推測通りの再開
さて、宣戦布告の夜からついに当日やって来ましたレギンレイヴ城。
今回もナナシさんのアンダータでぱっと移動、サッと着地。やっぱ便利ですね。これからは一家に一つの時代ですよ。

チェスの兵隊がわざわざ全世界に布告した以上ここに来てすぐ出会った正義感の強そうなムカつく彼もおそらくいるだろうと予想しています、これでいなかったらちょっと驚きです。

「うひゃーっ!!でっけえ城だな、こりゃ!!」

「セーフっぽいね!」

「前にここにも盗みに来た事あってな!アンダータの範囲やった!」

「どこでもいくんですなあ……」

ほんとどこにでも行くんですね、こう言うのを盗賊の鏡って言うんでしょうね。
あ、誉めてませんよ?貶してもいませんが。

ついでにはしゃいでるギンタ君に「城なら前にも見たじゃ無いですか、凍ってましたけど。」と口にしたら「その度に感動する気持ちが大丈夫なの!!ミツキはドライすぎ!!」と歯を剥き出しにして怒られました、なんでじゃ。

「で!?チェスはどこに……「あ゛ーっ!!!」

ドロシーさんの声をこの世の物とギリギリ思える程のダミ声で遮ったジャック君の指差す方向に顔を向けると、自分だけが脳内で勝手に噂をしたムカつく彼、アルヴィスがいました立っていました。

「よォアルヴィス!久しぶりい。」

ギンタ君がVサインを作り声をかけ、その後ろではジャック君が当事された行為に対していまだに怨念を抱いてました。鳥にされたのですから当然と言えば当然でしょうね。
とりあえず久々に再会したので自分も声をかけますか、後で話もしたいですし。

「お久しぶりです、元気にしてましたか?」


13


アルヴィスに声をかけ、曖昧な返事を貰った直後、ナナシさんが小指を立て「なあなあミツキちゃん」と、声を潜めながら寄ってきました、何事ですか?
新たなる美形の登場に自分の立場が危ういと焦ってるのですか?

「誰?ひょっとしてミツキちゃんのコレ?」

そうですか、私に喧嘩を売りたかったんですか。

「ありえません」

そっとナナシさんの手を取り、立てた小指をそのまま手の甲側に遠慮なく曲げてやろうと行動に移す

ゴーン…ゴーン…

という所で正午の鐘が鳴りました
はい、勿論冗談のつもりでしたよ。いくら癒しの天使があるとは言えウォーゲーム前に骨折させるなんて鬼畜の仕業、する訳無いじゃないですか。

「ミツキちゃん、今の目がヤバかったで…」

「そんな事ある訳無いじゃないですか」

「確かに殺気を感じたんや…なのに行動が自然すぎて怖かった…」

そんな暗黒微笑な表現大袈裟なので止めてください。
でも盗賊のBOSSに誉められたので将来は暗殺者の道に進むことを視野に入れてもいいかもしれませんね。
閑話休題

鐘が鳴り終わると城のバルコニーからまさしくお姫様ですよと言わんばかりの白いドレスを身に纏い豊満な胸と長い黒髪を持つ男の理想像であろう美女が現れた。

「お集まり頂いた皆様、ようこそレギンレイヴへ、心より歓迎いたします」

案の定彼女はレギンレイヴの姫様でした。
わざわざチェスの兵隊側に協力をしている以上なんらかの理由があるのでしょうね。

「今より、ウォーゲームを開催いたします。
…その前に……このゲームをするに相応しき者かテストを行います。参加希望者はその台座に置かれている…マジックストーンを手にしてください。」

いくつか置かれているマジックストーンを各々適当に手にしていきます。私は最後に取りました、余り物にはなんちゃらと言いますからね。
べ、別にタイミングを見失ったとかじゃありませんからね。
どうでもいいですが足りない場合はどうするのでしょうね。

