羨ましいとかありません
レスターヴァ城にて、いつもの二人。
ファントムとペタが1stバトルを観戦していた。

「出てきましたね。ギンタ…ですか。」

「うん。」

「私はこの少年をパヅリカという島で一度見ていますが、正直なぜあなたがそこまで興味を抱くのか解せません。」

「面白い…創造力をもっているんだ。それに

『ダンナ』に似ている。」


16


1stバトル最終戦です。
民衆の方達はギンタ君に世界の運命がかかっている事にいささか不安を持っているようでした。

「(フィクション的に考えて)14歳は何故か救世主が多いので大丈夫です。きっと大丈夫。」

「14歳にメルヘヴンの命運がかかってる?うわーん。どうしよ〜っ。」

「おうえんするのだ!!」

ギンタ君に大量の声援がおくられます、気分が良さそうにしています、余裕ですね。

「ギンタ…と言ったな?正直、お前には同情を禁じえない。7人だけのチーム!そしてお前のような子供がキャプテン!その重圧は相当だろう。更に……相手が私であるのだからな!来い。」

と、ガロンはまあ大人の対応です。
スノウ姫、ドロシーさん、ついでに私の声援で攻撃開始です初手はバージョン@

「でけえからってビビってねェぞーっ!!」

ハンマーARMに変形と同時にガロンに直進、容赦なく頭部を攻撃します、数回ぶん殴ります 、普通はかなりのダメージを受ける筈ですがが効果はいまひとつのようです。

「子供にしてはいいパンチだ。いいシックスセンスも感じる。だが…効かん。」

されるがままだったガロンが初めて反撃し、ギンタ君は一撃で吹っ飛ばされフィールドに叩きつけられます、この攻撃はギンタ君に効いたようです。

ガロンは右手に身体硬質化のネイチャーARM5つ、左手には腕力向上型のネイチャーARM5つの計10ものARMをつけ、それを操っているそうです。
指輪つけたまま殴るって、殴られた相手は相当痛いんですよね、手ごろな石を持つと威力倍増です。

ジャック君が沢山つけてズルイとか言ってましたがズルくないです、アルヴィス君も同じ事を言っていました。戦争をなめていらっしゃる???(2回目)

さて、接近戦は不利に感じたのかギンタ君の次なる手はバージョンAバブルランチャー、これは初めて見ました、とばされるバッボ型のシャボン玉は触れると爆発する仕組みで、それでガロンに集中砲火を浴びせました。
そんな様子をパノが余裕そうに見ています。

「少ーし…痛かったかな。」

「ゲ!!マジ!!?」

マジです、一瞬の隙を見せたギンタ君はガロンにまたもや一発殴られます倒れます。
エドが敵ながら強いと感心していました、ゲームなどの序盤の固い敵って倒すの面倒なんですよね、一般で魔法括りにされるような特殊技を覚えると案外チョロかったりするんですけど。

「この試合でウォーゲームは終わる。ファントムが出る必要も無くな…「まてよ。おっさん。まだオレ死んでねェぞ。」

異世界人補正で体が丈夫なギンタ君、前にもどっかで言いましたが彼、しぶといですからね、立ち上がれるならいくらでも立ち向かってきますよ。

「いい度胸をしている。楽には死ねぬぞ。ギンタ!!」

ガロンが腕をポキポキと鳴らしていると、ギンタ君の魔力の波長が変わりました、ハンマーもランチャーも駄目な今、ガーゴイルを出すつもりのようです。それを出すしか勝てる見込みは無さそうなので仕方ありませんね。

そんな魔力にホイホイと釣られ、レギンレイヴ城の周りにはチェスの兵隊らしき人が増えてきました、ギンタ君を見定めに来ているようです、うじゃうじゃいます。
目に留まる中で知っているのだと、ハロウィンとか言う名前詐欺のトマト。ヴェストリの時のすぐキレる若者ギロム…って生きていたんですね。あの時生死確認を怠らず止めを刺しておくんでした。それとイアンもいます、前の好戦的な雰囲気とは違い、魔力とは違う禍々しいオーラを発しているように見えました。

