降谷×太陽(大)



気がついたら浜辺にいた。隣にいるのは確実に暑そうな格好のなまえさん、その人
自分もスーツだったから暑いのだが、まだ風が冷たくて心地良いのが救いでジャケットを脱いだくらいでどうにでもなる。ただなまえさんはだいぶ暑いと思うが
彼女の顔に太陽の日差しがあたらないように座れば辺りを見渡した。綺麗なただの海、さっきまで本庁で仕事をしていたはずなのにどうしてここにいるんだ
後ろには森があって、そのうち彼女がうなり始めた

「あっつーーい!!」

そりゃそうだろう。彼女は膝丈のスカートに黒のタイツ、それからセーターといった冬の服装そのままだったんだから。そう、季節は冬だったはずなのに常夏のリゾートに来てるような感じ、彼女を横目で見ると自分を扇いでいた

「とりあえず日陰に行くか」

「はい…」

アマレットもなまえも暑いのは苦手だったはずだ、日陰のほうに移動するとそこにタブレットのようなものが置いてあったのでそれを見た

“ようこそパラダイス・サマーへ。バーボンandなまえ”

「バーボン…」

「何か意味があるんですかね?」

「さあ。まあ…一応そのつもりでお願いします」

「わかりました」

組織が見てないとも限らないが、彼女もここにいるのが気になる。タブレットの文字が消えたと思ったらまた浮かび上がってきた
その文字は命令に従わないと殺す事、名前は管理人という名前だと言う事、今はまだ温度調節しているがスタートの合図で温度が上昇していく事、海の先は壁になっていて進めない…命令に従わないと出られない島
と書いてあった

「バーボン、壊しましょうか」

「僕も同感です」

「じゃ、これで」

彼女は話しが早い。まずは岩に向かってタブレットを叩きつけた、まったく割れない
次に思い切り岩に石を投げつけて削った後にそれを使ってタブレットを壊そうとした…が、傷一つつかない
最後の最後にその石の上にタブレットを置いた彼女がそこから離れた。蹴ったりこぶしをつきつけたりしても、タブレットはまったく壊れない

「はぁ…手強いですね」

「見てください、バーボン。画面に腹立つ文字が」

あっかんべー

「あ、本当だ、腹立ちますね。撃ちますか」

いつも持ってる銃が無い。それに彼女も気づいたらしく肩を竦めていた
画面には2人とも物騒だ、似たもの同士め!という画面が現れていた

「だってムカつきますもん」

という彼女の言葉に頷くと“突然ですがスタート”という画面が出てきて予告通りに気温が上昇して行き、日陰なのに蒸し暑くなってきた
なまえが冷たい場所を求めて木に寄りかかりに行った

“水着欲しいですか?YESorNO”

すかさず彼女がYESを選択しようとしたのでそれを止めた

「なまえさん、ここは慎重に考えて」

そう言ったのに、時すでに遅し、思い切りYESのほうをタップしていた。次に出たのは変な命令ではなくて、僕が選んだ水着を彼女が着るというだけだった。画面に出た水着は三種類、その間彼女の口は謎のバッテンのテープで閉じられていてもがもがともがいている。なんなんだこの島

「なんというか…せっかくだから引っ張ったら取れそうなリボンのやつー…って言いたいところですが、あなたならワンピースタイプがいいんでしょうね。なのであえてあいだをとってのビキニにしましょうか」

彼女が首を振ったりうなづいたりと忙しい、最後のビキニも嫌らしく唸っていたがタップしておいた。すると彼女の服が一瞬にして水着にかわる。なるほど…命令に従わないと殺すというのもあながち嘘ではなさそうだ。彼女がせっかく水着になれたというのに膝と手のひらを地面について項垂れていた。ちなみに僕の格好もいつの間にか水着だ

「大丈夫ですか?」

「だいじょばない!どうしてビキニ選んだんですか!?」

「あぁ…半分嫌がらせです」

「もう半分は!?」

「なまえさんは夏でも上着着ていたりと、ガードが硬いのでちょっとした興味です」

「そんなもので私の羞恥心が煽られて死にそうって…いっその事海で溺れたい…」

そんなもの…ね。とりあえずなんの指示も無いし暑いし彼女は木の下で体育座りして動かないので少しだけ辺りを散策してみた
戻ってきた頃には彼女が寝転がっていて、眉を寄せて彼女のほうに歩み寄ると、まったく汗はかいていないし体が熱い

