酷い嘘を付かれてました
「ト、トム…トム!!良かった!生きてたんだな!!」

ギンタ君がトムさんが生きていた事に涙ぐみつつ喜んでいる。こんな状況じゃなかったら涙涙の再会だったでしょうね。

さて、あのレギンレイヴ城の上にいるトムさんの正体はどれでしょう?

1.幽霊
2.チェスの兵隊
3.あれはトムさんのそっくりさん
4.ヴェストリのトムさんですが顔色悪い人に洗脳されている

私は2だと思いますよ、色々と不自然だった状況もこれで全部説明つきそうですし。今更ですがチェスの兵隊かもしれないと言うことをもっと疑えばと少し後悔しています。
それにしてもチェスの兵隊の皆さんは随分と高い所が好きですね、低所恐怖症ですか?

「なあ、みんなどうしちまったんだよ?」

ここにいる殆どの人間が険しい顔をするピリピリとした空気の中、通常運転のギンタ君だけが異質な存在でした。

「てめー…何カン違いしてやがる!!ギンタ!!あいつは…チェスの兵隊の司令塔!!ファントムだ!!」


30


チェスの兵隊だけならともかく彼はNo.1ナイトで生きる屍のファントムですか、驚愕の事実です。そう言えば「トム」、「ファントム」、と名前も似てますね。

2ndバトルの夜のあれはファントムの自作自演劇だったと言う訳ですか、あの顔色悪い人も付き合わされて大変ですね、意外と二人してノリノリだったのかもしれませんが。そう考えるとなんか暇そうですねチェスの兵隊。
それにしてもあれだけ不愉快になりそうな事を言っておいてよく殺されませんでしたね、私。幸運です。

さて、「トムさん」と共に行動をしていたギンタ君はと言うと、大好きなメルヘヴンを戦争と言う名のゲームと称し苦しませている事実と、父親殺しに対する怒りでわなわなと震え

「てっ……てめェそこ動くんじゃねェぞ!!!ぶっ殺「まてギンタ!!!」

と、「トムさん」の正体を知り飛び掛かろうとするのをバッボとおっさんが制します。

「動かねェ方がいいのはお前だ!今のお前じゃ奴にキズ一つつけられねェ!!」

「怒るのももっともですが、いかんせん相手が悪いと思います。3rdバトル直後で疲労しているのもお忘れ無く。」

「その瞳に…よく焼きつけるんだ。奴こそ…倒さねばならない最大の敵だ!!」

おっさん、私、アルヴィス君の順でギンタ君をどうにか説得すると、ファントムのいる少し後ろにロランがいつものへらへら顔で現れました。先程までアルヴィス君をほぼ一方的にボコボコにしていた人間とは思えませんね。

「ロラン……上手にできたねェ……誉めてあげるよ。」

「あ、ありがとうございます……!光栄ですファントム……!」

飼い犬でも誉めるような口調でファントムはロランを誉めるのでロランも満更じゃ無いようでした。そのせいか何故かある筈の無い尻尾を振ってるのが見えます。もう彼は犬って事にしましょう、ファントムの忠犬。名前は…そうですね、ポチとジョンどっちがいいでしょうか?

まあそれはいいとして、ファントムは14人がゲームに興味を持ち始めたと言い出し、その直後におそらくナイトクラスであろうチェスの兵隊が12人、アンダータで現れましました。非常に高い魔力を感じるので、おそらく全員ナイトクラスでしょう。ナナシさんも似たような事を言っています。

そんな14人は殆ど全員顔を隠していますが知ってる人も中にはいました、トマト、キメラ、顔色悪い人、えーと…ポチ、あとファントム。

個人的にあの14人の中で只者では無いと思ったのは頭に木が生えてるご老人、木に寄生されてるのでしょうか?そうで無くてもパッと見植物使いっぽいですし勝手に断定しますがハロウィンを作ったのは彼なんでしょうね。半端無いです、やっべーです。
あとなんとなくですがジャック君と対戦しそうな気がします。

