氷上のドリル様
「…とまあ、これが真相です。勘違いして貰いたくないのは、私自身は別に不幸だと微塵も思っていない事です。過去の事ですし。それに両親は多分、二人とも生きているのではないでしょうか?兄さんも。想像の余地があるだけ、現在進行形で親しい誰かの死と対面しているギンタ君やジャック君、ナナシさん、アルヴィス君、おっさん、追われているスノウ姫と比べれば全然、幸せです。」

「……バカだ、ミツキ。」

「はい?」

疑問符を浮かべると正面から突然、肩を捕むよう両手を置かれる。
痛いんですけど?

「誰と比べてどう不幸だなんて、考えるもんじゃねえよ。比べられる奴にも、お前自身にも失礼だ。そんなん人それぞれだろ?何自分は不幸ぶってません顔しているんだよ。」

「ぶってませんって、本当に。言いたきゃ誰かに言っても構いませんよ?自分の口から独白するのが億劫なだけで別に他人にどう思われようがどうでもい「本当にそう思っているなら、なんで他人の目なんか気にするんだよ!!」

人の話を遮るのは止めて下さい、と文句を付けようとすると、それを見越した行動なのか両頬を強く引っ張られたので、反論できなくなりました。超痛いんですけど?

「前、言ってたじゃんか。目を合わせるのが嫌いだって、他人に勝手に考えを読まれそうなのが嫌だって、言ってたじゃんか。」

「ひょんはほほひひはひひゃっへ?」

「何言ってんのかわかんねぇよ!!」

それはギンタ君が頬を引っ張ってるからでしょう?なんでキレられてるんですか、私。

「本当は他人の評価を気にしてる癖に、何が自分はどう思われてもいい、だよ」

「バカっ」の一言と同時に、乱暴に指が離され、そのままバチンと挟むように両頬を叩かれた。何なんですか、腫れたらどうするんですか。

「そんなに報復が!、死ぬのが!、怖いならミツキが危険にさらされた時、オレが、オレ達が助けてやる!!だから…」

「人を殺すのなんかやめろ、ですか?」

「オレはミツキにも、ドロシーにも、誰にも無意味な人殺しなんてして欲しくないんだよ…」

無意味な、ですか。ギンタ君から見ればそうなのかもしれませんが自分にとっては無意味では無いつもりなんですけどね。

人の肩に手を置き項垂れるギンタ君を目の前に、「顔を上げて下さい」と、口を開いた。

「…別にそこまでして貰う義理はありません。」

「ミツキ!!」

「…ですが、ギンタ君にそこまで言わせてしまったのなら少しだけ頑張ってみます。そう簡単には治らないと思いますが。」

お互い、説教し合う形になりましたからね。
ギンタ君が私の言葉を受け入て落ち込んだのに私が目を背けてはそれはフェアとは言えないでしょう?


35


「おはようございます。それでは本日より…ウォーゲーム再開させて頂きます。」

4thバトル当日です、ポズンの事務的な挨拶から始まり、レギンレイヴ姫が賽を落とします。

今回は7vs7バトルだそうです、派手な戦いになりそうですね。ちなみに賽子の1と2の数字部分は7と8に変わっています。ポズン曰く、ファントムの計らいだそうです。

「7人か。」

「7人…ギンタ君にジャック君、アルヴィス君ドロシーさんナナシさんおっさん私。」

「スノウがいないからピッタリっスね。」

「ピッタリですねぇ。」

ジャック君と顔を見合わせ、うんうん、と頷くとおっさんがドヤ顔でにわかには信じられない事を言い出した。

「イヤ………今回オレは…出ねえ。」

「「なっ……」」

「はぁ?」

このおっさんのふざけた言葉に反応したのはギンタ君、ナナシさん、私。何処からか取り出したメガホンを私は装備し、3vs1で周りから集まる野次馬根性の視線を無視し言い合いを始めた。

「何言ってんだオッサン!!あんた一番強えじゃねェか!!」

「犬と別れたとたんワガママかいな!?」

「チームワークも協調性も何もありませんね。ダンナの右腕()、伝説の男()、クロスガードNo.2()、異名が泣いてますよ。」

「あ゛ーっ。ウルセエうるせえ!五月蝿え!!」

3人で気のすむまで散々喚いた後、オッサンは表情を変え彼の意図を説明し始める。

「今回はお前達がどんくれェマシになったか見届けてやるぜ。俺がいねーと負けちまうくらいなら……その程度の戦争だったって事だ!!」

そう言われましてもねえ。

「残念ですが、私はリスクが無ければ使える手は全力で使うタイプなので、その考えには賛成できま……ってギンタ君、納得したかのような顔しないで下さい。」

「やったりましょ。オッサンなんぞいらへんわ!!」

あなたもですか、と呆れ声を出そうとするとナナシさんに腕を絡まれ、引き寄せられます。何するんですか、訴えますよ?
そのままドロシーさん相手にも同じ様な行動を行おうとしつつ一言。

