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リスト01、とりあえずやっておく事
あー、わかった、おっけ、落ち着こう。まずリアルで本当に人が落ちている事なんてないわけで。いや、でもここになにかいるのは事実…いや漫画かよ。まず人の家の前?いやアパートの影で半分死んだように倒れている人に関わりたくもないわけで、救急車?警察?なんて考えているうちにも息絶えそう。でもこの隠れているように倒れているのはなにか訳があるのだろうかと考えると、勝手に警察とか呼んでしまって?もしかしたらのよくきくマフィアとかヤクザとかの類かもしれなくて?警察から開放された瞬間に私の頭チュドンですかそうですか。かと言ってこの人を抱っこして「このときのために鍛えてたの!」なんて事があるわけもなく…私はとりあえず土砂降りの中、傘の位置を変えてから黒い塊のほうに歩み寄った。生きているのはわかるし、髪もあるし、人なのもわかる
でも人として、放っておけない…誰か呼ぶ?いや、こんな土砂降りの中呼んじゃう?
→声をかける
→放っておく
→誰かに電話する
現在の時刻は23時すぎ…今電話したとして、アドバイスは貰えたとしても助けは誰も来てくれないだろう。私は声をかけるを選ぶ事にしてその人のほうに寄っていった
「あのー…」
私が声をかけると、そこにいた人、たぶん顔の部分であろう場所が動いて街頭に若干だけど照らされてあまり見ない色の瞳がこっちを向いた。睨むように見てきたので私は一歩下がる
「ごめんなさい、見なかった事にします。それか救急車でも呼びますか?」
「…いや、いい…すまない」
何に対してのすまない、なのかわからない。とりあえず体がでかいから多分男性だろうとは思っていたけど今ので確定した、髪が長いけどやっぱり男性だ。顔を見た感じ別に女性を意識して髪を伸ばしているようには見えない…いや、あんまり見えてないけど。
とりあえずすまない、と謝ったその人は多分そこまで悪い人では無い…いや、でもカタギの人間には手を出すなとかそういうあれで?わからない、わからないけどとりあえずもう一度その人に歩み寄って、傍らにしゃがんでから傘をかけてあげた。
「動けないの?」
「もう少ししたら動けるようになるだろう…」
ゆっくりした口調で言うその人に違和感を覚えた。なんていうか頑張ってしゃべっているというか呂律をゆっくりまわしている?とりあえず怪我しては無さそう。でも最近物騒なんだよね、このあたり…関わりたくないけどむしろこの人放置して明日に死体になっているのも嫌だな…
「えーっと、お知り合いは?」
「…君が来たから置いていかれた」
「見捨てられたのね…。じゃあ、えっと、誰かに連絡は?」
「携帯が無い。無理だ」
「タクシーとかなら呼べるよ」
絶対この人年上なんだけど、どうしても、こう大きな犬に話しかけているような気もすれば素性も知らないからそのまま話してしまう。放っておけ、最後にそう言って話してくれなくなった。この人を無理やり連れて行く腕力も無ければ、放置していく勇気も無い
「あの、じゃあ…とりあえず動けるようになるまでうちに来る?肩貸せば動けるかな…」
確か、抱っこよりもおんぶてきな感じのほうが重いものを運ぶ時によかった気がする。それに放っておけ、と言うのなら誰かの家に上がりこむのが目的じゃないだろうし、私がそういっても動きもしない、小さな声でまた「放っておけ」と言うのも聞こえた。私は自分ももうずぶぬれなので、傘を畳んでからその人の腕を掴んで…うわ、腕も重たい。もう自分からもぐりこむようにしてその人の腕の下に肩がいくようにして、たちあがろうとした。でも協力が無いと立ち上がれません
「ねぇ、ちょ、立ち上がって!」
「お人よしは死ぬぞ」
「このあたりって新聞記事によると…バカって言っただけで殺されそうな感じだし。なら逆に親切にすればもしかしたらいいことがあるかもしれないでしょ」
