三日間180日修行
この世界に来てから曖昧だったARMの定義とついでに修練の門についてドロシーさんに教えて貰いました。

ウェポンARM…能力のある武器。
ガーディアンARM…ガーディアンが召喚されるARM、使用者は一定範囲の移動が不可能。
ディメンションARM…空間を歪めたり別空間を造ることが可能。
ダークネスARM…相手に呪いをかけるARM、使用者にも何らかの副作用。
ホーリーARM…治癒能力、ダークネスの呪いを解除。
ネイチャーARM…少しだけ自然の力を利用する事が可能。

とまあこんなかんじです、他に何にも分類されないARMもあり、能力レベルの低いARMは店でも売っているとのこと。

修練の門は文字通り修行の為に作られたARMで60日過ごしても現実での経過時間は1日だとか。そんなARMを一瞬で発動するおっさんは只者じゃ無いようです。確かに。

説明を受けている間、ジャック君が一人で喚いていました。後でドロシーさんにひっぱたかれました。


07


「出てこいや。そこのてめえ!」

ギンタ達を修練の門に送り一人煙草をふかしていたエドワードは何者かの気配を感じ取とり、森へ呼びかける。その返事を返すように『誰か』は姿を現した。

「お久しぶりです。アランさん!」

それは数日前にギンタら4人と接触し、そのまま監視を続けていたアルヴィスだった。
アルヴィスを目にしたエドワードは唖然とした顔で煙草を口から落とし、そんな事はお構いなしにと記憶を手繰り寄せる。

「なつかしいな!!おぼえてるぜーっ!!ガキのクセに6年前クロスガードの仲間だった変わり者!!大きくなったじゃねえか、アルヴィス!!」

懐かしげに挨拶を済ますとエドワードは視線を腕のタトゥに移し、深刻な表情で話を続けた。

「ずいぶん……犯されてきてんなァ……
お互いあの戦争での勝利の代償はでっけぇな。呪い……か。オレは犬との合体、そしておめえは……」

「そうですね……体中にこのタトゥが伸びるまで、もう時間が無い。だから、今度こそファントムを倒さなくてはいけない。そのために門番ピエロを探し、発動させた」

「なるほど。ギンタとミツキをここに呼んだのはおめえだったか!オレが昔、ダンナを呼んだ時はお互いいいパートナーになったぜ。おめえはギンタと行動をともにしねえのか、アルヴィス?」

「あいつは弱すぎです。パートナー?足を引っ張られるだけですね」

辛辣なアルヴィスの答えにアランはキツイな!!と声に出さず突っ込みを入れる。

「それに……クロスガードにいる間、チェスに殺される仲間を何人も見てきました。兄のように思っていた人も……ダンナさんも……!ともに行動して情が移らなければ……そんな思いはもうしなくていいでしょう?」

「確かに弱えよ、あのバカ」

葉巻に火を着け、一度だけ煙を吐き出しエドワードが続ける。

「少しも頼りがいがねえかもしれねえ。けどな……
おめえが呼び出し、オレが封印したバッボを手に入れたギンタ!!こいつは只の偶然なのか?オレは偶然とは思わねェ!!もしかしたら、あのバカ…今度こそメルヘヴンを救う救世主になるかもしれねえぜ」





修練の門にはストーンゴーレムとか言うガーディアンがうようよしてます、鬱陶しい程に。それをウォーハンマーでボッコボッコと倒します、イアン相手よりは楽ですね、きつい事には変わりありませんが、相手がいないより全然いい環境です。
ドロシーさんはサボってます、ここで修行するほど弱くないのでしょう。
ジャック君はバテてます、堅いゴーレム相手だと破壊目的に使用されないスコップでは少し厳しいでしょうね。

ストーンゴーレム相手に飽きてきた頃、ブモルさんとか言う熊耳メイドのおばさ…ガーディアンが現れました。つい変な声を出してしまいました。

次の修行は割れずの門とか言うのを砕けばいいとのこと、ARMとのシンクロを鍛える為の訓練だとか。
おっさんが言っていたあれで私がこっちは素人ですが?とかほざいたあれですね。
ジャック君はまだストーンゴーレムと戦ってます。
ドロシーさんが割れずの門の側の柱に寄りかかって応援してくれてます、有りがたいですね。
この門は一つしか無さそうですしジャック君が来る前にサクッと終わらせますか、効率の為にも。





