爺さんは修練(の門)の神となる
修練の門の中、腕を頭に回し、仰向けのままで空を眺めながらここ最近の状況を整理する。

ガイラさんに兄さんの事を教えて貰おうと思っていたのですが、ウォーゲーム前日は治療後に面会謝絶(まあ、あの大ケガでしたし死闘のせいで体力も落ちていたでしょうから仕方ありません)

初日はギンタ君とジャック君の修行の付き合いの為見つからず。

二日目はロラン対策とNo.1ナイトの自作自演劇のせいでそれどころじゃありませんでした。

それでいて三日目はこれですし…

いつになったら6年前の兄さんにたどり着けるのでしょうね。

と、ぼんやり考えていると地面から何かがボコッと出てきて、そのまま私は前に押し出された。


32


お前達は今回、ある意味最も戦いにくい敵と戦う事になる。

と、ガイラさんは言っていました。

戦いにくい敵とは?

マンガやアニメやゲームでなら仲間同士、身内、友人同士の戦い、それか自分自身との戦いが有力候補ですよね。

と目の前の自身の立体化した影と対面しつつ考えます。今回はこれとの戦いが修行内容らしいです。

そういう事だ5人共!!今回お前達の戦う相手は自分自身!!
ネイチャーARM『シャドーマン』!!
影とはいえ魔力の強さもおのおの全て同じ。

体をいじめぬいて魔力を向上させよ!!魔力が高まればシャドーマンも同じ魔力になって応戦するがな。己の敵は己という修行じゃ!!
それぞれが魔力値MAXの状態で攻撃してくるぞ!極限の力でたちむかえ!!己の限界を突破するのだ!!!

タイミングの良すぎる空から聞こえた神(ガイラさん)のありがたいお言葉が途切れると、私の影ことシャドーマンが、影で具現化したウォーハンマーで容赦なく頭を潰しにきます、間一髪避ける事が出来ましたが、直前まで自分のいた場所はシャドーマンを中心にクレーターを作っていました。

「私、こんな馬鹿力でしたっけ?」

っと、関心している場合じゃありません。手を抜いた瞬間にあの世行きになりそうなので、辛いところですが本日2回目のスタンガンを発動、影はウェポンの使用が不可能になりました。勿論私も。

………あ、私の持つARMはウェポン2つにダークネス1つですからこれ、只の殴りあいになるのでは…?

案の定、ARMを使用出来なくなったシャドーマンは私をブン殴ろうと直進してくるのでした。





ギンタ君達はARMを最大限に活用した派手なバトルを繰り広げているのでしょう、それにより魔力もアホみたいに上がる。と息を切らし地面に四肢を放り出し、再び空を眺めながら考えます。隣では私の影も同じ体制でぶっ倒れています。

結局、お互い攻撃を防ぎつつ急所狙いで殴り蹴りたまに間接技を仕掛け、途中うまい具合にマウントポジションを得たので一方的に顔を殴っていたら体を捻られ抜け出され、今度は逆に自分が一方的にボコボコ殴られ口内を切り、なんとか抜け出し…を何度か繰り返し、再び対面する形に戻って、さあ仕切り直しだと言うところでお互いその場に倒れたのでした。

シャドーマンは本人が疲労すると、影自信も疲労するシステムになっているようです、まあそうしないと眠ったり食事をとったり出来ませんもんね。

さて、そろそろ呪いも解けるでしょうし魔力向上の為今後はなるべくダークネスを使用せずに60日間頑張りますか。





「次こそ私が出るっていってんだよォギャハハハハハ!!殺したくて殺したくてウズくんだよォ!!!ファントム!!許しを頂戴っ頂戴よぉ!!!」

「うーん…でもねェ……他にも出たいって人もいてね……」

レスターヴァ城内いつもの祭壇前、次の4thバトルのナイトからの参加者を決めようと14人が集まっていた。
そんな中、一人のナイトが我先にとファントムに参加の意を唱える。