「なまえさん!管理人!なんかないんですか!」

“海にでも入れれば〜?余計弱ると思うけど”

「ふざけてる場合ですか。早く」

“氷をあげます、飲ませればすぐ治ります。ただしバーボンが口移しで渡して溶かす事。YESorDeath”

はい、か死かしかないんですか…とりあえずYESを選ぶしかないだろう。意識はありそうな彼女をみると、YESをタップした。なまえさんに手なんか出した事がない、アマレットには不可抗力なのとうっかりがあるけどカウントされないだろう。目の前にコップに何個か入った氷が浮かんでいるのでそれを取った
もう何かわけのわからない事があっても驚かない
ちょうど口に入るくらいの大きさの氷を口に含み、彼女の首の後ろに腕を回して起き上がらせると唇を合わせた

「ん……!?」

少し溶けた水を流し込むと、彼女の唇が薄く開いたので氷をねじ込むように入れればカランッと音をたてて彼女の口内に氷が入った。そのまま自身の舌を挿入すると、できるだけ彼女の舌に触れないように氷を転がしてやれば彼女が嚥下していく。それを何度か繰り返してコップの中を空にすると彼女が目を開けた

「ひっ!」

と声をあげて俺を思い切り押してきたので、彼女を支えていた腕が離れて彼女が地面に頭をぶつけた。助けてやったのにこの態度か。アマレットのほうが可愛げがあるぞ

「ご、ごめんなさい、ありがとう…ございます」

何も言ってないのにちゃんとお礼を言ってきたので許してあげようとは思う。ただこのまま何もなしにここにいてもまた同じ事があるかもしれないし、それに飲み物も必要になってくる。何もしていないのに汗が出てくるくらいなので涼しい場所を探さないといけない。
すぐにタブレットに文字が浮かんだ

“涼or爽”

「今度こそ考えてください」

「えー…考えるの私の役目じゃないじゃないですか…飲み物の話ですかね?」

「例えて言うなら冷たい水か、炭酸か?うーん…でも涼しいという字には合わないですね」

2人でうんうん言っていると、カウントダウンが始まったのでまたなまえさんが適当にタップした。タップしたのは涼という漢字
タブレットが“コテージへ案内します”と言うものにかわった
最初こそ軽口を叩いていたのが大人しくなったと思ったら、俺も喉が乾いているくらいだから彼女もそうだろう、黙って歩き出した。何分くらいか歩いたところでコテージが見えてきて、その扉を開けようとしたが開かない

“扉を開けたくばどっちかが自分の手を撃て”

目の前に出てきた銃を取るのは、俺よりもなまえさんのほうが早く。何の躊躇いもなしに彼女は自分の左手の甲に銃口を突きつけて撃った。止める暇何て本当になくて、一瞬でも躊躇ってくれれば止められる自信があったのに、まるで流れるように、それをするのが当然であるかのようにやってのけた彼女は、左手をぶんぶん振った

「あ、空砲だった」

「バカじゃないですか!!空砲でもなんでも、火傷はします。だいたい、なんでなまえさんがやる必要があるんですかっ!!」

彼女の左手首を掴んでその銃口の痕を見た。そこまで酷い傷ではないが、熱くて痛そうだ、その傷にわざと触れると彼女が「あーー!!!」と悲鳴をあげた

「痛い痛いばかっ!!」

「バカはどっちです!?」

「じゃあ、私はバーボンに何かあった時に運んだり出来る?力が必要な時に使い物になると思う?」

「…じゃあ、逆に僕があなたを見捨てる場合だってありますよ」

「そうするなら一番最初にしていたはずですよ」

「ちぃっ…」

彼女のこういう所が苦手だ。だいたいの所、根っこの部分が若干似ている部分があるので、自分たちの意地がぶつかったりする事がある。
僕は彼女に怪我はさせたくないし、なんなら自分が犠牲になればいいと思っているのに、彼女は自分が怪我しても、僕が助けてくれるから大丈夫くらいには思ってるんだろう。大した信頼だと思うが、何かあった時はきっと見捨てる…だろう