「アランさん、一つだけ訂正させて下さい。俺は、ギンタしか呼んでない。ミツキの方は身に覚えがありません」

それはどういう事だ?アルヴィス、とエドワードは当然の疑問を返した。

「俺はてっきり連絡の取れなくなっていたアランさんか…ガイラさんが呼んだと思っていました。しかし、連絡の取れたガイラさんは門番ピエロを使用した事は一度も無いと言っています」

「俺も違えな、確かに俺はかつてダンナを門番ピエロで呼んだが、そもそもあれは一度きりの消耗品だ、もう一度発動しようにもそう簡単に手に入る代物じゃねえ」

「それだけじゃないんです、……気付きませんか?」

「お前も気付いていたか」

そう言ってエドワードは一度煙を吐き出し、葉巻を加え直して話を続けた。

「顔は似てねえがそっくりなんだよ、魔力の波長が。かつてチェスの兵隊側にいたが寝返りクロスロード側についたあいつに」

戦争終結後、何も言わず行方を眩ませ消息不明になった男の顔を記憶の底から手繰り寄せる。靄が掛かったように、エドワードもアルヴィスもはっきりと顔を思い出す事が出来なかった。

「魔力の波長なんて本来肉親でも似ることなんて殆ど無えのにな」

「…そうですね」
アルヴィスが相槌を打つと、通信用ARMがジジ…とノイズを放った。

『アランはどこだ!?クロスガードNo.2だった男!!!アランは!!!』

世界各地から通信用ARMでアラン、アルヴィスに声が届いた。内容はチェスの兵隊が復活し、各地で街が襲われていると言う物だった。

「聞こえましたよねアランさん!!!
襲われている街を…民を助けにいきましょう!!!
いくつもの国からSOSがかかっている!!
以前の戦争で壊滅寸前だったチェスがここまで戦力をとり戻した!
ファントムの…復活!!!
ダンナさんのパートナーだったあなたが参戦すれば 「アルヴィス」

言葉を遮られ、次にアルヴィスは信じがたい言葉を耳にする。

「頼みがある。人々を助けにいってくれ。オレはここに残る」





「見てよペタ……皆楽しそうだね。あちこちの国から火が上がってる。キレイだなぁ…ワクワクするよ。」

チェスの兵隊が世界各地で暴れている頃、レスターヴァ城のバルコニーからファントムとペタは炎で囲まれた世界を眺めていた。

「でも本当に楽しくなるのは、以前の戦争の時と同じように、ボク達に牙をむく存在が現れてからかな?
6年前は"ダンナ"って人のおかげで負けちゃったけど楽しかったよ。ダンナ…もう死んじゃったんでしょ?クロスガードはそれでもまた戦いを挑んでくるのかなあ…

楽しませてくれる人間……今回も現れたらいいなあ……」

このままあっさり征服しちゃったら
それこそ退屈になってしまうからね…………





さて、割れずの門に少々苦戦してしまいました。ドロシーさん、ブモルさんの与えてくれたヒントはモロ漫画でよくある奴でしたが実際行動に起こすと難しいのなんの。

「だーかーらー割るんじゃなくて砕くんじゃアホ!!ARMとシンクロしろっての!!シックスセンス!!」

そして現在進行形でブモルさんの説教を受けてるのはジャック君。見ても教えられても理解し難い事をやらされる事って辛いですよね、心情察します。だって今の彼は3時間前の私なんですから。

と、まあ修行の合間の休憩にジャック君を眺めていたらドロシーさんが果物らしき物を私と彼に投げてよこしてくれたので、お礼を言ってこの果物らしきものを一口囓ると甘爽やかな味が広がりました、何これ美味しい。流石メルヘヴン。

この感動を分かち合おうとジャック君に振り向くと彼はしょっぱい…しょっぱい…と涙を流しながら果物を口にしていました。どうやら辛い修行中に優しくしてくれたドロシーさん相手に食事を持ち掛けるも失敗し、追い討ちを掛けるように水浴び除くなからとどめのギンタ君になら覗かれたいかも発言。

そりゃさぞかし塩気のある味になるでしょうね。





なんやかんやあってもうすぐ180日、その間色々な事がありました。
3日目に釘を刺されたにも関わらずジャック君がドロシーさんの水浴びシーンを覗きました。鉄槌は下されました。
ドロシーさんに一緒に浴びたいと誘われましたが、女同士でも目のやり場に困る物は困るので遠慮しました、残念そうでした。
覗き事件の後は交代で見張るようにしました。

