9月某日、夜

「最近、好きかもしんねー奴ができてよ」

万事屋に帰ってきて、一口目の酒を口にしてから早々に言ってみたら、土方は酒を注ぐコップに向けてた視線をつい、と上げてこっちを見た。

「珍しいな、テメェがンな話するなんざ」
「……え、ダメなの?」
「ダメとかじゃねーよ。まァいいんじゃねーのか、オッサン」
「オッサンって、オメーも似たようなモンだろうが」
「フン。……奇遇だな、俺も最近……いや、もっと前から見る度イライラする奴がいるんだ」
「イライラ? そもそも土方くんは歩く電撃イライラ男じゃねーの」
「ンだとコラ! 不名誉極まりねェな。…で?」
「え?」
「だから、相談なら乗ってやるから話せよ」
「ヤケに親切だな。俺、金ないよ?」
「知ってるっつの。気が変わる前にさっさと吐け」
「…んー……いや、やっぱいいわ」
「はァ? ここまで引っ張っといてソレかよ」
「悪ぃ悪ぃ。なんかさぁ、イケるって思ったんだけどよ、自信なくなってきたわ……こういう時にヘイキな顔して座ってられたらよ、やっぱ俺なんかアウトオブ眼中なんだよ…うん」

だって目の前のコイツときたら、世間話聞いてるのとちっとも変わりがない。
ここで悲しそうなカオでもしてくれたらスムーズにいけたと思うけど、やっぱり小手先の駆け引きなんざするモンじゃなかった。
すっげー美人だし、と項垂れてぼやいたら、土方が不機嫌丸出しで俺を睨んだ。

「テメェのそういうところが悪いんだろ」
「……え?」
「思わせぶりで、こっちの態度塞ぐような真似しやがって、そのクセ肝心なとこで逃げるんだ。…このヘタレ野郎」
「ああ!? ヘタレだァ!? 誰のせいだと思ってんだよ澄ましたカオしやがって泣かすぞコノヤロー!」
「上等だやってみやがれ!」

酔っ払った勢いもあって、考えるより早く身体の方が動いていた。

「っ、やめ……!」
「やめるわけねーだろ」

さっきまで頭でグルグル考え込んでたのが全部どっかにいって。我に返った時、俺の下には着流しの(はだ)けまくった土方くんがいた。

「……目ェ覚めたかクソ天パ。脱がす相手間違ってんぞ」
「……間違ってねーよ」
「いらねーとこで張り合うな。……好きな奴がいんだろ? 変なこと言うんじゃねーよ」
「変なのはお前だろ。さっきまで威勢よかったくせによ、ヤケに大人しいじゃねェか。乳首見えてんぞ」
「るせェ、誰のせいだよ。重いからどけ」
「ヤダね。ヘタレ呼ばわり撤回しろ。あと乳首舐めさせろ」
「意味わかんねーよ! 本命の相手と出来たら撤回してやるからっ、だから放せ!」
「…へーぇ、乳首舐めたら撤回してくれんの?」
「……当然だが合意の上でだ。強姦罪でしょっぴかれたくなけりゃな」
「了解。じゃ遠慮なく」
「は!? 違ェよバカやろ、んああっ! …は、ぁ……ッ」

頭の上で抗議が聞こえたけどお構いナシで乳輪ごと口に含む。
平らな胸についてるぷっくりした乳首を舌で舐め回したら、汗ばんだ土方の身体がびくびく震えた。反応が可愛かったから今度は先っちょの方だけをクリクリいじめる。

「ほら、大人しく撤回しな?」
「はぅ、ぁああ……! んっんっ、あ……はァ」

返事をする余裕もなく、土方はエロっちい声を漏らして腰をよじる。
逃げようとしてるみたいだったから、乳首を強く吸い上げた。放置してた左側も指の腹で転がす。触ってないのに硬くなってて、つまんだりさすったりしてたら土方の身体から抵抗する力が抜けていく。
名残惜しいけどそろそろいいかと口を離したら、長椅子の上の土方は真っ赤な顔で息を乱している。さっきより腫れぼったくなった乳首がやらしい。

「コリコリになってるぜ。先っちょ痛くねぇ?」
「…たくねぇよ」
「どんな感じ? ジンジンする?」
「ぅうぁ……! テメェが、今みてェに擦らなきゃ、ジンジンしねぇんだよ……っ」
「好きな子の心配してんだよこれでも。乳首なんてそうそう弄られるモンじゃねェし。……俺が好きなのはオメーだけだからね、最初っから」

思い切ってそれを告げた。これで、もう俺が告白したのは決定的になる。土方は俺をまっすぐに見た。陰ってても解る。頬が微かに赤い。

「……馬ぁ鹿」

硬い視線がとろんと崩れたのと、土方が声を出したのは同時だった。

「俺もテメェに惚れてる。ヘタレの完全撤回は見送りだがな」
「わ、悪かったな順番メチャクチャで。……でも、オメーが男前でよかったわ」
「テメェこそ、据えられてもねぇ膳食う度胸がありゃ上等だろ」

身を起こして着流しを整えながら、土方はからかうように笑う。俺は土方がそんな風に話すのを初めて聞いた。しっとりした感じの、控えめな甘さの声だった。
隣に座って腰を引き寄せたら「オイ、動けねぇだろうが」って文句を言われたけど振り払われることはなくて、嬉しくて幸せで顔がにやけた。

「……どんな甘味でも勝てねェよなぁ」
「…甘味? なに妙なこと言ってんだ」
「ん? いやー……、俺来月誕生日なんだよ」
「そうか」
「そうか、って……来てくんねぇの?」
「………何日だよ」
「10日」
「……ま、まあ考えてやらなくもねぇ、かもしれねぇ……けど。ッてめ、ヘラヘラすんじゃねぇよ天パが伝染るッ!」
「いや伝染らないからね!?」



end!


開ける→はだける
今度は平仮名表記にしようか……
ここまで付き合って下さりありがとうございました!
(2014.09/07)


またまたオマケ(2015.10/10)⇒⇒
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