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握りしめる


「ひぐっ、うっう〜…サスケぇ…」
「……」

またか。
週に一度はこうして、泣きながら俺の所へやってくる。別にいじめっ子に苛められた訳でも、その辺で転んだ訳でもない。

「まだふら゙れだ…」
「……はぁ〜…こっち来い」
「ゔん」

家の直前までは我慢したよ、と自慢にならないことを言いながら、べそべそと泣きながら家に上がる。
そう、本人も言った通り、毎回毎回振られて泣き付いて来る。それも同じ人間に、だ。いい加減慣れるか諦めるかすりゃあ良いのに、それを以前言った時には「それが出来ればサスケんとこ来ない」と返された。……なんか切ないな。(慣れて泣かなくなっても来ないし、諦めて他の奴にするにしても俺のとこには来ない、と)

縁側に待たせて、冷たいお茶をコップに入れて持ってくる。庭に向かって座り背を丸めている、その隣へ行き座る。

「ほら、茶」
「ありがと……」
「…で?」
「なんであたしじゃダメなのおおお!!」
「…落ち着け」
「ぐすっ、うぐ、」

それこそこっちの台詞だ。どうして俺じゃダメなんだ。相談相手、愚痴相手になってしまう時点で、全く眼中に無いのは分かっているが。
背中を軽くとんとんと叩き、お茶も渡す。冷たいから頭も冷えるだろう。ごくごくと飲んでぷはぁと息を吐く様子はまるでおっさんで、女子力が足りないんだよな、と原因を思い当てる。

「…ありがと」
「…ああ」
「メーワクかけて、…ごめんね」
「……別に」

理由はどうであれ、俺の元へ来てくれるのなら、構わない。迷惑だと思った事は、…少し、あるが、でも頼ってくれてるなら、良い。
情けないな俺は。向こうから来るのを待ってばかり。

「…いつだって来て良いからな」
「…! ……うん」

少しだけ、勇気を出して、手を握った。(…嘘だ、本当はかなり、搾りだした)
なまえは驚いたようだったけど、振り払ったりはしなかった。嫌がられなくて内心ほっとする。
夏のぬるい風が、涙で濡れたなまえの顔や手を乾かしていく。でも俺の汗はあまり乾かしてくれなくて、耳の後ろを滴が伝い落ちるのを感じた。
なまえが静かになったから、草木の揺れ擦れる音や蝉なんかの虫の鳴き声が鮮明になって、夏だな、とか思う。夏と言えば水遊びや花火。花火と言えば、確か今度近くで花火大会をするって聞いたな。

「……」
「……」

しかし誘う言葉は出ないまま、じわじわと熱されながら時間だけが過ぎる。手は、握ったまま。



握りしめる
(20100823)
サスケの誕生日から1ヶ月経ちましたねー…(´ω`)


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