10日目です、ドロシーさんに手伝って貰いもうひとつのARMを発動させました。効果は中々強力、これは秘密兵器にしましょう、あ、ガーディアンじゃ無いですよ。

40日目です、ジャック君が割れずの門を砕きました。そう言えば彼、持ってるスコップにマジックストーンを入れる為のカスタム跡があったらしいのでドロシーさんがマジックストーンをプレゼントしていたみたいです、初日に自分がストーンゴーレム相手にしてた時の事です。
ちょっと羨ましいのでウォーハンマーをカスタムできるか後で聞いてみましょう。

101日目です、結構強くなったと思います。イアンといい勝負が出来る位じゃないでしょうか?そう言えば外の世界で3日間経過しないと出られないらしいのであと79日いなければなりません、おっさんのした事に対する恨みもそろそろどうでも良くなってきました。

123日目、すっかり忘れていたカスタムの話をドロシーさんに尋ねてみました、柄の底にカスタムしてくれるそうです、便利にしてくれるらしいので楽しみです。

150日目です、あと一月ですね、今更ですがドロシーさんにさん付けはやめてほしいと言われました。私は気に入らない相手を呼び捨てにする性分なのでその法則を覆すのは難しいと言いました、犬のエドとバッボは…人で無いから例外です。ポチ相手にごきげんようポチさんと言わないのと同じです。いや別にさん付けしてもいいのですが。
アルヴィスは気にくわないので呼び捨てです、おっさんは気に入りませんが年上相手にはさんづけするようにしてます、エドワード"さん"じゃなくておっ"さん"ですが。
あ、これ兄さんの教育で小さい頃からこんなんです。

172日目です、とっくの昔にカスタムを終えていたドロシーさんから返して貰ったウォーハンマー。
こんなところなのでカスタム出来る事は限られているとか、ドロシーさんの故郷ならもっと凄いカスタムが出来るらしいです、今はこれで十分ですけどね。今日も元気にストーンゴーレム相手に修行です。

さて、180日目が終わろうとしてます。

正直もうどうでも良いですが此方に来たときに覚えてろと宣言してしまったのでおっさんに一泡ふかすことにしましょう。





「そう言えばさ、ペタ、ボクの眠ってる間にヒナタは見つかった?」

外を眺めるのも飽き、バルコニーから戻ると、ふと思い出したかのようにファントムはペタに訪ねる。

「申し訳ありません、我々が敗者となったあの日以来全力で探してはいるのですが…」

「いいんだよ、ペタ。チェス復活の為に動くのが最優先だし、ボク達の目を欺いてクロスガードに逃げ込めるような人だったからね。そう簡単に見つかるとは思ってない。ヒナタは戦闘の方はからっきしだったし、戦争後にクロスガードへの接触は一切無かったとクイーンはおっしゃっていたから、とっくに野垂れ死んでてもおかしくないよ。でもさ、生きているなら、会いたいなあ…」

少し寂しそうな口ぶりでファントムは喋っていたが、同時に裏切り者のヒナタの末路を考えているのか少し楽しそうでもあった。

「ヒナタと言えばファントム、世界大戦開始の時期と重なった為、お伝えするのが遅れましたが少し気になることをルーク兵のロコが報告しに来ました」

「ロコ?…ああ、あの子か、6年の間に随分と縮んだよね。で、気になる事って?」

「スノウ姫奪還の為ハロウィンと共に行動してた時の事らしいです、バッボと共にいた異世界の住人について」

「うん、それはハロウィンが笑い話に教えてくれた。本人は狂ったように笑っていたけどあまり面白くなかったなあ…アラン、今はエドワードだっけ?の事ばかり話すし、あれが身内受けって奴かなあ。ハロウィン、嫌いじゃないけどね」

「バッボを武器に戦っていた少年の他にもう一人、異世界から来た少女がいた事はご存知ですか?」

「あぁ、なんか言っていた気がする。完全にオマケ扱いだったからなあ、ボクもバッボの行方とそれを使うギンタの方に興味が湧いていたし」

「ロコの話によるとその少女、ヒナタに少し面影が重なるそうです」

「……それなら話は変わって来るね」

彼なら不可能じゃないと思うけど性転換でもしちゃったのかな?と口にはせず1人ほくそ笑んだ後、ファントムはペタに向き直る。

「フフ…フフフ…そっか、そうだったね。ヒナタはクイーンが異世界から呼んだ人間だったね。以前、妹がいるとか言っていた気がするよ」

ヒナタはクロスガードのダンナに対する存在、余興としてクイーン自ら門番ピエロで呼んだ異世界の住人。
当時のボクはクイーンに気に入られる彼が羨ましかった。
そんな彼とボクはトモダチだった。
タトゥは入れなかった、クイーンの命令だったから。
トモダチになった切っ掛けは…なんだったっけ、忘れちゃった。