舌打ちをして彼女の手首を離せばタブレットの画面を見る。彼女は扉に手をかけて扉を開けた、画面から視線を逸らして中へと入ると、中はかなり涼しい…なるほど、涼か
コテージにはトイレもお風呂も色々あるようで快適に過ごせそうだが、冷蔵庫を開けても水が無い
何もしていなくてもついてくるタブレットに視線を移す

「……なまえさん」

「はーい?」

クーラーの前に立って涼んでいる彼女の名前を呼ぶと、タブレットを見せた

「え」

"お互いが飲ませあうなら、飲み物をあげます"

「このくらいならいいでしょう?」

もちろんYESを押したのに、彼女は止めようとしてきた。残念ながら押した後だ


コップが二つ出てきたので、その一つを持ち、彼女もおずおずとそれに手を伸ばしてコップを掴んだ。まずは彼女が自分からだと言うので、彼女が俺の口にコップを近づけるのを待った。カタカタと震える彼女の手に持たれたコップは揺れている
物凄く怪訝そうな顔で見たんだと思う、彼女が眉を下げて申し訳なさそうにしてきたので責める事はしないであげた。コップがやっと口につくと、彼女が少しずつ傾ける。もう少し傾けて欲しいので、少しだけ俯くと彼女がそれに気づいてコップを上にあげた
全部を飲み干すと大きく息を吐く。本来ならば管理人とかいうわけのわからないやつが用意したものを飲む気は無いのだが、飲まないで倒れるよりは飲んで倒れないかもしれないほうを選ぶ
今度は彼女の番、コップを近づけると、彼女が視線を迷わせた。

「私いらない…」

「ダメですよ。水分取ってください」

「う」と小さく唸ったと思えば、こっちに顔を向けたので、彼女の口にコップをつけた。どのくらい傾けたらいいのかわからないが、彼女が首を動かしたりもしないので、そのままゆっくりと傾けていくと全部飲み干したのでコップを離した。コップをテーブルに置いた後に、近くにいるついでに彼女の左手首を掴む

「え、え。どうしました…?」

火傷の後を見つめた後に、自身の口元にそれを引き寄せた。火傷の痕に唇を寄せると、彼女が肩を跳ねさせて手を引っ込めようとした。戦いなれている彼女だが、力では自分に勝てるわけも無く、少しだけ掴む手を強めた

「ジッとしていてください」

「っ……な、だって…何してるんですかっ…」

「何って、こうしたら治るって先ほどタブレットにかいてありまして。そんなに気になるなら見なければいいじゃないですか」

彼女が唇を振るわせたと思ったら、目をぎゅっと瞑って俯いた。本当に少しずつ治ってきている彼女の火傷
キス一つで治ればいいのに、なんで少しずつなんて面倒な事になっているんだか…ただ唇をつけるだけでは無くて、唇で挟むようにしてキスをすると彼女が声を漏らした。すると目を瞑っていた彼女が赤い顔でこっちを見てくる

「……うわぁあ、ごめんなさい!勝手に声が出ただけです!他意はないです!傷を治してやってるだけなのに変な事考えるなって顔してみるのやめて!!」

「いや、別に思ってないですけど」

キスをするたびに彼女が体を揺らし、手を引っ込めようとするのがちょっと面白かっただけで。傷が治ったので手を解放してやれば「ありがとうございます」と言ってきたが、なぜかそのへんを数分走ったくらいの勢いで彼女がゼーハーしていた。
それにしても、この部屋は寒すぎる

「寒くないですか?」

「だいぶ寒いです。今一瞬暖まりましたけどね…」

彼女が立ち上がって扉のほうへ行くと、ガチャガチャ、ガンガンと聞こえる。
普通に声を出して笑ってしまった

「なんなんですか!!」

「いや、開かないからって、足をかけてあけようとするのは、女性としてどうかと…ぶっ…エサが欲しいゴリラですか?」

「だって開かないんですもん!!!」

「ククッ…」

しばらく笑いが止まらないでいると、彼女が自分を放っておいて窓を割ろうとしたりしていた。彼女は寒そうに腕をさすっていて、鳥肌も立っている。リモコンも見つからないのでタブレットに話しかける事にした

"涼しいを選んだから"

「涼しいの度を超えてます」

"毛布一枚あげるから、二人で暖まってね。YES or Cold"

