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とある夏島に停泊中の赤髪海賊団。
その島の裏手の海岸はほぼ無人で、連日連夜クルーたちは宴をしていた。
宴好きな赤髪海賊団では、こんな光景当たり前である。
そんな中、赤髪海賊団大頭は、暖かい眼差しで一組の親子を見守っていた。
母親の名前はアンナ。
息子の名前はノア。
アンナはシャンクスが妹のように可愛がっているこの海賊団のクルーで、その息子ノアは少々ハネぎみな黒の短髪に、くりくりとしたつり目、そして母親に似た人懐っこい笑顔の5才児だ。
砂遊びをしているノアはシャンクスの視線に気付くと、満面の笑みでシャンクスに手を振った。
ただでさえ丸っこい頬っぺたを笑顔でさらに丸め、一生懸命ぶんぶんと手を振る姿は、なんとも愛らしい。
「可愛いなぁ〜おれの息子」
「いや違うだろ。ついに頭イカレたか、頭」
デレきった顔で手を振り返すシャンクスに、ヤソップがつっこんだ。
「あんなに可愛がってんだ!おれの息子でいいだろ!!」
「ハイハイわかったよ…。しかし早いもんだな。アンナが身ごもって大騒動になったのが、つい最近に感じちまう」
シャンクスの悪酔いを軽くあしらって、ヤソップはしみじみと言った。
「そういえばノアの親父って結局誰だったんだ?」
ヤソップの言葉に、とくにノアを可愛がっているひとりであるルゥが寄ってきた。
ルゥの言葉に、ヤソップは首を横に振る。
「わからずじまいだよ。…ベンは勘づいてるみたいだけどな」
「じゃあ、おれらの顔見知りか?」
「かもな」
二人は知り合いという知り合いの顔を思い浮かべる。
…だれであろうと、いい気分ではなかった。
それほど、アンナとノアはクルーたちから愛されているのだ。
「アンナもノアも可愛いからおれの息子でいい!!」
「頭、酒飲みすぎだ」
「だれか頭から酒取り上げろ」
「ベンどこいった、あいつにやらせろ」
その日、シャンクスはずっとこんな調子だったらしい。
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