と、勝手に14人の一人に対して想像と言う名の妄想を膨らませていると、ファントムが「ねえ、ギンタ、ミツキ」と呼び掛けました。

「ボクはこの世界が大っ嫌いだ!!臭くて臭くて堪らない!!」

急に何を言い出すんでしょうこの人。

出だしから頭の痛くなるようなファントムのありがだーい演説は、続けざまに耳を通過します、彼にとっては花も木も石も水も鳥も村も町も山も臭いらしく、その中でも一番臭いのは人間らしいです。

でも「トムさん」と再会した夜、こんな風に全部大好きとか言ってたじゃないですかー。

「ボクは、この世界が大好きだ。花も木も石も、水も鳥も、でも、一番好きなのは人間だ。だから…人間を平気で殺すチェスは、絶対に許せない。だから、あの時ギンタに協力したんだ。でも、そのことがチェスにバレて…命を狙われるようになったんだ。」

酷い嘘を付かれていたんですね、私。なんか唖然としたのできっとアホみたいに口開けてますよ今の私。他人事ですが、そんなゴミ山に囲まれたような世界で今までよく生き続けられましたね。

さらにどうでもいいですが彼の今の顔は下手なホラーやネットに転がってそうなグロ画像よりよっぽど精神的にきます。全国中継されてるかどうかはわかりませんがされていたら心臓発作起こして倒れる人、出てるんじゃないでしょうか。

電波な演説はまだまだ続く。

「世界の中心に置くのは常に自分。他者を傷つけ、妬み、嫉み、それでもいつでも自分が正しいと思っている。嫉妬、憎悪、背信、不遜、傲慢、欺瞞、それが人間の本質……醜悪だね……臭くて吐き気がする。」

ここでようやく一息をつき、前振りは終わったのか、ようやく本題に差し掛かりました。

「見せかけだけ。皆馬鹿ばっかりだ。だから全て殺す事を決めたのさ。」

さいですか、巻き込まれた方はたまったもんじゃありませんね。

「チェスの兵隊はこの世を見限った者が集まった。逆に言えば世界から捨てられた者達ばかりなのさ……だから我々は1つになった。………どうかな?君達さえ良ければこちら側の人間になってもいいのだけれど……」

と、全て言い切るとファントムは手を差し伸べました。
私はともかくギンタ君は一時的に一緒に行動していて説得不可能だと理解してそうなものですけどね。わかっててやってるのでしょうが。

「ふざけんな!!てめえのやってる事こそ自己中心的じゃねえか!!オレはてめえをぶっ倒す!!」

「ダンナと同じ事を言うんだね。それ故に哀れだ……」

彼は本気で言っていたようです。ネジが殆どすっぽぬけてるのでしょうね、流石ロランの信仰先。ネジをはめ直す為に日本語滅茶苦茶ですがレスターヴァ城内に病院を建てましょう。

「ミツキはどうかな?入ってくれればヒナタの事を話してもいいのだけれど。」

ファントムの言葉に私に視線が集まりグッサリと刺さります、痛いです。


「気にならない訳ではありませんが、その身内が一度裏切りをしている以上、敵陣にそう易々と考えなしに入るのは無謀じゃありませんか?それに私、其方の兵を数名殺してますし、次の居住区にするにはレスターヴァ城の居心地は最悪でしょうね。あと同じ血引いてますから簡単に裏切りますよ?私は間違いなくあなたの嫌う人間です。」

「ふうん、そう。」

何ですかその心底どうでも良さそうな反応。訳がわかりません。面白い反応を返さなかったこっちが悪いみたいじゃないですか。心無しかチェス側からも「空気読めよ」と言われている気がしますし。

「これを…あげるよ。」

ファントムがマジックストーンらしき物を放り投げ、それはギンタ君の目の前に音をたてて落ちた。

「バッボのストーンだ。強くなって会いにおいで。

まさか6年前ボクが使っていたARM、それにトモダチの妹と戦うとは思わなかったな。ねぇバッボ?ミツキ?」

三人とも……楽しませてくれよ……

と、チェスの兵隊は余韻を残し次々と消えてその場から全員がいなくなりました。

取り合えず不吉ですので後で塩撒いときましょう塩。

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