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焦がれる


いつも見ている。いや、ただ勝手に目が追うだけで、意識して見ようとしている訳ではない。授業中とか、昼休み、部活中も、暇が有れば姿を探してしまう。居るわけ無いと分かっているのに探してしまう時には、思わず溜息も出る。

友達と喋ってどうでもいいことで笑っていたり、授業中に真剣な顔をしていたり、かと思えば眠そうにしていたり、ぼーっとしていたり、何か考えている風だったり、部活中に懸命に楽器を吹いていたり、先輩に教えてもらったり、同級生と練習したり、帰り道友達と楽しそうに笑って、いたり。色んな姿を、見て。だがまだ彼女が落ち込んだり泣いたりしている所は、見たことが無くて。ああ何も知らないな、なんて思ったりも、する。

「サスケ、考え事はいいけどよ、球にまで影響出すなよ」

扇の要のシカマルが、訝しい顔をして言った。それに対して俺は、ああだか、おうだか、生返事を返す。溜息を吐かれてしまうが、一球投げれば「おっ、ナイスボール」と安心したらしい。

「良い方に影響するなら文句は言わねーよ」

左手のグローブで白球を受け取りながら、帽子の位置を直す。カーブのサインに軽く頷いて、球を握りなおす。一呼吸、意識を集中して、投げる。バシィン、と気持ちのいい音をさせながらボールがグローブに収まる。

「この調子なら、大会でいいとこ見せれそうだな」
「……るせーな」

吹奏楽部である彼女は、応援演奏をしに試合に来る。どうやらシカマルにはばれてしまっているらしい。シカマル曰く、「気付いてねーのはナルトとキバぐらいだろ」、だそうだ。

「……」
「いや、別に確認して回った訳じゃねーから確かには知らねーけどな」
「……」
「にしてもお前って、見掛けによらず分かりやす…いや、悪かった、からかってる訳じゃねーよ…お、落ち着けって」

喋っている間に近付いて胸ぐらを掴む。どう見てもからかってただろうが。
手を放して、グローブを外し帽子を脱ぐ。スタスタと歩いて離れていくと、後ろから「どこ行くんだよ?」と問われたので水道を指した。

タオルを横に置いて、蛇口を捻る。透明の水が出てくるが、今の季節は水道ごと熱されてぬるい。その水で顔を洗い、汗を流す。ひとしきり洗い終わると蛇口を捻って水を止め、置いていたタオルで拭く。
ふと校舎を見上げる。各々色んな場所で部活動をしていた吹奏楽部は、既に片付け始めていた。壁の時計を見れば確かにいい時間だ。日が落ちるのが遅く、明るさでは夕方の時間が掴めない。彼女の姿を見付けられず、また知らず知らず探してしまっていたことに気付いて溜息が出る。

「……」

踵を返して、グラウンド整備を始めているチームメイトにまざるべく、部の倉庫へと向かった。



焦がれる
(20100731)


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