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風邪を引く


「はっくしょ!」

 うう、寒い。なんで……って、サスケ君に布団を全部取られている。クーラーがよく利いていて、服はまともに着ていない。寒い。
 遠慮がちに布団の端をめくってみるけれど、私が潜り込めるほどのスペースは、少なくともこちら側には無さそうだ。仕方なく服を探すために体を起こすけど、まだ日も昇っていない時間だから周りはほとんど見えない。手探りで床を漁るけど、うーん、これはたぶんサスケ君のシャツ……サスケ君のズボン……あ、私のブラジャー。じゃあこのへんに肌着もあるはずだけど……。

「無いなぁ……へっくしょ!」

 もう一度くしゃみをしてしまうと、サスケ君が鬱陶しそうに唸り声を上げた。……色々言いたいことはあったけど、起こすと面倒だし静かにしないと。

「……あ、」

 思い出した。肌着はサスケ君に汚されたから、洗濯籠へ入れられたんだった。あああ、思い出すべきでないことまで芋づる式に思い出されて、恥ずかしさに顔が熱くなる。ともかく、今日は上着を肌にじかに着て帰るしか無さそうだ。
 夜明けまではまだしばらくある。上着は直に着て寝るにはごわごわしているし、まだ眠いので、できれば布団を半分貸してほしいのだけど……。

「……はっく、しゅん、」

 くしゃみを止め損なった。そっとサスケ君を窺い見れば、もぞもぞと寝返りをして、布団の端から睨むように顔を覗かせた。ヒエ、それ怖い。

「るっせんだよ……さっきから」
「……ごめん」

 暗くて見えにくいのに、眉間に深い溝が刻まれているのは分かった。うう、だけどダメ元で、お願いするしかない。

「布団に入れてください……」
「……最初からそう言え」

 えっ。えっえっ。嘘。いいの?

「あ、ありがと……」

 や、優しい……! いや、本当に優しい人はそもそも布団を独り占めしたりしないんだろうけど、頼めば入れてくれるのも十分優しい!

「俺のせいで風邪を引いた、なんて後味悪いだろ」
「そんな風に言うつもりはないけど……」
「仕方ねえから人肌で温めてやるよ」

 それとも移して治すか? とイタズラっぽく言われたけど、まだ昨日の分の筋肉痛も治らない内からもう一回はちょっと、あの、勘弁してくださ、あの、



(170922)
170728ツイッターにて診断メーカーお題


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