照れる 手を繋いでいる訳だが。下心があるとこうも背徳感があるものか。暑さも相まって緊張で手汗が滲む。 「次はどこに行く?」 「! …ああ、いや…考えてない」 嘘を吐いた。本当は行きたくて仕方ない場所がある。しかしまあ、その、なんだ……切り出しづらいよな。 映画、ファミレス、ゲーセン。それだけ遊んだからすでに夕方近い。それでもまだまだ暑いから、休憩がてら屋内に……って、その流れで誘うのは不自然だろ絶対…。じゃあどうすれば自然に誘えるってんだああーくそ、俺はこういうのが下手だな。 「あ、喉渇いたからそこでジュース買うね」 「ん、ああ…」 近くの自販機へ、手を離して行く。その間に服の裾で手汗を拭いておく。どうすりゃ、…いっそストレートに……いやそれは、流石に…。 「どうかした?」 「! …なんでもねー」 「……」 買って来たミルクティーを一口飲んで、「要る?」と聞いてきたので横に首を振る。甘そうだし、間接キスなんて、今の俺には毒にしかならなさそうだ。 再び手を繋いで、今度は指を絡める。素知らぬ振りをしながらなまえを盗み見ると、照れたように嬉しそうに、繋いだ手を見下ろしている。 (、…) くそっ、…かわいい、なんだそれ…。 繋いだ手を無意識にもじもじとさせる。なんだよこれこんな、…俺は知らない、知らねえぞ、こんな、衝動。 「…えっと…」 「……(おさまれ、おさまれ…っ)」 「…どこ、行くの?」 なまえの声に、はっとする。見ると、なまえまでもが恥ずかしそうにもじもじとしているではないか。 (これはまさ、か、気付かれ…!?) しくじった。顔が熱い。なまえも照れたように顔を赤らめて、もう完全に感付かれている。ダサい、ダサすぎる。もっとこう、スマートに……無理だとは薄々思っていたが。 付き合い始めてもう2ヶ月近く経っていたから、なまえも、次のステップへ進む機会を窺ってはいたんだろう。そう思うと尚、情けなくて。 「…あー、と…」 「…」 「その、なんだ……二人になれる場所」 「…う、ん」 「…行く、か」 「…うん、」 わりかし、あっさりと了承を得て、手を握り直して歩く。こんなことなら、もう少し勇気を持って切り出せば良かった……どちらにせよ出来なかっただろうが。 お互いに初めてだった、その行為は、よりお互いを深みに連れていってくれた。なまえが痛そうにしていたから、次はもっと余裕を持って優しく、したい。ああなんだこれ恥ずかしい。 照れる (20100815) 保存せずプレビューだけしてブラウザを閉じたらしく再度書き直したためクオリティーダウン気味。色々細かく再現仕切れなかった…予測変換記憶に助けられまくり。 [←] [→] 戻る [感想はこちら] |