ドーピングスウィートホーム
花占い。

その辺の雑草を毟ってよくやるアレです。私は都合が悪くなると茎を真っ二つにして無理矢理結果を操作しました。

それが今現在バトル中、目の前でエモキスの手によって繰り広げられているんです。内容は単純、スノウ姫がブスか美人かどうか。

「ブス。美人。ブス。ブス。あーら今2回言っちゃったしー」

そしてこの露骨な操作です。相手は隙を見せてる訳ですし攻撃に向かって下さいスノウ姫と言いたい所ですが痛みでそれどころでは無いんですよね、彼女。
と、言うのも花びらを毟る度にスノウ姫の髪の毛が2、3本ずつ抜けていくんですよ、地味な攻撃ですがこんな事連続で行われたら頭皮は痛みますし精神的な意味ででもかなりのダメージになります。

とかなんとか考えているとエモキスの言葉と同時に最後の一枚がむしられます、勿論結果は「ブス」。同時にスノウ姫が爆発。ギンタ君が叫びます。

爆煙が晴れて咳き込みながら現れたスノウ姫は全身に焦げ痕が多少付いていましたが特に異常は無いようでした。

「えー、私の『花占いでボン!』でも死なない…以外とタフだしー、ブスだけどォーっ。」

煽りに煽られスノウ姫は拳を作り眉を吊り上げ歯軋りをし怒りをあらわに。それも瞬時に笑顔に切り替わりました、顔は笑っていますが拳は未だに怒りで震えてますそりゃもう怖い位に。どうやら彼女のスイッチが完全に入ったようです。

少し離れた所でナナシさんが恐怖に後退りをしていました。


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プッツンしたスノウ姫は自称温厚を主張しついに攻撃を開始、怒りにまかせアイスドアースをエモキスに浴びせます。

も、相手はそれを全て回避、無駄に優雅に、無駄に「イヤーン」なんぞは言いませんでした。「ナイトに近いビショップ」と言うのも文字だけでは無いようです。

それを目の辺りにしたギンタ君とジャック君がなぜかショックを受けてるその隣でアルヴィス君が

「太ってる割に俊敏だな……」

と微妙な顔で感心していました。
取り合えず「あれはきっと全部筋肉なんですよ」と口を挟むと「成る程、筋肉か。アランさんもガイラさんも素晴らしい物を持っているし納得だな」と反応に困る返答を貰いました。なんかアルヴィス君ってマトモそうに見えて何かたまにズレた事言いますよね、その上クロスガード厨。

腕を組み、したり顔で何か光るものを周りにキラつかせるアルヴィス君は放っておいて今はスノウ姫の戦闘に集中をしましょう。攻撃を避けきったエモキスは「お前ブスで弱いとか悲惨だな」と相手を煽ることを忘れず再びダンダルシアを召喚、同意をさせます。

「イエスマスター。その通りですね。」

定型な言葉を綴る彼の顔に汗のような物が見えます。正直ここは暑苦しいですが気温によるものでは無さそうだと確信したのは次に行うエモキスとのやりとりでした。

「なんか言ったァー?」

「イエイエ何も!」

このあからさまな動揺具合を見るに、実は彼も本音は別の所にあるのでしょうね、多分。

そんな事気にも止めずエモキスに合うサイズに縮小したダンダルシアを装備しスノウ姫と距離を詰め彼女は攻撃に入ります。

ある程度は回避していましたが素早い突きに対応しきれなかったのか危機を感じたスノウ姫はスノーマンを発動。攻撃中、頭上に発動されたスノーマンを避ける事は叶わず、見事スノウ姫の目の前でエモキスは潰される形で倒されました?

「やった!!」

「あの女つぶれたか!?」

ギンタ君とジャック君は致命的な一撃を相手が喰らったと思い込んでいるようですが、相手は上級ビショップ。ルークじゃあるまいしそんな簡単に潰されるのでしょうか?