隣、いや、耳元でふっという声が聞こえたと思ったら立ち上がれた。それでも重たいし、足取りもすごく重たい。熱があるとかそういう感じには思えないけど、その人の体は震えていた。寒いのかな、と思って顔をちらっと見てみたけど…顔色なんて見える明るさじゃない。自分のアパートは三階建て、そして私は三階に住んでるからロビーを抜けてから小さいエレベーターに乗って自分の階につく。ナメクジが這ったような痕みたいにその人の着る長いコートから水が滴っているのはちょっとだけ振り向いた時に見た。自分の部屋について鍵を開けて、扉を開けて中に入る。決して広いともいえない玄関に横向きになって入り、とりあえず玄関にその人を座らせた
施錠をしてから自分の上着を脱いで、先に自分が着替えてからバスタオルとかを持って玄関に行った。寄りかかるようにしているその人は、目を開けているから私が何をしているかは見える。コートを手伝いながら脱いでもらって、それからそれ以上は脱がせられないから上からバスタオルを何枚かかけた
「動けるようになったらお風呂入ろう。うちの乾燥機、音は五月蝿いけど有能だから15分くらいゆっくりしててくれれば乾くだろうし、そうしたら傘もあげるから…あぁ、あとお水もよかったらどうぞ。ただの水道水だけど」
世話焼くのは母親のようだろう、こういう女性は多分好かれないとは思うんだけどこの人他人だからなんでも無い。とりあえず、長い髪から雨の水が滴っているのもどうかと思うので、自分がやるように髪を結んでくるっと簡単に上にあげといた、これでよし。コートは乾燥機にかけられないから、玄関で軽く絞ってから玄関のところにかけておいた。
微動だにしないその人を見ると、意識もあるけど震えているのが気になる
水に手を伸ばしたその人がその水を飲み干すとふらふらしながら立ち上がってくれたから、こっちこっち、と手招きしてみると壁伝いに来るからそのままお風呂まで誘導した。脱いだら合図をしてもらうことにするか、こののろのろとした動きの人を手伝ってあげたほうがいいのか、色々と考えたけどさすがにすっぽんぽんに出来るほど小さな男では無い。うん、無理だ
「出来たら乾燥機に入れてスイッチを…無理なら合図して?」
「いや…大丈夫だ」
自分で出来るんだろう、そう思ってお風呂場から離れた。さて、この人はいったいなにで誰なのか。そのへんに落ちていた人をどうしたらいいのか
犬は拾ったら病院に連れて行く…人間も病院に連れて行ったらいいのか…いや、でも救急車は拒んでいたし。一応コートの中を調べてみたけど特に怪しいものは無い、というよりも何も入っていなかった
そっと脱衣所を覗いてみても、とくに怪しいものは無い、って事は財布とかも持ってないのかな携帯も?捨てられた?記憶喪失!?ふっ…私もまだまだね、そんな漫画みたいな事考えるなんて…私の知ってる漫画は暇つぶしにネットで無料で見ているものだから種類だけは豊富に見ていて無駄に変な事も想像してしまう。好き嫌いも無いから少女まんがから少年もなんでも見るし、でもここは現実です。そんなファンタジックなことを考えなくていい…包丁持ってないならいいとしよう。そう、このあたりで大事なのは殺人できるか出来ないか…いや、まって、あんな人くらいだったら絞殺も出来るか…人の家のものつかってか…警戒しよう。とりあえず自分の部屋からお風呂のほうを見ていた。ピー、という音が聞こえたのでもう乾燥機は回り終わったんだろう。バスタオルとかは置いといたし大丈夫だよね、なんてそっちのほうを見ていたら物音が聞こえた後にその人が見た感じ乾いた服を着て出てきた
「あ、大丈夫だった?」
「ああ、問題無い」
「もう動けるの?」
「大丈夫そうだ」
「よかった。怪我してたわけじゃないよね?何か事件に巻き込まれたとか?」
「いや、それが」
覚えてないんだ。その人はそう続けた。名前も年齢も覚えてないという、どこで何をしていたのかもわからない…ただとりあえず髪の乾かし方はわかるだろう、と思ってドライヤーを与えた。どうしよう、新たな詐欺かもしれない、この人がわからないなら探偵に相談するしか無いのかな…この町の探偵って言ったら……高校生探偵工藤新一とかいうのが記事に乗ってたけどその人にこの人誰かわかりますか?って聞けってか
でもあの人って殺人事件担当みたいなところがある…知らない子だけど、そんな高校生に依頼したら怖い気がしなくもない
「あー、ちなみに私が拾わなかったらどこに行く予定だったの?」
「あぁ、あの時は頭がボーっとしていてわかってないんだが、多分ホテルだな」
