ」 「……」 こう言うと少しだけ速度がゆるまって、ほっとしながら隣に並ぶ。とはいえまだ早歩きで、バイト後で少し疲れてるのにこれはキツい。 「サスケが来てくれてるって、メール見た時嬉しかったよ」 「……」 「来てくれたのに、すぐに出て来れなくてごめんね」 「………」 息も切れ切れそう言うと、やっと普通に歩く速さまで落としてくれた。安堵と疲労の溜息を吐いていると、サスケがこっちを見下ろしてきた。 「……」 「…?」 「…分かったなら良い」 「……」 またふいと前を向いて、私の歩調に合わせて歩き続ける。 もう、素直じゃないなあ。今のはたぶん、謝りたかったんだろうけど。 怒りたいような呆れたような微笑ましいような。複雑な気持ちで口元を歪ませ、眉を八の字にする。サスケ、かわいいけど、かわいくないよ。 ビニール袋を持ったサスケの手首に、そっと自分の手を添える。そうしたら、数メートル歩いてからだけど、袋を反対側の手に持ち直して、ちゃんと手を繋いでくれた。もっと上手く素直になれると良いね。 拗ねる (20100825) 目安箱よりツンデレサスケに嫉妬される話 [←] [→] 戻る [感想はこちら] |