あ、別にフーギの悪口を言っている訳ではありませんよ、決して。

ギンタ君とジャック君の喜びも束の間、アルヴィス君の否定の言葉とほぼ同時にスノーマンが真っ二つになり、中からダンダルシアを真上に掲げる無傷のエモキスが姿を現しました。

「ユ、ユキちゃんが……効かない!?」

「あんたなんてェーこんなモンだしーっ。私のもっとスゴイ所見せるしーっ。」

今まで何人もの相手(実際にはフーギだけですが)を葬って来た最強のARMをあっさりと破られ、若干絶望的な顔のスノウ姫の目の前で出てこいと腰のチェーンを発動するエモキス。チェーン…ま、まさかここで13なんとかのシリーズが新たに出てくると言うのでしょうか。思わずアルヴィス君に振り向いてしまいます。

「おかしの家ーっ。」

早計でしたね。なんかすみませんアルヴィス君、後で謝ります。

話を戻しましょう、おかしの家は文字通り「おかしの家」です、扉を開いたら何処かに繋がるディメンションと言う訳でもありません。何故ならエモキス、それを食べ始めたんですから。食べれるARMって壊れないんですかね。

「バ、バトル中に食事!!?ていうかアレ何の属性ARMなの!?」

ここにいるほぼ全員がそれを気にしている事でしょう。ところで甘い物ばっかよく食べ続けられますね、このフィールドは水分とは無縁ですし口の中を洗い流す事も出来ません、砂塵も舞っていますし見ているこっちまで口の中がザラザラねちょねちょしそうです。

「もう!!バカにされてるみたいでハラたつ!!」

試合中の見るに耐えない食事風景にスノウ姫が特攻、それに気付いたエモキスはゆっくりと振り返り

「食べたらァ、食べただけェ」

と、深く息を吸い込み吐き出します。エモキスの吐き出した息の風圧に負けスノウ姫は目を回し叫びながら砂上を転がります。食べたら食べただけの回答に「強くなるしィーっ。」と続け、

「エフッエフッ!」

と変な咳払いも付けます。今のエモキスは涎は垂れてますし白目がちな目も合わせて何も知らずに見れば薬を決めちゃってる人にしか見えません。なんか体も膨れている気がしますしあのお菓子、ヤバい物入ってるんじゃ無いのでしょうか。それこそドーピング何たらスープ的な何かが。

そんな事は露知らずスノウ姫とエモキスの戦うその奥でなぜかキャンディスがアッシュにビンタをかまして言い争ってました。修羅場?仲間割れ?まあ私には関係の無い事ですが。

「アルちゃん。気のせいか?」

エモキスの異変に気付いたナナシさんが口を開きアルヴィス君に確認を取ります。

「気のせいじゃないね。あのエモキスという女、体がふくらんでいる。」

「しかも声のトーンも下がってます。服も体に合わせて大きくなっているように見えますしどうなってるんでしょうね。」

そう言うとアルヴィス君にピシャリと「それはどうでもいい」と冷製な突っ込みを貰います。確かにどうでもいいですが筋肉質な男が本気を出す時は少し力を入れただけで服がビリビリに弾け飛ぶのが漫画的なお約束なんですよ?
声だって目を瞑ればアクアちゃんに負けないレベルの萌え媚びボイスだったんですよ?あ、これは誉め言葉です。

そんな訳でもとの姿より一回りも二回りも膨れ上がったエモキスは笑顔でその辺の岩を持ち上げ殺意を持ってスノウ姫に近づきます。砂上ですが彼女が一歩進む度に地面が振動している気がしました。

スノーマンも破られ、対抗する術が今の所無い状況でジャック君やギンタ君が焦りを表す中、それに反する様にスノウ姫は冷静でした。

「魔法の国、カルデアで頂いたARMを使う時が、来たようだね。」

カルデアで貰ったであろうリングを取りだし、発動の為魔力を練り上げ始めます。

驚きました、彼女のARMとのシンクロ速度、それによる魔力の蓄積量が以前よりも格段に上がっています。

まったをかけずにエモキスが岩をぶん投げ、それがスノウ姫に当たるほぼ直前に、「彼女」は発動。

「ウンディーネ」

そして岩は砕け散りました。

その後の勝負はあっと言う間でした。
美しい水のガーディアン「ウンディーネ」によって思わず本音を洩らしたダンダルシアがエモキスの一撃で粉砕され(少し同情しました)、お菓子の家も回転のかかった水の刺、アクアニードルスによって木っ端微塵に
逆上し一直線に突っ込んで来たエモキスはウンディーネの作る少量の水の塊に溺れ、何度か行われたスノウ姫のギブアップの忠告を全て無視して溺死する寸前にウンディーネが水塊を解除。

気絶したエモキスを確認しポズンが勝利宣言を上げ、かくして一戦目はスノウ姫の勝利となったのでした。

さて、次は誰が行きましょう?

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