たとえばこんなお話いかが? | ナノ

01


高校三年生、それは高校生活で一番上の立場でありながら、遊ぶ時に差がある何か。
推薦の人は前半が忙しく、受かれば後半が暇。一般の人はその逆もあり、就職はその職場によって様々
高校2年生の後半に生徒会に入った私は就職組だから学校からの色々に合わせてー…とは言っても通常の生活をしていればあまり問題はないんだろうけど。こんな頭の痛くなる話は置いておいて、生徒会にいる面々はなんだって教えてはくれないものの、みんな夏ごろに色々とあるらしい。まあだいたいは上に上がってすぐに何かあるわけじゃないから、楽しい高校三年生を送るはず…送るはずなのよねぇ…

高校2年生の後半、生徒会に入ったばかりの時はひどかった。呼び出し、そして行かない私。授業中に飛んでくる消しゴム。窓から捨てる私。なんなら三年生からも呼び出し、変わりに赤井という名前の先生を行かせてみる私。隠された教科書、先生に出しなさいって言われたら先生が取ったんでしょって言ってみる私。
調理実習の時に生卵を足元にぶつけられたから、上靴を脱いでそれを擦り付ける私
まあ今のだいたいが事実とは違うものとか入り交ざりだけど


「いじめられるの辛いわぁ…」

「…お前このお菓子の山なんだよ」

「もらったのよ。好意でね」

「嘘つけ…苦情が来てんだよ、苦情が」

生徒会室の窓から外を見ていると、その隣に並んだ松田が私の頭の上に手を乗せてわしわしと撫でているのか嫌がらせなのかよくわからない事をやってきた。松田を横目で見てからその手をぴしっと軽くたたくように振りほどくと松田が手を下ろす

「顔がいいからってあなたの事なんとも思って無い人の頭を撫でるのってやめたほうがいいわよ、女側からしたら気持ち悪いから。顔がいいからって」

「褒めてんのかけなしてんのかどっちだよ」

「貶してる」

「あっそ」

「よくいるのよ…ほら、ああいうの」

こっちから見えるのは校門まで向かっている生徒たちの姿。それで校門まで歩いている女子のほうに寄っていった男子が女子の頭を撫でた。そして一緒に歩く姿が見えたけど、その女子は少しだけ距離を開ける

「あの子の心の声教えるわね。ちょ、こいつほんと勘違いするのもいい加減にしてほしい、頭撫でられたら髪型もぐちゃぐちゃになるし嬉しくともなんともないんだけど!しかも何こいつ…一緒に帰る約束もしてないのに隣に並んじゃってさ」

「お前考え捻くれすぎだろ…」

「本当だって」

二人で並んでしばらく見ていると、先に歩く男子のほうへさっきの女子が駆け寄るように寄っていった。「本命はあいつだわ!」なんて言うと松田が「はいはい」なんて言って興味なさげに窓に背中に寄り掛からせるようにする。私があたったもんだから悔しいんだろうけど、そんな態度取らなくていいのに。

「あれ、二人とも早いね」

先生の手伝いをしていた萩原が生徒会室の扉を開けたのでそっちのほうを振り向いてから再び人間観察をし始めた。こっちによってきた萩原が私の髪を少しだけ掴んで「ちょっとごめんね」なんて言いながら私のポケットのブレザーから櫛を取って、髪を整え始めた

「…なんで萩原には何も言わねぇんだよ!」

「萩原は私のお姉さんみたいなもんだから!ねぇ、萩子!」

「そうねぇ…」

乗ってくれる萩原に笑って、そのうちみんなが来て生徒会の定例会が始まる。当然だけど、私は生徒会の人達と最初からこんな仲になったわけじゃない
話しは私が入った二年生の秋まで遡る


私は言うならば人に好かれる顔をしている。顔だけね。でもこの学校じゃ、そんなの別に珍しくともなんとも無いし、可愛い顔もいれば飛びぬけてかっこいい顔の人もいる。あの生徒会のメンバーとあの先生を見たら他の人たちがじゃがいもだと思ってもいいくらいには、なかなかいい顔をしていると思う。だからこそ他の女子生徒が騒ぐ気持ちもわかるし、男子生徒がぎゃーぎゃー言いたくなる気持ちも私にはわかる。でも性格もよくて顔もいい、頭も良くて顔も、なんてものがあるんだとしたら神様は色々なものを与えすぎだと思う