「なにこれ」

「まあ直接的に言えば、寒いままって事ですね」

「そのままですね。私、室内走って暖まります」

"室温さがりまーす^^"

とりあえずYESを押して毛布を入手しておいた。ダブルサイズくらいの大きな毛布が出てくる。彼女は予告通りに一生懸命コテージ内をバタバタと走っていたが、まったく暖まらないようでカタカタと震えていた。

「はぁ…ほら、来てください。あなたが来てくれないと僕も毛布使えないですし」

「寒い?」

「寒くないと思いますか」

「で、ですよね…ごめんなさい」

彼女が歩み寄ってくると、隣に並ぼうとした。それだと隙間が出来て寒いので、ソファーの上に胡坐をかいた上に彼女を乗せるようにお腹に手を伸ばして誘導すると、彼女が逃げようと腰をうかせたので、お腹に手を回している力を強めた

「やっ…隣じゃダメなんですかっ…!?」

「隙間が出来て寒いので。大人しくしててください、体が冷たいです」

「ひぃぇぇええええ…」

「またですか…」

前かがみになる彼女。毛布を手に取って自分の背中側にかけてから彼女を包み込むようにぎゅっと抱きしめる。彼女の肌は冷たくて、最初こそ抱きしめるのは余計寒くなるのでいやだったのだが、彼女の背中越しに鼓動が伝わってくるのと、段々と暖まってきた彼女が温くて気持ちが良い

「……心臓速いですね」

「だっ…!こんなぎゅー状態、誰だって速くなりますよっ…」

「ホー、そうですか」

気づいているのか気づいていないのか、ただ抱きしめているだけではなくて、なんなら彼女の背中に額までつけているのだが、何も言って来ない。いつまでこの状態でいればいいのだろうか…このまま眠れといわれれば眠れるが、アマレットならいざしらず、この状態で彼女を膝に乗せたままだとさすがに足が痺れそうだ

「あ」

タブレットの文字が浮かんできたのに気づくと、彼女がタブレットを持って僕にも見えるような位置に持ってきた。

"キスすればクーラーが止まる。深いキスなら適温に YES or DEATH"

「む、無理!」

「イエスか死しかないのに無理って言いますか。だいたいアマレットの時は自分からねだって来たくせに」

無理だと言う彼女を放っておいて勝手にイエスを押した。ここで死ぬわけにはいかない
タブレットを放り投げる、適温にするかクーラーを止めるか、だが…クーラーを止めただけじゃ外の気温と同じように暑くなっていってまた命令をされるだけ。それなら適温にしたほうがいいだろう

「ほら、こっち向いて」

「いや、いやだ!無理!アマレットの時はだってまだ……とにかく無理!」

「目瞑ってジッとしてればいいだけですよ」

「なんっ…!?体的にはそうかもしれないですけど、心的にはそうじゃないです!」

彼女が立ち上がってしまったので、逃げられると面倒だ。腕を少しだけ強めに掴む、ただ軽く掴むだけでは彼女は上手に抜け出してしまうから
その隙に若干痺れていた足を下ろして座りなおせばため息を漏らした

「さむっ!」

「だから、僕も寒いので離れるのやめてもらっても?」

「は…あ。ごめんなさい」

彼女がこっちに座りなおそうとしたのだが、また足の上に座ってもいいものかと考えたのだろう、隣に移動しようとしてきたのでそのまま彼女の背中よりも少し下、お尻に近いところに手を回すとこっちに引き寄せて足を開かせて跨がせた

「うわぁあああ……!!!」

「いい加減にしないと死にますよ。カウントダウン始まってます」

「ちょ、待って、カウントダウン待って!!ねぇ、本当に…お願い……」

彼女が眉を下げて瞳を潤ませて今にも泣きそうな顔で言ってくる。俺にお願いされてもカウントダウンは止まらない。残り3秒の所で彼女が唇を結んで目を閉じた

「良い子ですね」

自身よりも本当に少しだけ視線が高くなった彼女の首に腕を回すと、そのまま引き寄せて彼女の唇に自身の唇を合わせた。彼女はソファーの背もたれに手を置いて離れよう、離れようとしてくるが、今離れたらクーラーが止まるだけになってしまう。
唇を甘く噛んで自身の唇で彼女の唇を挟んだりすると、彼女の力が緩くなる