「いかがいたしますか?」

「ウォーゲーム開始前にどこかで接触したいな、ねえペタ」

「はい、なんでしょう」

「彼らが今後どこに向かうかわからないけどさ、検討はつかない?」





一泡ふかせようと外に出たはいいです。
が、おっさんは傷だらけですしギンタ君はほぼ一方的にイアンをボコってますしドロシーさんはギンタ君に抱きついてキスの嵐を浴びせますしそれを見てスノウ姫はキレてますしかっこよく現れたジャック君は羨ましがって泣き出しますし。
安心しました、180日前と人間関係は特に変わってませんね。

「ホーリーARMで回復してくださいイアン。それまでの間……時間を稼ぎます!」

傷だらけのイアンの後方から、多分ポーン兵であろう人間が出てくる。
なんでポーン兵かわかるかって?魔力がイアンより遥かに下なんですよ、あの人。ほら、イアンもやめとけって言ってます。私からも言います、やめとけやめとけ。

「百も承知。しかしあなたを護らねばならない。あなたはいずれナイト級になるであろう資質があります。ここで潰されたくないのですよ」

せめて一人、一番、魔力の低そうなあの男くらいならと目をつけられたのは考えるまでも無くジャック君。うん、修行を共にしていたのでわかりますが無理ですね。もう一度言います、やめとけやめとけ。

「アラ!なめられちゃったわねェ♪キミに力をあげたのが誰かも知らずにさ!見せておやり、ジャック!!」

ドロシーさんの言葉通り、ジャック君はマジックストーンでARMを強化され、修行の結果魔力も上がっています。
いくらこの中で魔力が低くてもポーン兵レベルじゃ相手になりませんよ。

「ネイチャーARM『大地のスコップ』!!!アースウェイブ!!!」

マジックストーンが光り、地面をえぐるように生じた地割れがポーン兵へと向かい、巨大な破片が容赦なく直撃しました、一撃です。うわぁ、超痛そう。
スノウ姫もギンタ君も驚愕しています、私とドロシーさんは修練の門の中で見てたので特に驚きません。

ポーン兵が倒れ、この圧倒的な戦力差の中回復したイアンが行った行動はある取引でした。

「ギンタ…。取り引きをしようぜ。ホーリーARM『癒しの天使』!!こいつはある程度まで痛み、傷を治す!こいつをギドに使わせてくれ。要求を飲むなら、こいつをくれてやってもいい」

「そいつ…ただのポーン兵じゃねェのか?チェスともあろう人間が情け深い事だなオイ」

いや、別にいいじゃないですか。
ほら、ギンタ君は賛成してくれました、おっさんの怪我も治せるからって。

「申し訳ありません……イアン」

取引成立後、回復の為にポーン兵はフードを仮面を外す。中にいたのは女の子でした。
ひょっとして城の時に話していた彼女とはあの子の事なのでしょうか。

「ギンタ!今回は負けだよ。だがねェ…次はそっちの番。オレっちはもっと上にいくぜ!!おめーにできたんならよ…オレっちにできねー訳はねえんだ!」

またおめーの前に現れるぜ!忘れるなギンタ!!!と、ホーリーARMを放り投げて二人は消えました。
…駄洒落を言ったんじゃないですよ?

二人が消えた後、ギンタ君とジャック君は半年ぶりの再開にはしゃぎ、おっさんはホーリーARMを使って回復しながら行き先を決めます。海を渡ってヒルド大陸に向かうそうです、あ、ボコボコにするなら今ですよね、完全に回復したら無理ですよね。
そっとウォーハンマーを発動し、おっさんの背後に回り込みます。スノウ姫がぎょっとした目で此方を見ていましたが気にしない。
横払いがいいかな〜と考え、ハンマー振りかざしたところでおっさんは眠りに落ち、犬のエドになってしまいました。ハンマーは虚しく宙を切るだけでした。

……まあもう気にしてないので?本当は寸止めするつもりでしたし?負けおしみじゃ無いですし?

背後から殴られかけたなんて露知らずエドはスノウ姫に挨拶します。
ギンタ君や私達の事はおっさんの中から見ていたとか。

この後氷の城でスノウ姫とのキスについて盛り上がるのはまた別の話。

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