さて、そうこうしている内にガーゴイル発動のための蓄電は済んだようです。

「いくぜ。おっさん!!バージョンB!!!ガーゴイル!!!」





決着はガーゴイルを出してからすぐにつきました。
ガーゴイルの繰り出す一撃をガロンはなんとか止めましたが、10個のARMを操作しきれず全て破壊。
そのまま重い一撃を受け、トドメと言うところでパノが間に入り、ギンタ君が勝利しました。
彼女達にとっては大切な親だそうです。そんな親子仲を見て羨ましいだとか思ってませんよ、別に。

1stバトルは無事、チーム『メル』の勝利で幕を引きました、明日のバトルは4VS4、場所は砂漠フィールドで行うそうです。
補足で説明が入りましたが、万が一引き分けになった場合はチェス側の勝利とされるそうです、主催が主催ですしまあ当然ですね。

ポズンがよい夢をとか言ってました。
見れるといいんですけどね。





1stバトル終了直後、今後の戦いに備え、顔でも拝んでやろうと偵察がてら試合を見に来ていたチェスの兵隊を探す為、レギンレイヴ城をふらつきます。と言うのは建前で、本当の理由はレギンレイヴ城の探索です、広く知らない建物を見ると探索したくなる性分なので。

レギンレイヴ城に留まる理由が無い以上、殆どのチェスの兵隊はレスターヴァに戻っているでしょうから、リンチの心配も無いでしょう。

「あ、あの。ミツキ…さんですよね?」

おかしいですね?戻ってる筈と断定したところで知らない人に背後から話しかけられました。不思議と気配に気付けませんでした。顔を拝もうとは思いましたが会話をしようだとかは思ってません、振り返りもせず足を進めましょう。

「違います」

「え?ミツキさんですよね?ヒナタさんの妹の」

「人違いです」

詮索していたのは話しかける為でも話しかけられる為でもありません。
あと知らない人に声をかけられてもついていくなと兄さんに言われているんです、さようなら。

「嘘つかないでくださ…うわっ!」

うまく迂回すればチームメルのいる部屋まで戻れるだろうと足を早めると、相手は引き留めようとしたのでしょう。左肩を掴まれたので、振りほどこう…としたところで相手の方が足をもつれさせ、お互いバランスを崩してひっくり返りました。
一人で転ぶ分には勝手にしろと思うのですが、不愉快な行動のせいで相手が覆い被さる形で一緒に転倒するはめに。
そしてろくに受け身も取れず顔面と地面がこんにちは。記憶が一時的にトびそうになった気がします。

「す、すみません…」

「謝る気があるならさっさとどいてください」

何故何もない所で転べるのでしょうこの人。ひょっとして会話の口実を作られたのでしょうか?
立ち上がろうとすると鼻から血が垂れ、服に数点染みを作りました。鼻血を手首で拭っていると頭上から手を差しのべられましたが、敵の施しは受けたくないので視界に入っていない事にします。敵と馴れ合ったら悪いフラグが立つって警告をフィクションで何度も見たので。相手が少し哀しそうにしてましたが知りません。

そしてお互い御対面、最悪です、馬のピアスを付けています、ナイトクラスです。魔力はまるで感じられませんが、当然抑えているのでしょう。相手は人の良さそうな顔でへらへら笑っていますが何が楽しいのでしょうか。
あ、鼻からみっともなく血を出してる女がいたら笑うか。

「えっと、はじめまして。ボクはロランといいます。決してワザとでは無いのですが、突然こんな目に合わせてしまい、すみません。痛かったですよね?ホーリーARMを持ち合わせていれば良かったのですが…」

「礼儀正しい方ですね。折角の謝罪を跳ね除けるなんて無礼な真似はしませんが、実力差がハッキリと現れてる以上、敵の施しを受ける余裕は今の私には持ち合わせていません。ごめんなさい、さようなら。」