「っ…ん…!ね、ねぇ…もういいっ」

いやよくないですし。キスの合間に彼女がそう言ってくると、一瞬唇を離した

「噛むなよ」

「え」

小さな声で、降谷として呟けば彼女が声を漏らした隙にもう一度唇を合わせる。「んっ!」と驚いた声をあげた彼女の唇の隙間を舌で割って入れば、彼女の舌があって。それに舌を絡ませると、彼女が俺の肩にかかる毛布をぎゅっと握った。ちゅ、と音を立てて舌に吸い付き絡ませてを繰り返す。「ん…ふ、あ…んんッ…」なんて、普段の彼女からは信じられない甘い声が漏れて来たがすぐに声を出さないようにと、不自然に声が止まる
もういいだろう、と最後に触れるだけのキスをしたから離すと、彼女が僕の肩にぐったりを項垂れかかってきたので背中に手を回そうと思ったら、ガバッと勢いよく起き上がって慌てて離れていった

クーラーはそよそよとした風になり、少しずつ部屋の温度が上がっていく
毛布を畳んでいると、彼女は声にならない叫び声をあげながら床をべしべしと叩いていた。



それよりも気になるのは命令の内容。内容はこういった男女の事や銃を出してきたりと、目的がさっぱりわからない。テーブルの上に転がっているタブレットを拾うと「最短で元に戻れる方法は?」と問いかけてみる
まさかどっちかを撃てとか、ヤれ、とか言わないよな

"ご名答。最短ルートはそれ"

「は?どっちですか?」

口に出してはいないのだが、もう何も驚かない。彼女はせっかく畳んだ毛布をソファーから引きずり落として丸まっていた。タブレットが"後者"と返事を返してきた
だいたい、キスだけであれなのに、それ以上進んだら爆発しそうな気さえする
経験無いのが丸わかりだし、どうしろと言うんだ

「はー、よし。」

やっと出てきた。出てきたのに目が合ったら引っ込んだ
早く島から出て仕事がしたい

「なまえさん」

「はいぃー?」

毛布に入ったままの彼女の声が聞こえてくる、そのまま話しますか…出てこない

「最短ルートで出る方法があるそうですよ」

「うそっ!」

「ええ。さっきの先に進む事です」

「この話しは聞かなかった事に」

即答する彼女に、なんとなくイラッとしたので毛布を剥ぎ取る。すると彼女が体をあげた毛布へと手を伸ばしてきた

「僕は早く元の場所に帰りたいんです」

「やだやだ!それに私を使わないでっ!!」

「つかっ…使ってるわけではないですが、まあ使いたいんです、お願いします」

「あはははは!!!…帰るーっ!!助けてー!!」

声をあげて笑ったかと思えば、大慌てで扉に向かっていった。アマレットの時は若干近寄ってくる時が多くなったのに、なまえさんの状態だと絶対に近寄ってこないし、なんなら挙動不審。ガチャガチャと扉を開けようとしている彼女の背後に行って、扉に彼女を挟むようにして両手を扉につけた。しゃがんで回避できないように隙間はできないようにして、彼女の髪に唇を寄せた

「僕も帰りたいんです。手荒な事はしたくないので、出来れば抵抗とかしないでください」

「かっ…管理人さん、他に方法は…」

"なまえがミンチ"

「それにしよう」

「バカじゃないですか!?」

どれだけ嫌なんだ。涙は流れていないが、彼女はうっうっと言いながら泣いている真似をしている。水着姿で背中が露になっているのでその背中にキスをすると彼女の背筋がピンと伸びた

「嫌だぁああ!!管理人さんお願い!別なものにして!」

力なく扉を叩く彼女。そこまで嫌がるか
やっぱり彼女は自分を好いているのかその逆なのか全然理解が出来ない。本気で嫌がっているような気がするし、だからといって嫌ってるわけでも無さそうで
近づいてきたら離れて、離れたら近づいて…

「ところで、今どのくらい経ってるんですか?」

“こっちの1時間はあっちの1日”