「知ったこっちゃないんだよォ!!!なんならジャマする奴ぶっ殺しても出てやるさ!!」

「ヒュヒュ……言ってくれるなラプンツェル。相手になってやろうか?」

「まあまあ。仲間内でもめても仕方無い……」

「言ったらきかぬ奴じゃ。彼女の好きにさせようかのォ…」

「決まりね!!!」

数人のナイトが「彼女」の参加を容認し、
「彼女」、ラプンツェルは纏っていた布を脱ぎ払った。

「4THバトルは私のものさ!!!ギャハハハ!!絶頂しちゃうよォーっ!!!」





「ファントム、いいのですか?」

4thバトルの参加はラプンツェルと決着がつき14人のナイトが解散後、ロランはいつも通りペタを隣に従えるファントムに疑問を投げ掛けた。

「まあ、4thバトルにハロウィンやキメラを出してゲームを終わらせても勿体無いからね、実力的にも彼女でいいんじゃないかな?」

ファントムの適当な答に「そうですか…」、と返答してこの話を終わらせ、本来の目的の3rdバトル後の話に話題を変える。

「でも残念でしたね、ミツキさんがこちら側に来なくて。」

「そうだね、彼女がチェスに入ってくれたらヒナタを誘き出せたかもしれないのに。」

「………え?」

予想外の言葉にロランは小さく声をもらす。
あの時の彼の機嫌の悪そうな声は、ファントム曰くトモダチであり、思考も行動もどちらかと言えば自分勝手で冷徹。同じく冷徹な性格と言っていいクイーンの妹であるドロシーのように明確な目的があってメルにいる訳でも無い、どちらかと言えばチェス側の人間の方が違和感の無い、そんなミツキがこちら側に来なかった事に失望した為だと思っていたからだった。

「ミツキさんは…ファントムの…その、『トモダチ』、なんですよね…?」

「うん、ミツキはトモダチ。」

「でしたら何故、そんな考えを…?ボクには理解出来ません」

「キミは随分とミツキの事を気に掛けるんだね、まあヒナタと仲が良かったから当然だと思うけどさ。」

ロランが、ミツキを気にかけていたのは6年前に自分を可愛がってくれたヒナタが妹であるミツキの話を彼によくしていたからだった。

ミツキもヒナタも親に捨てられた子供でミツキはヒナタがいなくなった事で元いた世界では再び肉親を無くして一人ぼっち。ヒナタはこの世界に来る直前にミツキと最初で最後の喧嘩をした事が心残りだと一度だけ溢していた。

肉親を無くして一人ぼっち。

「彼女とボクは考え方も実際の境遇も本当は全く違う人間なのに」
そう、内心苦笑しながらも「ボクと同じだ」と、過去の自分と重ねてしまう。
だからだろう、彼女の事を命令次第で殺すつもりはあっても気にかけてしまうのは。

「ミツキもトモダチ、だけど先にトモダチになったのはヒナタ。トモダチに優先順位を付けるなんてどうかしてるとボク自身も思っているけど、それでもボクにとって彼女はまだそれ程の存在でも何でもないんだ。」

かといってヒナタもペタや…アルマ程の存在になっている訳でも無いんだけどね、付き合いの長さも関係しているけど、何より裏切られたし。とファントムは内心ほくそ笑む。

「思考もボクと似通っていたヒナタは、いいトモダチだと思っていた。お互いの内心をそれなりに打ち明け合える仲にまでなった。それなのにボクを裏切ってあっち側に付いた。酷い裏切りだと思わないかい?ねえペタ。」

突然の問い掛けに動じること無く、ペタは「そうですね」と模範的な返答をする。

「同時に安心もしたんだけどね。ミツキもヒナタと同じようにトモダチを裏切って敵側に付くような人間だったら、ボクは失望して彼女を利用した後に手を掛ける事になっていたと思うから。まあ、あっち側に付いてる以上いつかは殺さないといけないんだけど。
……ヒナタ、元気かな?久しぶりに会いたいな。やっぱり唯一の身内のミツキを人質として使わないと会いに来てくれないのかなぁ…」

ファントムの視線は目の前の壁の装飾に向いていたがその目には何も写していないようだとロランもペタも頭に浮かべ、誰に発する事も無く消えた。
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