参加者全員にマジックストーンが行き渡ったのを確認し、レギンレイヴ姫が口を開いた。

「テスト…開始」





マジックストーンが光を放ち、気づけば真っ暗な場所に一人で立っていました、異空間って奴に飛ばされたようです。

大して間を空けずに目の前にポーン兵らしき人間が現れます。
背後から不意打ちでもすればいいのにその辺真面目ですね。それにしても

「これがテストですか、楽でいいですね。まあ、対人戦は久しいので」

少し長めに相手をして貰いましょうか
この予選以降の為にも、ね

ダガーを一本発動させ、迫るポーン兵を私は迎える





そうですね、実際に見るのと手に掛けるのは全然違います。当然です。
私はその辺大丈夫寄りな人間だと思ってましたが、自分基準ではそうでも無かったようです。

でも、これで大丈夫。

一度だけ深く呼吸を行い、動かないポーン兵を尻目に背を向ける。

マジックストーンを手にする人の中に兄さんらしき人はどこにも見当たりませんでしたね

空間移動でレギンレイヴ城に飛ばされる最中そんな事を呑気に考えた





レギンレイヴには参加者の殆どが既に戻っていたようでした、少し時間を掛けすぎましたかね?

様子がおかしい事に気付いたのは、安堵をしたであろうスノウ姫他数名が駆け寄って来た時でした。顔見知り以外からは相手をしたポーン兵同様ことごとく生気を感じません。

「ミツキ!よかった〜」

「少し手こずりました」

嘘です。
こんな事態ですから、今後の戦いに備えて時間を取っていたなどと、形容するのも非難を浴びるでしょう、ギンタ君とかアルヴィスとかアルヴィスとかに。
事実この発言に気をとめる者なんていませんでした…約一名を除いて。
ええ、言うまでもないですが怪訝な顔でアルヴィスがこっちを見ています。

私が帰還した少しだけ後に、誰かが戻ってきました。
強さで言えばおっさんとほぼ同レベルか劣るくらいでしょうか?よくわかりませんが。
ポズンとか言うファンシーな生物がマジックストーンの中に一つだけ「ハズレ」があったと説明を入れます。
アルヴィスの言う「ガイラさん」はそれを引いてナイトクラスの「キメラ」と当たったそうです。

ポズンの側に現れたキメラであろう人は禍々しいオーラを放っていました、まこと勝手な話ですがああいう実力者かつ会話の一つもしなさそうなタイプは戦闘時に隙が殆ど出来ないのであまり戦いたくはありません。将来的に誰かが戦う事になるでしょうが私が相手にならない事を祈るばかりです。

ところで「ハズレ」がチェスの兵隊側がわざわざ名指しで招待した私やギンタ君に当たったらどうするつもりだったんでしょうね、流石に今あのレベルの相手に勝てるとは思いません。
…どうぞどうぞと合格のハンコでも押して貰えたのでしょうか。

スノウ姫が癒しの天使でガイラさんを治療している間、ポズンが合格者が少ないだのファントムが楽しめないだの口にしてニヤニヤ笑ってました、楽しますために来た訳では無いので知ったこっちゃありません。

ポズン、キメラ共に去った後、ジャック君がたった7人でこれから起こるであろう戦いに怖れを成していました。
武者震いにも見えましたけどね。





動かなくなったクロスガードの方達の埋葬後、すっかり暗くなった空の下レギンレイヴ城内にて、レギンレイヴ姫がもてなしをして下さいました。
彼女曰く民の危険を守る為チェスに協力をしているそうです、立派ですね。
スノウ姫も何かシンパシーを感じているように見えました。

そんな中唐突にアルヴィスがギンタ君に声をかけます

「ギンタ、キミはオレを信用させる事ができるか?
戦いでそれに応えてみせろ。見定めてやるよ…。」

全員に聞こえるような会話内容でした。
ギンタ君は声には出しませんでしたがアルヴィスに対する答えは明確でした。
アルヴィスのところの妖精さんがギンタ君に何か耳打ちしていました。