「は…?じゃあ、僕無断欠勤じゃないですか」

「そんなの、私もですよ!!」

壁に押し付けていた彼女を解放すると、二人ともタブレットに食って掛かった。姿が見えればどうにかできたのだがとりあえず得体の知れない管理人だ、どうにもならない。
管理人に二人がかりで文句をぶつけていると、タブレットに怒りのマークが浮かんだ

"じゃあわかった。バーボンがなまえを撃つ"

「……それで出られるなら構わないけど…でも私が生きてるとしてもだいぶバーボンにとってはトラウマになるんじゃ…」

は?この人何言ってるんですか?それ以前の問題ですよね。
大きくため息を吐くと、人差し指を親指を若干たてて手首を捻ってチェンジの意味を示すとタブレットがため息を吐いた

"あれもいや、これもいや、ワガママだなぁ…。じゃあバーボンこれで"

彼女に見えないようにタブレットが勝手に動くと、彼女が顔を出そうとするが、タブレットが上手い事それを回避していった。その内容を確認すると、ため息を吐いて彼女を見る。タブレットがパタンッと音を立ててテーブルに伏せられると彼女が首を傾げていた

「え?なんだったんですか?」

「僕へのちょっとした命令ですよ…さて、なまえさん」

「…はい?」

怪訝そうな表情で見てくる彼女の瞳には警戒心が浮かんでいて、自分が名前を呼んだだけで眉間に皺を寄せる始末。なので右手をひらひらとさせてみた

「ハイタッチ」

「ハイ。ターーーッチッ!!で、これが何っ…」

彼女は思い切りハイテンションでタッチしてきた。ハイの意味を履き違えている気がするが、彼女が手を重ねた瞬間に指を絡ませると彼女の動きと言葉が止まった。ぶわぁっといっきに顔を赤くさせて、手には汗が滲んできた

「な、何、何ごとっ…離してください。セクハラです」

「タブレットの命令でして、早く終わらせないとあっちのほうもこっちのほうの仕事にも影響が出ますし、黙ってどうぞ」

「あ、はい」

満面の笑みで黙れと言うと、彼女は目を見開いて頷いた。それでもグググッと手には力が入っていて、隙あらば抜け出そうとしてくる。彼女は多分色々考えているようで視線をあっちやこっちにゆっくりと動かしては眉間に皺を寄せる
彼女は自分には任務の時のターゲットにするような暴力をして来ない。ターゲットなら確実に足を出されているだろうが、自分にはしてこないのでそのままでいられる

「動かないでくださいよ、すぐ済みますから」

彼女と絡ませている指にグッと力を入れれば、彼女が何かを言ってくる前に、彼女の水着から出ている胸に唇を寄せた。その瞬間に絡ませている指を離し、空いていた手を背中に回して逃げられないようにするも、彼女は逃げようと思い切り後ろに下がってひっくり返った。下には丸まった毛布があったのでどこも痛くは無さそうで、さらにもう逃げられないので好都合

「待って、何だったんですか、命令教えてくださいよ!」

「教えるなっていう命令だったので、ジッとしていてくれれば済みますって…」

「教えられてないのにジッとしてろって言うほうが無理ですよ!」

「だから…教えられないから早いとこ終わらせるためにジッとしてろと」

「いや!どいてくださいっ!」

あぁ、もう。この人本当に自分の手のひらの中に入っててくれないなっ!!バタバタと足をばたつかせたり体を捩ったり、最後には自分を叩いてこようとしたのでその手を掴んで手のひらに唇を押し付けた

「っ……」

一瞬大人しくなったものの、すぐに暴れだしたので手を掴んだまま彼女の胸元に再び唇を寄せる。ちゅっと音を立てて吸い付いて、彼女の胸に紅い華を何個か咲かせた。そのたびに彼女は「う」とか「ん」とかの声を漏らしては唇を噛んで顔を背ける
彼女の水着の胸の真ん中にあるリボンを歯で噛んで引っ張ると、彼女の胸が露になった