「ホテル?どこの?」
それがわかれば苦労しない。そう言わんばかりにため息を吐かれた。持ち物も何もない、というし、それは私も確認済みだ。でも、そう、さっき君がいたから仲間においていかれた、とか言っていなかったか、そう問いかけたら目の前の人が眉を寄せた
「そうだな…そうだ、誰かと一緒にいたな」
ここで私は確信した。この人嘘ついて無いんじゃ…いや、いや!騙されたちゃダメよ、私…!きっとそういう何かに違いない。でも私が黙って様子を伺っていると、本気でわかってないような、迷子の犬のように頭の上にクエスチョンを浮かべて首を傾げていた。疑っている私が申し訳なく思えて来る
「じゃあ、じゃあ、わかってるところから!年齢!」
「あー…そうだな、鏡で見た感じ…30前後か…」
「推定か…あてにならない。わかってる事ないの?他に」
「わかっている事か…、まずは先ほどの自分の状況から。体が痺れていたし、思考も鈍くなっていた、何かの薬を撃ち込んだかと思ったが体に注射痕は無し、となると薬で何かを飲んだか飲まされたか。それと俺が君に言った言葉だが、仲間という人物たちがいたとするのならその人物たちに自分の持ち物を持っていかれた可能性がある。ふむ、人物たち…どうやら複数のようだ。それに持ち物を持っていかれた、という事と君が来たから、という証言からすると…俺はどうやら正体を知られてはいけないらしい」
「探偵だな。誰かを尾行中だったんだ、きっと」
ここまでぺらぺらしゃべっていたらそうとしか思えない。それで尾行中だったのに尾行にばれて返り討ちにあったんだ…マヌ…いや、可哀想な人だ。ヤクザなんて言ってごめん
「そうか、探偵か」
「きっとそうだよ、コートだって探偵っぽいよ!」
私も、この人も納得してしまったのでこの人は探偵なんだという事が今わかった。で、ホテルはどこなのか聞いたけど、そのあとには携帯で電話をして調べよう、という話しになったんだけど
「名前…名前、なんだっけ」
「……あぁ…そうか、それなら直接ホテルに行って聞いて回るほかないな…。世話になった」
そして立ち上がったその人、いや、ちょ、土砂降りだし、もう24時回った夜中だしお財布も何もないこの人をそのへんに放り出すの!?
「ま、待った!待って!今日はとりあえず泊まっていっていいから、明日一緒に行こう!?」
「いや、これ以上迷惑かけるわけにはいかない」
「大丈夫だから!むしろ出て行かれて何かあったほうが迷惑だよ!」
私の言葉に動きを止めて少し考えたその人が「そうか」と呟いた。そうだ。うん、ともう一度頷いてからお客様用のお布団もあるから敷けるし、とりあえず自分はお風呂に入るのでテレビでも見て情報収集でもしておいてくれ、とお願いした。その時に外に出てしまっていても、私は追いかけないとは思うけど、大人しく家にいてくれるのなら最低限の事はしよう。そっか、探偵か…探偵なら尾行がばれるかもしれないから警察とか救急車とかダメなのかもしれない。一人で納得しながら、さすがにお風呂は見知らぬ男性が入った後なので入るのは…って思ったら入った形跡が無いのでシャワーだけ使ったのか、それならあったまろう、と思ってしっかりと湯船につかり、それから出た。出たら体育座りでテレビを見ているその人がいた
「ねぇ…名前無いと不便だよね、なんて呼べばいい?」
「名前か…好きにつければいい…」
「ぽち」
「呼べるか?」
「誤解されるから無理」
すぐに答えてすぐに否定した。いや、だって大きい犬みたいだったからつい。
何がいいか、と思ってその人が見ていたのはニュースというよりも映画。情報収集してっていったのにあえての映画を見ているなんて
「じゃあ…あー」
映画の中に何か無いかと思って画面の中を凝視する。ビールを飲んでいるからビールか、いや、この人関係無いじゃん。人間に名前つけるのって難しい…、無理だからもう名無しでいいや、なんて思って首を振った。とりあえず今日はもう寝よう、そう思ってテーブルをずらして布団を敷いて、私も自分のベッドに寝転がった
男の人を連れてきて、布団は違えど他に部屋は無いから同じ部屋で眠る。どうかと思うけど、まるでこの人無害…あぁ、そうだ、おきたらこの人の名前はムガイかタンテとかにしよう、もしくはシンシ…ありだなぁ…