ドロシーさんもジャック君を見定めると脅しています
ナナシさんは何とかなるだろうとお気楽です。
スノウ姫とエドはお告げがなんとかと言ってました。

さて、気が乗りませんが一息ついたところで私も話を進めないといけませんね。

「アルヴィス、話があります。ちょっと外に出ませんか?」

「…そうだな、オレもお前と話をしようと思っていた所だ。」

ギンタ君はキミ扱いなのに私はお前呼びですか、信用されてませんね、当然ですけど。

「あまり気分の良い話は出来そうに無いのでちょっとお借りしますね、妖精さん。あ、とって喰おうだなんて思ってませんから安心してください。」

「ベル、ここで待っていて」

妖精さんはあまり乗り気ではないようでしたがアルヴィスに諭されて渋々要求を飲んでくれました。

部屋を出ると窓が全開なのか外と繋がっているのか体感温度が少し下がりました、 そのまま城内の廊下を歩き、階段を下り上階にもあったバルコニーに出ます
上階のバルコニーを通り過ぎる時、アルヴィスが足を止め「ここでいいだろう」とか言いましたがそんなの無視しました、あんなとこで会話とかやめて下さい、死ぬので。

見上げた空は今日もご機嫌です、そもそも雨降ったことありましたっけ。
手すりに寄りかかり、一息つき、さて本題に入ろうかと口を開いた。

「まずは私から話しましょうか?」

「…好きにしろ」

少しだけ身構える様子がわかりました。
前から勘づかれていたかもしれませんがいくら寝返ったとは言え、身内が元チェスの兵隊と先日の情報開示で公になりましたし、兄さんとは違うと頭のなかで理解していても偏見が入るのは仕方無いですね。
まあ偏見通りの人間だと思いますし私もこうしてアルヴィスに偏見を抱いているのですが。

「はい、そうですね、私、あなたの事ムカつくからと言って勝手に頭の中でサンドバッグにしてました、ごめんなさい。」

予想もせぬカミングアウトにアルヴィスは腕組ポーズのまま右肩だけをガクッと下げ、「は?」と間抜けな声をあげた。
漫画みたいな反応ありがとうございます。

「初めて会ったときにギンタ君をトーテムで上に押し上げた挙げ句落下させたでしょう?私、高所恐怖症なのでああ言うの見ると相手の事嫌なレッテル張ってしまうんですよね。だから時折内心でボロクソ言っていたので、どっかで謝ろうかと。あ、でも失礼ながらムカつく奴だとは今も思っています」

「いや、それはかまわないんだが…」

「かまわないんですか、そうですか、なら今日からあなたの事はサンドバ…」

「やめろ」

「冗談です」

そんな酷いあだ名つけませんよ。これから急増するであろうメルヘヴン一帯のアルヴィスファンに血祭りにされるかあの妖精さんに不思議パワーで何かされる気がします。

「お前、ヒナタ…さんの事について話をするつもりだったんじゃ」

「それについてはいつか本来の姿に戻ったおっさんに聞きます、あ、ガイラさんとか言う人でもいいです。そもそもあなたは私の質問に答えられるほど当時兄さん、『ヒナタ』と付き合いはあったんですか?当時のあなたが何歳か知りませんが」

「10歳」

「即答ですか」

しかも私と年齢そこまで変わらないんですか、いや、こっちに来る前は15でしたが修練の門で半年過ぎていますし自分ももう16ですよね、同い年です、よし

「…と、それはどうでもいいんですけど、あなた、その時は部外者だったのでは無いですか?」

「オレは前の戦争の時からクロスガードに所属している。確かにヒナタ…さんとは殆ど面識が無かったけどな。」

幼い頃からクロスガードですか

本日二回目の「立派ですね」称号を勝手に押すと、少し長く話をしたからでしょうか、アルヴィスは腕を組み直して体勢を整え直す。会話始めよりは張詰めていた空気が緩んだように感じるので少しだけ警戒が解かれたのだとホッとしました。

「で、あなたから話は?」

「今日の予選…」

と口にした後、アルヴィスは少し考え

「いや、いい」

とだけ答えました。予選ですか、今さらどうでもいいと考えたのか様子を見ようと判断したのでしょうね。本当は兄さんの事も色々と聞き出したいのでしょうがまあいいです。
警戒が完全に解かれる事はありませんでしたね、別にいいのですが。

「そうですか、ならもう寝ます。明日初日なので。おやすみなさいアルヴィス君、いい夢を。」

「ん?ああ」とか言うアルヴィス君の曖昧な返事の後、もと来た道を戻り、明日の仕度をすませ私は周りの声も気にせず部屋で眠りについた。

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