「あ、あの、ミツキさんは明日のバトル、参加しますよね…?」

「しません、今日参加しなかったドロシーさんスノウ姫ナナシさんとキャプテンのギンタ君か好戦的なアルヴィス君、ひょっとしたらリベンジもかねてジャック君が出るんじゃないでしょうか。」

まあ本当は出るつもりですが。敵相手に素直に「はい明日参加します」だなんて情報流すつもりはありません。
表情を崩さずロランが会話を続けます。

「あ、あえてその中にいないあなたが出ると解釈をしてもかまいませんね?」

「好きにしたらいいです、用事は終わりましたか?ナイトクラスであろうお方がわざわざ偵察に来るなんて、チェスの兵隊も随分と人材不足なんですね。」

「て、偵察ではないです!騙し討ちでもありませんっ!そんな真似をしないといけない程、チェスの兵隊の戦力は低くありません!…今回は、ボクが個人的にミツキさんと話がしたかっただけです。」

「何故?行方不明になっている兄さんの情報でも聞き出して捜索の手掛かりにでもするつもりですか?生憎6年前で止まっている情報なんて使い物にならないと思いますが。」

「えーっと、ボク達がヒナタさんを探していて、手掛かりが欲しいのは本当なんですが、それが目的でも無いんです。ボクはただ…」

「ただ?」

言おうか言わまいか迷っているのか、彼は何度か口を開いては噤むをへらへら笑いながら繰り返す。いいたきゃ悪口でも何でも言えばいいじゃないですか。私はこの実力差、人気の有無とどう考えても不利なこの状況からさっさと離れたいんです。あと止血

散々待った結果(と言ってもたいして時間は経っていなかったと思いますが)彼は意を決心して訳のわからない事を口にしました

「あの、頑張ってくださいね。」

「……はぁ?」

「話したい事や、聞きたい事が沢山あるので、本当は『ボクと仲良くなって下さい』と言いに来たのですが、生憎ミツキさんはボクに心を開いてはくれそうに無い様なので、今日はこれくらいで…」

で、では〜、とそのまま逃げ帰るように何処かへ行ってしまいました、どうせアンダータを持っているのでしょうからそれで戻ればいいのに。
「ボクと仲良くなって下さい」?「心を開いてくれそうに無い」?当然じゃ無いですか。いくら外面が良くても初対面の敵相手と仲良くしろと言う方が難しいです。その為だけに、私が一人になるともわからないのに敵の本拠地まで来るなんて、どうかしてます。
たったこれだけのやりとりで物凄く疲労しました、探索なんてさっさと打ち切って早く部屋に戻りましょう。また変な人に会いたくありませんし鼻血が拭っても拭っても止まらないので





「お帰り、ロラン。どうだった?ミツキと仲良くなれた?」

「は、はい!ファントムの言っていた通り、ひねくれていて警戒心の強い方でしたので…ですが妹のミツキさんと少しでも話しが出来たのは、嬉しかったです。本当に冷めた方なんだなあと、驚きました。」

「キミはヒナタにミツキと年齢が近いからと可愛がられてたからね…でも情に流されちゃ駄目だよ?ヒナタは見つけ次第制裁、ミツキは敵なんだから。」

「わかってますよ、ファントム。ボクに好意を向けてくれる方を手に掛けるのはとても心が痛みますが、幸いミツキさんはボクの事嫌いな様ですから。殺せと命じられるのでしたら、いつでも遠慮なく殺しますよ。」





ロランとかいう訳のわからないチェスの兵隊との対面後、また変な人と遭遇しないことを願って部屋に戻って来ました。

途中アルヴィス君とベルちゃんとすれ違うとベルちゃんに「うおぉ!?」と変な声をあげられたので「転びました」と言いました。

「大惨事だな」

「大惨事です」

ここでアルヴィス君に教えて貰ったのですが明日は4vs4バトルなので今日出なかった4人で参加する事になるそうです。

それにしてもあの人、なんだったのでしょうね。

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