それから五日後。
私は都心の、とある巨大なオフィスビルの中にいた。


目の前には、まだ年若い、十代であろう少女が座っている。
本来なら学校に通っているだろう年齢の彼女は、だが、この巨大な会社を牛耳る最高権力者、かの有名なグラード財団の総帥だった。


「あの……。」


何と言って話を切り出せば良いのやら。
正直、こんなにあっさりと話が出来る人物に会わせて貰えるとは思ってもいなかったので、どうにも言葉が詰まる。
しかも、まさかのグラード財団トップに会えるなどと、想像出来る訳もない。
こんな事なら、もっと素敵な服装をして来れば良かったと、全く関係ないところに考えが走った。


「無理を言って、お会いして頂けたのに、こんな事を言うのは何なのですが……。何をどう説明すれば良いのか整理がつかなくて……。」
「その必要はないですよ、浅海さん。」
「……え?」


私がココに、グラード財団本部のビルへとやって来たのには、訳があった。
亡き姉の養父、彼が勤めているのが、このグラード財団のギリシャ支部なのだ。


彼から手紙が来た後、私なりに色々と考え、そして、あるものを調べてみた。
そして、気が付いた事があり、私はどうしても彼に会いたいと思った。
姉さんの死は本当に事故だったのか?
私は、どうしても納得がいかなくて。


だが、彼からの手紙に書かれていた住所は、姉さんが長年使っていた架空の住所と同じだった。
他に何の情報も持たない私は、こちらから彼に連絡を取る方法が分からなかった。
ならば、いっその事、東京のグラード財団本部へ、直接、乗り込めば良い。


無謀にも、そんな安直な事を考えた私は、深く考えもせずにグラード財団本部へと連絡を取った。
それから、どういう訳か、そのままトントン拍子に話が進んで、ココに来る事となり。
そして、今に至っている。


普通に考えれば、おかしい事だらけだ。
何処の誰だか分からない者から、意味の分からない連絡を受け。
なのに、そんな不審人物を快く招いた上に、何と総帥自らが相対してくるなど。
常識で考えれば、有り得ないのに。


「貴女のお姉さまの事を、お聞きになりたいのでしょう?」
「ど、どうして、それを?」


全世界にその名を轟かせる巨大企業・グラード財団。
そのトップである彼女が、何故、一社員の娘の事など知っているのか?
私如きには理解出来ない出来事が続き、頭の中はただ混乱するばかりだった。





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