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生殺しの夜 4/11


 レストランで美味しいビュッフェをたらふく頂いて、大浴場でお風呂にも入った。部屋にあるお風呂では危険が危ない可能性が高かったので大浴場へ行ったのだけど、海の見える露天もあって、ライトアップされている夜の海はなかなかの美しさだった。明日の朝にも景色を見るために入ろうかなと思ったほどだ。利用者は自由に飲んでも良いらしいドリンクケースからフルーツ牛乳を頂いて、ふと自分のお腹を見下ろす。

「(……結局たくさん食べちゃったな……)」

 自分に甘いので、美味しいものを我慢するということがなかなかできない。だから、サスケくんの厳しい監視はある意味では助かっている一面もある。食べ盛りの男子であるサスケくんよりは少ない量だったと思うけど、それでも『美味しいから』と無理して詰め込んでしまったのは事実。明日の朝食こそ、少な目にしよう……。

 女湯の暖簾をくぐった先の待ち合いソファーに、サスケくんが座っている。もちろん待ち合わせはしていないし、普段のサスケくんなら一人で部屋に戻っているところだ。念のため見回してみるけど、イタチさんの姿はない。

「えーと、お待たせ……しちゃったのかな」
「……」

 サスケくんは持っていたお茶の缶をあおって空にし、のっそりと立ち上がって自販機横のゴミ箱にそれを捨てた。そのままこちらを振り向かずに歩いて行ってしまうのを、慌てて早足で追いかける。
 イタチさんが何をしてくるか分からないので、警戒しているんだろう。ピリピリと不機嫌そうな空気が伝わってくるから迂闊に話し掛けられない。さっきの一言も、たぶん失敗だった。

「(不機嫌なサスケくんと、要注意人物と、同じ部屋で寝なきゃいけないのか……)」

 課題を片付ける余裕はあるだろうか。そんな比較的どうでもいいことに思考が割かれるのは、ある種の自己防衛反応なのかもしれない。




「おかえり」

 広い三人部屋のテレビの前。ソファーに座ったイタチさんがにこやかにそう言った。サスケくんは警戒レベルを引き上げるようにイタチさんを睨み付けながら、私の手を引いて奥のベッドまで連れていく。

「早く寝ちまうぞ。起きてたって良いことはない」
「う、うん」

 やっぱり課題をする時間はないらしい。分かっちゃいたけど、ちょっと困るなぁ。

「おいおい、まだ九時前だぞ? 早すぎるんじゃないか」
「早く起きて早く海に行くだけのことだ」
「レストランの朝食は六時からだぞ」
「んなこと知ってる。それより、絶対にこっちのベッドに来るんじゃねえぞ」

 課題はいつやろう、とか、何時に起きるつもりなんだろう、とか、朝食も楽しみだなぁ、とか、兄弟の会話を聞きながら考えていた。話しながらサスケくんは一番奥のベッドの掛け布団を捲り、私の背中を押してそこへ寝るように促してくる。それに従って、スリッパを脱いでベッドに上がり、掛け布団の下へ体を滑り込ませる。冷房が効いていて快適なので、ふかふかのお布団も不快じゃない。

「もっと詰めろ」
「ん、? ん?」

 言われるまま、にじにじと奥へ行く。するとサスケくんも同じベッドへ乗り上がって、布団を被った。え、一緒に寝るの? ベッドは三つあるし、イタチさんも居るのに?