「ぎゃぁああああ!!!!!なんで!?普通は解けないよね!?あれ!?さっきまで普通にただの飾りだったはずっ…!!やだやだぁああああ!!!!!へるぷみぃいいい」

「うるさい」

露になった彼女の胸の突起を舌の腹で舐め上げると、彼女が「ひぃっ」という声をあげた。ぎゃあぎゃあと声をあげて、体を揺らすのをやめない

「なまえさん」

「はいぃ…?どけてください、嫌です…」

「僕の事だけ考えて」

視線を合わせた彼女が、ぐっと息を飲んだ。やっと大人しくなったので空気に触れた彼女の突起を口に含むと彼女が体を震わせた。ちゅっと吸い付いたり、舌先で転がしたりを繰り返す。「うっ…んー…」と声を我慢しているような声を彼女が唇の隙間から漏らす。円をかくように舌でなぞったりして、弾いたりすると、彼女がグッと拳を握って「ひぁっ」という声を漏らした

ガシャンッという音が聞こえたので彼女の手首を離してやれば、彼女は騒ぎすぎたのかなんなのか、まるで魂が抜けたように胸は隠しながら固まっていた。

「すみませんでした」

一応謝って解いたリボンを元に戻してあげようとしたが、彼女が慌てて起き上がって背中を向けてリボンを直したのだろう、元の姿に戻ってこっちを見てきた。とっても睨んでる

「バーボン!!!」

「はい?」

「はい?じゃないですよ、どんな命令されたんですか!!」

「あぁ、舌だけを使ってなまえさんに喘ぎ声を出させる事と…あとは聞かないほうがいいんじゃないですか?」

「あんな事勝手にしておいて聞かないほうがいいって!?」

「あなたのために言ってるんですが…仕方ないですねぇ…。濡れさせることですよ」

「ぬっ……」

別に隠す気も何も無かったのですぐさま白状したのだが、彼女の顔はまるでずっとあったかいお湯に浸かっていたかのように頬が真っ赤に染まっていて。その後声にならない悲鳴をあげてジタバタしていた。はーこれでやっと帰れる


「おーい、起きろー」

「ダメだよスコッチ、飴入れても起きないもん」

「寝てるやつに飴突っ込んじゃだめだろ…アマレット。いくらバーボンでも喉に入ったら…」

「その時は喉に指突っ込んでとってあげてよ、スコッチ」

「俺がかよ…あ。起きた」

口の中に色々な味が広がっている。薄っすら開けて行く視界の中で話しを聞いていたが、飴なんだろう、ガリッと音をたてて飴を噛んだ。酸っぱいやら甘いやら…
起き上がると、目の前にいたスコッチとアマレットが少しだけ離れた

「あれ…僕何してました?」

「寝てたよ」

「すっごい寝言言ってたなぁ…ふざけないでください!!とか」

「面白かった」

スコッチとアマレットに笑われる。

「…また夢ですかっ!!!」

何で毎度毎度こういった夢を見る時はなまえさんが出てくるんだ…
アマレットをジッと見つめると、キョトンとした後に笑みを浮かべてきた。これ、これだ。なまえさんにはこんな反応が無い
だからきっとちょっと気になってるからあんな夢を見るんだ
寒い感覚とか色々と全部感覚のある夢だったけど、目の前にいる彼女が普通な事が証拠だ

「なまえさん…」

スコッチがコーヒーを作ってくれると、はりきって台所にったので、彼女の名前を呼ぶと、アマレットがこっちを見てきて眉を寄せた

「なんですか…?」

物凄く怪訝そうな視線を送られたので、そのあとすぐに「アマレットもコーヒーですか?」と問いかけてみると、寄っていた眉が上がって「うん!」と頷いた

「演技上手ですねぇ…」

本当に感心した。どうやら今は朝方で、二人は僕の寝言によって起こされたようでぱたぱたとアマレットが慌てて脱衣所に引っ込み、今度は着替えを済ませてなまえになって戻ってきた。もう一度彼女を呼んで手招きしてみると、彼女が歩み寄ってくる

「大丈夫ですか?やっぱり変な夢でも見ました?」

「ええ、だから今から確かめようと。感触が同じだったら、あれはあれでリアルって事で…」

アマレットでいるときよりも距離のある、彼女の腕を掴んでこっちに引き寄せてキスしようとした所を、スコッチが手を出してきたのでスコッチの手の甲にキスをしてしまった

「バーボン…お前なぁ…。見境なく手を出すな!!!」

「本当だ、スコッチに手を出してます……」

「二人とも違います、誤解です。でもキスさせてください」

「どうぞ」

彼女がスコッチを差し出してきた。違う、そっちじゃない
この家は今日も平和です


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