「自分、ドロシーちゃんやミツキちゃんがおればええねん!!」

「えーいうっとーしー!!」

ドロシーさんにスキンシップを回避されつつもしつこく腕を回そうとするナナシさん、二人はそのままポクポクと軽い叩き合いに発展します、程度で言えば微笑ましい位の。

ジャック君が何か言いたげな顔で見ていました。多分「バカだっ」だと思いますが。

出撃前の茶番が終わり、ポズンのアンダータが発動されます、いよいよですね。

「それではこの6人を…氷原ステージへ!!」





はい、何度も同じような表現の仕方になりますが、氷原ステージです。ギャグではありません。氷使いであるスノウ姫がいない事が若干悔やまれます。

氷の城以来の冷たい空気の中、ノースリーブ1枚と言う見ているこっちが寒くなりそうな格好をしているジャック君は「さむーっ!!!」と腕を交差させお決まりのポーズで震えています。ドロシーさんが、バカはカゼをひかないからジャック君は平気だと安心していました。前から思ってましたけどドロシーさんって、ジャック君に対して優しいんだかそうでないんだかわかりませんね。

その一方、ギンタ君がポズンに振り向き、6vs7の場合はどう行動を取ればいいのかと訊ねています、初めてキャプテンらしい所を見ました。

ポズンによると、その場合はこのバトルで戦闘に一度勝っている人間のうち誰か一人がもう一度戦う事になるそうです。
連戦は厳しいでしょうし、序盤で戦った人間がいかに魔力、体力を温存出来るかが勝利へのカギとなりそうです。

おっさんが出てくれれば何も問題は無かったのですけどね。
さて、そろそろ相手側も到着する頃合いです。

「………来るぞ。」

アルヴィス君の言葉に答えるようアンダータで登場しましたチェスの兵隊。
もう2ndバトルの時のような派手な登場はやってはくれないのですかね、今回なら氷を割って波をバックに出てきてくれても構いませんのに。

そんな訳で普通に出てきた今回のチェスの方々は、えーと、なんかARMむき出しの人にピエロっぽい人、貝を頭に被った笑顔が素敵な女の子、あと、知ってる顔が二人います。3rdバトルのMr.フックに…ヴェストリの地底湖でギンタ君に命乞いをした揚げ句ぶっ飛ばされたギロム、カッコつけながら中指立てて挑発していますがあんな無様な姿を一度見ているので正直決まってませんよと言ってやりたいです

……あれ?二人ほど人数が足りませんね。どこぞの誰かさんのようにまた寝坊でもしたのでしょ

「寒いね寒いねぇ!!こういう時はどうすればいいんだい!?あっつーいモノを喰うのさ!!」

うか、と思ったところに、とんでもない人が現れました。ドリル頭で個人的見解でなかなかセクシャルな格好をしている方です。ドリルと言っても縦ロールだとかそんなお洒落な物ではありません、円錐の先が空に向かって伸びている文字通りのドリル頭なんです。頭突きされたら串刺しになりそうな程です。町中なら思わず二度見三度見してしまうでしょう。

「お前達全員焼き肉にして喰ってやるよォオーっ!!!この美しいラプンツェル様がねエえーっ!!!」

しかもカニバリストときました、突っ込みが追い付きません。まさかナイトクラスにこれ程の色物がまだいるだなんて思ってもいませんでした。
そんな「美しいラプンツェル様」は私達を一目で物色し一言。

「チビ!!!」
これはギンタ君に

「不細工なロン毛!!!」
これはナナシさんに

「もう一人不細工!!!」
アルヴィス君に

「サル!!!」
ジャック君に

「ブス!!!」
ドロシーさんに

「豚!!!」
私に

ここまで来るとこの場にいないおっさんとスノウ姫にはどんな暴言吐くのかが気になりますね。

「てめぇ等全員地獄に叩き落とすよォオ!!!ブッ殺してやる!!ギャハハハハハハハハハハ!!!」

ラプンツェルの品の良いとは言えない笑い声が氷原フィールドに響く中、ギンタ君が

「なっ……何だあのドリル頭のおばさんは……っ。」

とドン引きし、ナナシさんが

「自分そんなにブサイクですか?この髪型が悪い言うんか?」

とショックを受けています。

「でもナナシさん、あの人、白目の割合は多いですが目は大きいですし鼻筋も通っています。髪型は個性的ですが下ろせば皆大好き金髪ロング、体型は筋肉質ですが出るとこ引っ込むとこしっかりしてますし、その体型を生かした服装で発言は過激。人によって好みは別れるでしょうがタイプは女王様系。特徴だけ書き出せば中々の良物件だと思いますよ?」

典型的な箇条書きマジックを披露し「どうですか?」と顔を向け訪ねると、ナナシさんはその場に体育座りになりながら、髪型がどうとかぶつぶつ呟き、氷に「の」を書いて現実逃避していたので何の反応も返って来ませんでした。ズーンと重苦しい効果音が聴こえてくるよう、落ち込み過ぎです。

「ラプンツェル様、クラスはナイト!!性格はヒステリックで好戦的で自己中心的。しかし…強いですよ。」

ナイトクラスですし強いでしょうねぇ。
取り合えずアルヴィス君が落ち込んでいるナナシさんを「起きろバカ」と、ひっぱたき、「アルちゃん酷い…」と言いつつナナシさんが現実に戻って来たので戦闘順を決める為のジャンケンを6人で始めます。

私は順番にこだわる気は無いので、面白そうなチェス側の動向を横目で見ながらジャンケンに参加しますか。

ホイッ。あ、一発で決まりました。

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