お昼にも程近いお茶の時間を楽しみながら、私は落ち着いた表情で目の前に座っているカミュに、混乱した頭の中の事をポツポツと話していった。
所々、アイオリアが補足しつつ紡いでいく言葉の内容は、やはり上手く纏まらなくて、ちゃんと伝わっているのか心配になる程だ。
それでも、暗中模索と言って良い今の状況を、少しでも何とかしたくて。
誰かに手を貸して貰いたいと、その思いから、ひたすら言葉を繋いでいった。


「……そうか。それは確かに、お手上げ状態と言えるな。」


話を聞き終えて、手にしていたカップをコトリとテーブルに置いたカミュは、眉一つ動かさず、表情も変わらない。
そんなカミュの顔を見て、この人なら何を聞いても何を見ても、驚いたりしないのかも知れないと、何となく思った。


「それにしても、私に相談するとは意外だ。」
「……そうか?」
「あぁ、そうだ。なにしろ、私も『容疑者』の一人なのだろうからな。違うか?」


そう、カミュの言う通りだ。
彼もまた、私達が疑っている黄金聖闘士の一人。
特に姉さんの取った行動からして、その相手は『聖域から離れて過ごしていた者の可能性が高い』との結論に至ったのだから、彼への疑念は尚更高い。
カミュは真っ先に疑われて然るべき人物だ。
だが、それを言うならば、黄金聖闘士は皆、等しく疑惑の渦中にいる。
今は誰もが同条件なのだ。
ならば、誰に相談したって同じ事。


「本当は、ムウさんのところに行こうかと思っていたの。でも、アイオリアがね……。」
「俺はアイツを信用出来ん。裏表があって、接していて苛々する。」


ムスッとした顔をして、不機嫌になるアイオリアは、やはりムウさんとは相当に気が合わないようだ。
彼のところに行ったならば、ゆっくりと相談なんて出来そうにない。
アイオリアが、きっと早く帰りたがるだろうから。


「……といった塩梅(アンバイ)でね。それに白羊宮までは、まだまだ遠かったし。」


ムウさん以外だと、冷静に物事を分析してアドバイスしてくれそうな人と言えば、カミュが適任だと思う。
デスマスクさんもアフロディーテさんも、明らかに何かを知っていて、でも、決してそれを話そうとはしてくれない。
勿論、相談になんか、絶対に乗ってはくれないだろう。
今日も自宮でお休みのサガさんは、カミュ以上に疑われている人だから、このような話をする訳にもいかないし。
何より、偽の教皇として長年過ごしていたならば、今回の事を外側から考えるのは難しいに違いない。
第一、疲れているところに相談事なんて出来やしない。


「なる程、例え私が犯人であったとしても、理由がないなら断らないだろうと、そう判断した訳か。断ったが最後、余計に疑いが濃くなるという算段もあったのだな。」
「嘘もダメだぞ。」
「ふっ、分かっている。嘘を吐けば、更に疑惑が深まるだけだからな。私はそれ程、馬鹿ではない。」
「だろうな。だから、ココへ来た。」


アイオリアとカミュの探り合いのように交わされる言葉を聞いて、胸がドキドキする。
もしカミュが事件に何らかの係わりがあるなら、これは挑発になるのだろうか?
それとも、牽制になるのだろうか?
私はハラハラしながら、二人の顔を交互に眺めていた。





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