「わかった?」

「だからお前の成績が悪いとでも言いたいのか?」

「そういう事」

あぁ、それと顔のことなんだけど、その人の顔立ちや体がどんなものかにもよる。あとはどれほど嫌われているとか、なんとか。例えば可愛いふんわりとした雰囲気で、顔も可愛ければ儚い印象を与え、守ってあげたくなるような感じになる。色々面倒ごとを率先してやる子ならなおの事。可愛くていい子。ところが、顔はいいにしても性格がきつい、ちょっと派手目な服装、あと自由すぎる自由になると…遊んでる、とか誘惑してる、とか悪い噂も飛び交うわけね。ちなみに成績が悪いと余計に夜遊びしてるって言われる、人間って噂を作り上げて流すの大好きだから

反省文を書いていたんだけど、あまりにも集中しないからついでに成績の事を赤井秀一に言われていた。この人は私の担任の先生であって、英語の先生でもある。ちなみにこの学校の人気では1、2を争う。私が同じようにツンケンしても生意気って言われるのに、赤井秀一はツンケンしたらきゃーって言われるだけなのなんでなの。反省文は、私が窓から教室に入った事について。運動だけは得意な私にとって、わざわざ玄関から入って、階段をのぼって…なんてするよりも、すぐそこにある木によじ登ってから窓へ続くベランダから入るほうが凄く楽…他の人にとってはどうかと思うけど、よいしょってするだけで簡単に足が届く位置にいい感じに踏み台っぽい木が出ているのが悪いしすぐ近くにいい感じに木があるのも悪い…ただそれを切るって校長先生に言われてしまえば私のせいで木が切られるのは忍びなく、今回の反省文と木を切らないでください、の言葉を書いていた。でも10枚は無理。木を切ったら可哀想、痛いと思う、なんて子供なみの文章力を使ってかけたのは木の事。窓から進入禁止なんて生徒手帳にもどこにも書いていないし、一般常識てきにダメだって言われたその一般常識ってどこから来ているの。でも木が悪いわけじゃない、さんざん悪いとか言ったけど木は悪くないの!っていうことでもうやめるから!お願いします。なんて

屁理屈ばかり言っていたら嫌われもするわ

「進まないな」

なんなら、ペンを鼻の下と唇に挟ませて唇を尖らせていた。窓際にいた赤井が息を吐き出し、タバコに火をつける。ちょっと天井を見たけど、ここは理科準備室、理科の先生でもなんでもないんだけど、ちょっと脅しているらしく借りているらしい。自由にタバコが吸える唯一の場所だとか、なんだとか…
集中できないから、鼻の下に置いていたペンを机に置いて、タバコを吸う赤井に近づいていった。そうすると赤井は私からタバコを遠ざける

「ねぇ、赤井ってそれいつも吸ってるじゃない?ちょっと私にも吸わせて」

「赤井先生だろ。ダメだ、未成年には吸わせない」

「硬い…硬井秀一が私の前でいつもタバコを吸っているから、その味が気になったみょうじなまえが非行に走る。あなたのせいだと思わない?」

「思わん。心を強く持て」

タバコを吸う彼の傍ら、少しだけ雑談をしつつも時計を気にしていた

「粘るつもりか」

「ふふん」

でもわかられているみたいで赤井に言われた言葉には否定もしないで笑っておいた。タバコを吸い終えた赤井が吸い殻を持ち運びが出来るような小さい灰皿に入れて、それをパタリと閉じた

「一つだけ解決方法がある」

「…反省文書かなくていい?」

「ああ」

「聞く、なんでもいいからこの作文地獄から抜けさせて」

「作文じゃないだろ…。よし、なら生徒会に入れ」

「嫌」

「枚数増やすか」

「それいじめですね先生。訴えましょう」

「どっちだ?」

「やる…いや、でも…あの人たちの中に私が一人ぽつん、と入ったらどうなるかわかるでしょう!?」

「安心しろ、いじめられたら仕返せ。って言ってやれる」

「安心出来ないわ!」

結局のところ、赤井秀一はどうやら私を生徒会にいれる気満々だったらしい。生徒会といえば成績トップ集団、その中に私を入れるというのは多分そういうことで、さらには面倒ごとも私の世話もそっちが注意してくれるだろうという、結局のところ赤井秀一にとって面倒な私を押し付けようとしているらしい。
行きたくない、でも反省文は嫌だ。あの方眼紙だかなんだかしらないけど、あんなもの見ているだけで目が痛くなってくるし、頭痛も眩暈もする。するって思っていればする。だから私は意を決して生徒会に入る事にした

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