「なんだ、見せつけてくれるな」
「うるせえな、テレビの音量下げろ」
「ははは」

 イタチさんは笑って、サスケくんの言ったことを無視してテレビを見ている。すごいな、私なら従っちゃうな。
 サスケくんは向かい合うように私の体を抱き込んで、右手で私の頭をサスケくんの首元のほうへ引き寄せた。突然のことにドキッとして、そのまま心臓は早鐘を打つ。

「な、なに、?」
「顔出してたら、寝てる間にキスされるかもしれないだろ」
「ええ、まさか、」

 まさかそんなことしないだろう、と苦笑いを浮かべつつ言おうとしたら、「なんだ、対策されたか」とイタチさんが言ったのが聞こえた。嘘でしょ……。

「アレは痴漢の最上級だと思え。レイプ魔と同じ部屋に居るんだ、お前は」
「ヒエ……こわすぎ……」

 洒落にならない種類の怖さだ。思わず縋るようにサスケくんに抱き付いてしまったけど、流石に今日は咎められない。むしろがっちり抱き付いて、寝ている間に誘拐されないようにしたほうがいいかもしれない。
 ドキドキしたまま、サスケくんに指示されるままに、横寝の下側になっている右腕を、サスケくんの脇腹の下敷きになるようにする。仮にイタチさんが私を引きずり出そうとしても、サスケくんが重石になるようにするためだ。それから足も押さえ込むように絡められ、簡単に引き剥がされないよう対策する。そしてやっぱり、ちゃんとしっかり抱き付くように言われて、左腕はサスケくんの背中へ回す。

「(ね、眠れるかなぁ〜……)」
「……さすがに暑いな、ここまで密着すると」
「そうだね……」

 朝起きる頃には右手は痺れて感覚がなくなるだろうし、サスケくんに顔が近すぎて死ぬほど照れる。サスケくんからは、お風呂に入りたてのいい香りがする。いつものサスケくんの家の石鹸とは違う香りがして、余計にドキドキする。
 私が照れてそわそわもじもじしていると、とうとうサスケくんに耳を引っ張られた。大声になりすぎないように「イタタ」と伝えると、合わせて小声で「うざい」と言われる。鼻息が荒いと思われてないかなとか、そういう乙女的心配に四苦八苦しているだけなんです。

「兄貴が居なきゃ、今頃セックスしてたんだがな」
「ぅ、や、やっぱり……?」
「そりゃそうだろ。お前だってそのつもりだったんだろう」

 そう言って、私の首のチョーカーを撫でる。これはそういう意味じゃないんだけど……まあでも近いものか。デートだと思って来たのは本当だもの。

「お前のやらしい声をアイツに聞かせてやる道理もないし、残念ながら明日海でやるしかないな」
「ええっ、う、海で?」
「そうだ、波に揺られながらな」
「いやいやいや」

 あくまでも小声で話しながら、サスケくんの言に首を振る。相変わらずとんでもないなこの人は。海でエッチって、一体どうやるんだろう。ああそれより、明日は水着姿の披露も待っているんだ。それもかなりドキドキする。

「んなこと考えてたら、むらむらしてきたな……」

 今夜するつもりでいたから抜いてきていないとかで、溜まっているらしい。さっきまではイタチさんに警戒心を向けていたから気が向かなかったけど、こうして布団の中で身を寄せあっていると流石にそういう気分になる、と。そう言い訳めいた言葉をこぼしながら、すでに当たっている股間を太ももに押し付けられる。まだ柔らかい。

「あー……あのクソ兄貴さえ居なきゃな」
「そ、そうだね」

 拒否するのも宥めるのも逆効果な気がして、軽く同意してみる。その読みが功を奏したのか、サスケくんはヒートアップすることなく、落ち着いた様子で私のお尻を揉んでいる。

「(……あんまり変わらないかな)」
「はぁ……キスだけさせろ」
「!」

 言うが早いか、右手で私の顎を上げて、唇に食らいついた。かぷかぷと歯を立てて噛みついて、舌を差し出される。それを迎え入れるように唇を開いて、絡め合うように私も舌を伸ばす。声を出さないように気を付けている間にサスケくんは出ていって、また私の頭を隠すように引き寄せた。

「……生殺しすぎる」
「あはは……」

 いつの間にか立派に育ったおちんちんが、ピクピクと動いて何かを主張している。私はどうすることもできない現状を、苦笑いで誤魔化すしかない。
 イタチさんが見ているテレビの音声だけが、楽しげに部屋に響いていた。




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