週末論

 日曜日の今日は、朝から小雨が降っていた。
 ホストとホスト、生活リズムも乱れがちな互いのシフトの休みが重なった今年最初の日ではあるが、雨天に外出するというエネルギーの無駄遣いはしない。トイレや水を飲みに行ったりはするものの、必要以上にベッドから出ない。更に述べるなら職業柄腕枕とやらの快適性の低さを余計に知っているから、共寝する恋人にそれを求める事もなく、枕に頭を預けているだけだった。

 リーズナブルな価格とシンプルなデザインが売りの量販店で適当に購入した、お揃いという甘ったるい意図がもしかしたら存在するかもしれないグレーのスウェットは、二人で暮らし始めた時からずっと着ている所為で、首元や袖の辺りが、良い言い方をするならばゆったりとしている。それは金髪の男も同様だ。しかしそれが心地よい。自分の身体に合わせて生地が伸びたのだから、当然といえば当然なのだが。

 来客もないから、仕事場と違って服装への気遣いをしなくてもいい。昼前まで飯も食べずにその格好で過ごしていたら、金時が呟いた。

「これいつも思うんだけど」
「あ?」
「なんでグレーにしちゃったかね。いちご牛乳色とかさぁ、そんな感じの方が良かったんじゃね? お揃いにした感じも可愛いし」
「お前がいちご牛乳着るんだな。俺は黒だ」
「ふは、」

「なにそれいいね」。安請け合いしてクスリと笑う。

「寝癖ついてんぞ」
「ん? …ああ、知ってる」
「つーかいつも寝癖みてェなモンか」
「うるせーよ黒髪ストレート」

 惰性でつけっぱなしのテレビからは、地球滅亡に関するオカルト番組が放送されていた。古代先住民族の予言が云々で、要約すると、まだ年明けを祝う時期だというのに、今年の年末には世界が滅びるらしい。

「世界の終末だってよ」
「マジでか」
「恐らくな」
「イキナリ滅亡とか言われてもよ。どうすっかなー……」

古めかしい格好の呪術師が、神殿に祈りを捧げている映像が流れる。二人でその光景をぼんやりと眺めた。
儀式が終わるのを見届けてから、金時が真面目な顔をして提案した。

「雨やんだら、新しいスウェットでも買いに行かね?」
「良いけどよ。何だ、急に」
「世界の終末とかは置いといてさ、十四郎と一緒の週末を満喫しとくべきだろ。な?」
「……オフだぞ、今日」
「本気で口説いてンですぅ」
「もう口説かれてンだろ」
「じゃあ夜はピンクのスウェット着た十四郎と」
「アホ。……言っとくがテメェのが汚れるんだからな」
「…喜んでぇぇぇ!」

 ぐいぐいと抱き込まれ、温かい唇と唇が何度も柔らかく触れる。
終末論を語るテレビも今となっては邪魔だと消して、体重を預け合った。
伸びたグレーのスウェットも、怠惰な休日の朝も、大して特別な事ではない。ただ弛んだ時計のように、好いた相手との週末が過ぎていくだけだ。



end.



銀土の公式サマーパーカーの色を参照の元

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